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更新日:令和5(2023)年12月4日
ページ番号:623327
本県の農業改良普及事業に関して、普及指導計画に基づき農業事務所改良普及課が実施した前年度の農業改良普及活動・成果及び体制等について、幅広い視点から検討を行える優れた見識を有する者(以下、「外部有識者」という。)による意見交換会を開催し、より高い成果が得られるよう普及事業の改善を図る。
令和5年10月25日(水曜日)午前10時30分~午後4時
千葉県印旛合同庁舎 大会議室
千葉県
外部有識者、農業事務所改良普及課、担い手支援課
区分 | 所属・職名 | 氏名 |
---|---|---|
先進的な農業者 |
千葉県指導農業士会 理事 |
横田 剛 |
若手農業業者 |
千葉県農業士協会 副会長理事 |
野瀬 元隆 |
女性農業者 | 千葉県農業士協会 | 鈴木 夏実 |
農業関係団体 |
全農千葉県本部 営農支援部長 |
田中 公博 |
消費者 |
ちば野菜伝道師 |
高原 和江 |
学識経験者 |
千葉大学大学院 園芸学研究科教授 |
櫻井 清一 |
報道機関 | NHK千葉放送局 コンテンツセンター長 | 木村 和人 |
民間企業 |
千葉銀行法人営業部 ビジネスソリューショングループ 副調査役 |
松 慶次郎 |
佐倉市における稲WCS取組体制確立と取組拡大
水田の有効活用、大規模水稲経営体の育成及び自給飼料生産拡大による畜産農家の経営安定を図るため、水稲農家・畜産農家・作業受託組織・市・農業事務所が連携し、稲発酵粗飼料(以下、稲WCS)の取組拡大を行った。
その結果、平成26年度に4haから始まったWCS用イネの栽培面積は令和4年度には102haまで拡大し、WCS用イネ栽培農家は48戸、作業受託組織は4組織、利用農家は12戸に増加した。稲WCSの生産・利用体制が確立できたことにより、水稲農家の規模拡大、畜産農家の飼料コスト低減につながった。
耕畜連携に関する取組について、資料で「意見交換」や「座談会」と記載している部分について、具体的にどのような活動を行ったか説明いただきたい。
稲WCS取組拡大にあたっては、市は水稲農家・畜産農家の需給マッチングを図るための検討会開催、農業事務所は主に水稲農家に対する生産技術支援や畜産農家に対する利用拡大支援を担っている。
耕畜連携・自給飼料に関して、米価上昇の局面となった場合に水稲農家が飼料生産を縮小する可能性や、飼料価格が下落する局面となった場合に畜産農家が稲WCSや飼料用米を敬遠する可能性はどうだろうか。水稲農家、畜産農家、コントラクター、各プレイヤーの理解のポイントはどういったものとなっているか。足元の水稲・飼料の環境における連携なのか、環境を問わず連携する意義を見出しているものか。
米価上昇局面となった場合、一定の飼料生産縮小の可能性はあるが、畜産農家との信頼関係のもと生産は成り立っているため、急激な変動・縮小はないものと考える。輸入飼料価格が下落した場合においても、自給飼料安定確保の観点から、畜産農家の稲WCSに対する需要は強いことからある程度確保されるものと考える。
水稲農家における転作の必要性、畜産農家における自給飼料に対する需要があって成り立つものであり、「足元の水稲・飼料の環境」であるが、稲WCSを通して相互の信頼関係構築に繋がっている。
水稲の規模拡大と効率的かつ安定的な水田営農体制の整備
水稲の大規模経営体の育成に向けて、個別指導や集合研修によりスマート農業・省力化技術の導入、栽培技術の改善、各種施策の活用等を支援した結果、22戸が面積を拡大した。
農地の集積・集約に向けて、我孫子市手賀沼周辺地域において主要な担い手6名の意向把握を行い耕作状況地図を作成した。これを基に、市、農業委員会、農地中間管理機構(千葉県園芸協会・以下機構と記述)と連携し、生産者の意見交換会を重ねた結果、一部の分散錯圃の解消が進むとともに、2地区で農地の集積・集約を進めるため、地域計画の策定に向けた話し合いを行うことが決定した。
