口唇口蓋裂診療チーム
千葉県こども病院では開院以来口唇口蓋裂のチーム医療を行っています
千葉県こども病院・口唇口蓋裂診療チームのホームページへようこそ。
こども病院は県内初の小児専門医療機関として1988年に開設されました。以来30年にわたり、口唇口蓋裂の治療に取り組んでまいりました。
千葉県内だけでなく近隣都県から受診される口唇口蓋裂のお子さまの診療を担当しており、年間130~140件前後の口唇口蓋裂手術があります。
このホームページは、口唇口蓋裂という疾患の特徴、診療の流れ、また「口唇口蓋裂診療チーム」を構成する各診療科、部門についてご紹介します。
口唇口蓋裂の総合的チーム医療の重要性
口唇口蓋裂の治療では、複数の診療科、多職種によるチーム医療が必須といえます。
千葉県こども病院では、口唇口蓋裂診療チームとして集約的な治療を行い、お子さまの成長にあわせて必要な治療を段階的に行ってまいります。成人になるまで継続的に提供しています。
なお、歯科矯正治療は、口蓋裂の矯正に実績のある東京歯科大学千葉歯科医療センターや専門歯科クリニックと外部連携しています。
さて、乳児から幼児、学童、思春期と成長するにつれて口唇口蓋裂治療の焦点も変化します。
ご家族は口唇口蓋裂の赤ちゃんをみて、いろいろとご心配なさるでしょう。
新生児期には、唇(くちびる)の割れがちゃんと直るのだろうか、おっぱいに時間がかかるし、飲むのが下手みたいだけど、成長はどうだろうか。そして、1~2歳になると、ことばが上手く話せるだろうか、歯ぐきが割れてるけど、歯がちゃんと生えるのかしら、と思われるかもしれません。
口唇口蓋裂診療チームには、多職種の専門医、専門家が揃っています。
お子さまの成長過程において、他にもいろいろな疑問点がでてくるかもしれません。
いつでもお気軽にお問い合わせください。
ご家族とともにお子さまが健やかに成長していけるよう、われわれ診療チーム一同、診療に取り組んでまいります。
口唇口蓋裂の患者さまの受診のご案内
まずは手術治療を担当する形成外科を、受診していただくようにしております。
形成外科初診時に、お子さまの状態や今後必要となる治療についての説明を行います。(最初の手術を決めることもあります。)
また、可能であれば同日にリハビリテーション科(言語聴覚士)や耳鼻咽喉科も受診していただきます。
哺乳がうまくいかない場合などは、助産師からの哺乳指導を行う場合もあります。
当院は完全予約制で、各診療科とも予約が満杯なこともあります。各診療科が、毎日外来診療をしているわけではございません。同日受診が難しい場合には、後日受診していただくように調整いたします。
同一日に複数科を受診できるように調整するようにいたしますが、複数科受診されると、どうしても待ち時間などは長くなってしまいます。初診時で、体重の小さく体力がない場合もありますので、赤ちゃんに無理にならない程度に受診されるようにお願いします。
口唇口蓋裂チームの診療内容・治療の流れ
治療の概要を説明してまいります。(PDF:222.9KB)図をクリックすると大きいサイズのPDFファイルが開きます。
出産後口蓋裂のために哺乳がうまくいかないというときには、産科からこども病院の新生児・未熟児科への紹介されて、新生児ICU(NICU)へ直接入院する場合があります。
その時は、新生児科よりそのほかの口唇口蓋裂診療チームの診療科、部門に連絡頂いて、外来受診の場合と同じように診療をすすめます。
多くの口唇口蓋裂の赤ちゃんは、哺乳もできて(口蓋裂用乳首を使用して)、普通のお産と同様に産科を退院後、こども病院を外来受診することになります。
また、最近は超音波エコー装置が高機能、高解像度になったことで、産科での定期検診で胎児の口唇口蓋裂が見えることもあります。いわゆる出生前診断です。
出生前診断で診断がついた場合、今後の治療などについて、妊娠中でもお話しさせていただくことができます。ご希望があれば、ご遠慮なく受診していただければと思います。(産科クリニックからの紹介状があれば、お母さんのお名前で受診していただく形になります。詳しくは当院予約係へお問合せください)
ここからは、実際の治療の流れを追っていきます.
手術治療全般は形成外科が担当いたします。
生後3~5か月ごろに口唇裂に対して初回の口唇鼻形成術を行い、1才過ぎで口蓋裂に対して口蓋形成術を行います。その後、変形症状の程度によっては修正術を適宜行っていきます。
また、顎裂といわれる歯茎の部分の裂がある場合には、歯科矯正を行いながら、裂の部分に骨移植をして歯が生える土台を作ります。
口唇口蓋裂では、裂と関連しておこるさまざまな症状があります。
よくみられるのは口蓋裂に合併する滲出性中耳炎です。
発熱して、痛み、耳だれがでる急性化膿性中耳炎とは異なる病気です。
口蓋裂のお子さまは、ほぼ滲出性中耳炎を発症します。耳鼻科で管理・治療を行います。
こども病院の歯科では、大きな口蓋裂がある場合などで、口蓋裂用専用の乳首でも上手く飲めないようなときには、口蓋床(ホッツ床)を作成しており、必要に応じて口内ケアを実施しています。
また口唇口蓋裂、口唇顎裂では、歯茎の裂(顎裂と呼ばれます)があるため、噛み合わせを直す歯科矯正が必要になります。
歯科矯正は主に東京歯科大学(千葉市美浜区)と連携しています。
千葉県北部では成田市の歯科矯正クリニック(タカハシ矯正歯科)とも連携しています。
こども病院から紹介しているこれらの施設は、健康保険で矯正治療が可能です。矯正治療は永久歯が生えてくる時期に、形成外科から紹介しています。そして、7歳~10歳ごろの適切な時期になると、こども病院形成外科で、顎裂部への骨移植を行っています。
口蓋裂のお子さまの中には、手術後も発音がはっきりしないことがあります。言語聴覚士はことばの発達や発音の評価・指導を行います。乳児期から言語聴覚士は関わり、哺乳のアドバイスや、発達の評価も適宜行っています。
その他の疾患を合併していることもあります。当院は小児の専門医療機関ですので、小児科的あるいは外科的な様々な疾患に対して、各診療科の専門医が対応します。こども病院には遺伝診療センターがありますので、遺伝相談には遺伝科の医師や遺伝カウンセラーが対応しています。
手術治療には全身麻酔が必