利根川流域の柏市大室地区では、農地中間管理事業による地域集積協力金を活用した集積に向けて、耕作者と地権者への説明会を重ねた結果、地区の水田面積の83%にあたる55haの農地が機構に貸し付けられ集積が進んだ。
指導対象が「経営面積10ha以上の水稲経営体」とあるが、(10ha規模であれば大規模ではなく、スマート農業の推進も難しいと思うが)指導対象を10ha以上としている意図は何か。今後どのように育成する計画か。
活動対象38戸のうち経営規模10ha~20haの農家がおよそ3分の2を占めている。地域の水田営農を維持するためにはこれより規模の大きな担い手だけでは不十分であり、この中の意欲のある経営体の規模拡大を支援し、担い手として育成することが重要であると考えた。
取組の次のステップとして、どのような支援を考えているか具体的に説明してほしい。
個別経営体については引き続き経営改善を支援し、担い手の育成を進める。農地集積・集約については、地域計画策定の支援を通して、担い手の確保や農地集積・集約を推進し、水田営農体制の整備を目指す。
生産・販売力のある担い手の育成による花き産地の維持発展
JA安房花卉部神戸支部及びJA安房花卉部西岬支部は、管内でも有数の共選部会であり、同じような品目を栽培している。各支部に集出荷施設がありそれぞれの規格で出荷を行っていたが、両施設とも老朽化のため新たな取組が困難な一方で、農家経営の安定が必要であった。
そこで、生産者及び農協を始めとした関係機関と連携し、両支部を対象に共同PRの提案や座談会等を行い共同出荷に向けた意識改革を図り、新たに「JA安房神戸支店園芸振興拠点センター野菜・花き集出荷施設」の建設につながった。これにより、出荷体制の整備、出荷規格の統一が図られ、実需者のニーズに対応した販売方法がとれるようになり、販売単価の上昇につながり市場販売金額が増加した。
課題名に「維持発展」とあるが、特に「発展」に向けて、今後の活動についてどのように考えているか。特に、他産業との連携も含め、観光など地域全体の振興に関して、何か動きや構想があれば知りたい。
新たな集出荷施設が完成し、集出荷場所の一元化が図られた。また、セリ二日前の情報発信等の新たな出荷体制が構築された。今後は両支部の連携を強化し、共同活動を推進しつつ、個別経営体の規模拡大を支援し産地の発展を目指していきたいと考えている。また、市場出荷が中心のため、現在のところ他産業への連携や観光摘み取り園等の構想は無いが、今後ご指摘のあった視点も考えて広い視野で販売戦略を考えていきたい。
販売金額について、令和7年度の目標金額を既に達成したようなので、目標を上方修正してはどうか。
令和4年度は目標金額を達成したものの、ウクライナ情勢等の影響で一時的に単価が高まった影響もあったと思われるため、最終年度の目標は変更せず、品質向上による単価向上に引き続き取り組んでいく。
主要な担い手を核としたなし産地の維持
八千代市では、農家戸数54戸、栽培面積52.8haで直売を中心とした梨生産が行われている。主要な担い手の面積拡大に向けて、省力樹形の導入と作業効率を向上させる機械の導入を支援した。また、効率的な作業実施に向け、研修等の実施により担い手自身の資質向上とパートナーである女性農業者の育成を図った。さらに、老木の増加による生産量の減少を抑えるため、改植の推進と土壌病害対策の普及に取組んだ。
その結果、6戸で省力樹形が導入され、累計150樹で温水処理が実施された。また、経営改善に主体的に取組む若手生産者や女性農業者が増加した。
梨の産地では伝統的に女性向けの勉強会を行っている印象があるが、その背景がわかれば教えてほしい。一般的な研修会に行くと女性が少なく、経営主向けの内容は自分には難しい場合もある。女性農業者向けであれば、ある程度同じくらいの知識や技術の人と話せると思うので、参加しやすいと感じる。
女性は補助的な作業に携わることが多い傾向にあったが、労力の分散や規模拡大のため技術を習得し主体的に作業に関わることが期待されていた。また、女性の経営参画を進めることも課題となっていた。そこで各産地で女性を対象とした講習会が開催され、技術を習得した女性農業者が育成されてきた。八千代市でも、継続して若手女性農業者に対する講習会を開催し、栽培管理技術を習得するよう支援している。
WCS用イネの生産拡大と品質向上
主食用米代替作物を模索する水稲農家と飼料価格高騰により経営が圧迫される畜産農家双方の課題解決に向け、稲発酵粗飼料用イネ(以下、WCS用イネ)の生産・利用の取組を推進した。取組が進む一方で、専用品種への移行が進まないことや栽培技術不足により、収量・品質が低く、畜産農家の要望に応えられていなかった。
そこで、一筆ごとのほ場調査や収穫実績の分析データに基づいた個別技術指導、耕畜連携会議での情報共有を行ったところ、取組面積の拡大とともに、収量・品質も向上した。
自給飼料の生産は重要であるが、多古米の産地で取り組むことはもったいないという印象。引き続き多古米産地としての振興にも取り組むとすると、飼料生産としても中途半端な規模になってしまうのではないかと思う。水田の遊休化が懸念されているのであれば、多古米の生産に特化した産地づくりをすることも検討してはどうか。
多古町の農業産出額(令和3年度)のうち、酪農及び肉用牛は22%を占めており、多古町の農業にとっては米だけでなく、畜産も重要な部門である。多古米の振興としては、多古町や関係機関が一体となり、ブランド米として知名度向上や食味の向上を目的とした活動に取り組んでおり、農業事務所では生産技術指導等を行っているところ。
一方、多古町でも水稲農家数は減少しており、多古米が比較的有利に販売できるとはいえ米価低迷の影響は避けられず、経営安定化策の一つとしてWCS用イネが増加したと考える。WCS用イネの生産は、刈取りや乾燥調製の作業がないため、既存の機械・設備での規模拡大を進めやすい作目であり、かつ、畜産農家の経営安定につながることから、地域の農業・農地を維持していく上で必要な取組と考える。
地域内自給飼料の生産体制の強化と畜産経営の安定化
山武管内では、米価下落により稲発酵粗飼料用イネ(以下、WCS用イネ)や飼料用米への転換が進んでいる。しかし、酪農家が求める消化性がよく、水分率65%程度の品質のWCS用イネが生産できていない。そこで、自給飼料生産組織に、茎葉型専用品種の導入促進と収穫前の水管理、収穫適期の判定方法の確立など生産管理技術指導を行ったところ、稲体の水分率などが改善され、酪農家が求める品質のWCS用イネの生産量が増加した。
畜産経営体では、飼料価格高騰や飼養管理等の不徹底により経営状態が厳しい生産者が多い。そこで、地域内で生産された自給飼料の利用促進と、専門家や関係機関と連携して飼養管理の見直しを支援したことにより、生産量(乳量、繁殖成績)が向上した。
酪農経営体からの需要に対して、供給はどうか。需要を満たすため、新たな生産組織設立の動きはあるか。
需要に対して供給は不十分な状況。作業量の関係から規模拡大は難しいという組織もあり、新たな組織育成も視野に入れて活動していく必要がある。今後は組織間の連携についても支援していきたい。
担い手への農地集積と地域の持続的発展に向けた水田農業の確立
当所では、人・農地プランの実質化や集落営農等についての検討をこれまでに31地区で行っており、これらの地区では、関係機関が連携して地区の動きを把握して話し合いの場の設定など支援を行っている。特に、水田農業の維持が困難になりつつあった袖ケ浦市大鳥居地区では、話し合いを重ね、「人・農地プラン」の作成を支援し、中心となる担い手へ農地を集積・集約することが合意された。また、担い手へ農地を集積・集約するのに障害となっていた小区画水田や、老朽化した給排水設備について、基盤整備事業の導入を目指して検討を進めるとともに、担い手に対しては営農計画作成を支援し、集落での法人化を意識づけした。
集落営農法人に参画する担い手(7戸、9名)確定後は、今後、必要となるライスセンター等の施設や省力化機械等の事業導入に向けた支援を実施しライスセンターの導入方針が決定された。
農地集積、集落営農、耕畜連携に関する取組について、資料で「意見交換」や「座談会」と記載している部分について、具体的にどのような活動を行ったか説明いただきたい。
基盤整備事業の導入に当たっては、「人・農地プラン」の作成を同時に実施しており、袖ケ浦市が話し合いの場の設定等を主導した。話し合いが進んで行くにつれ、担い手自身が主体となった検討を進められるようになった。また、大鳥居地区での地権者への事業説明等は農業事務所が担っているが、詳細部分は担い手自身が実施している。当該地区の担い手に対する地権者の信頼は厚く、事業の必要性を理解してもらえたことから、地権者からの事業導入の合意が得られた。
座談会や検討会での農業事務所の役割は、話し合いが予定どおりに進められているか進捗管理することや、意見がまとまらない時の助言・調整だと認識している。現在、座談会を定期的に開催している。当該地区に適した営農体制の合意を目指して検討しているが、さらなる省力化技術や栽培技術の統一や、雇用の導入方法等について検討していく。
県域の活動に関することについて
WCSに関しては、複数の地域で同じような取組をしているようなので、県域で一緒に何かに取り組んではどうか。
稲WCSの生産・利用の拡大については、県の研究機関で栽培や給与について試験を行い、農家等へ情報提供するとともに、各農業事務所で行ったWCS用稲の栽培実証の結果を共有するなど県域での推進に向けて取り組んでいる。
また、畜産課を中心に需給バランスの均衡に向けた広域のマッチングやWCS用稲の収穫等を行うコントラクターを対象にした研修会を開催しているところ。県では、飼料自給率の向上、水田の有効活用に向け、県域での連携をさらに進めていきたい。
担い手不足が一番の課題であると考えている。コロナ前のように企業参入が再び活発化した場合の担い手の確保・育成について考えを聞きたい。
今後の担い手確保・育成について、大規模経営体の育成と新規就農者の確保が特に重要であると考えている。企業参入については、農地取得に関する課題もあるが、地域によっては担い手となり得ると考える。今年度から行われている地域計画の話し合い等の状況を踏まえながら、普及組織として地域に合った方法を考えて、担い手の育成や支援に取り組んでいく。なお、農業事務所では農業経営体育成セミナーにより新規就農者の育成に取り組んでいるほか、地域によっては半農半X等も含めて地域の農業振興に取り組んでいる。
・多角化を考える経営者が増えていると思うので、県からも支援があればさらなる農業振興に繋がるのではないかと思う。
・今後は高齢で離農する人の農地を若い人が引き継いでいかなくてはならない。
水田だけでなく畑の集積・集約についても、農業事務所からの支援をお願いしたい。
・梨の火傷病対策など、地域に合わせた対応が必要となるので、県と農協グループで連携していきたい。
・千葉県は生産者と消費者が同じ地域に暮らしていることが特徴だと考えており、
地域の特徴を生かしながら、農業者の取組が消費者によく伝わるような多様な連携が進むと良い。
・「でるた」を活用しており大変役立っているので、農業者への普及にも引き続き取り組んでいただきたい。
・全体的に職員が減っている中で、先進事例や問題のある地域を拠点とした活動が多くなっている。
良い成果が出た活動は他の取組にも活かしていただきたい。
農業事務所改良普及課等は、意見交換会の結果を、令和5年度の普及指導活動の運営、来年度の計画(令和6年度農業改良普及指導計画)の作成、次期中期計画の作成等に反映させる。また、担い手支援課も含め、活動の効率化、効果の向上に活用する。
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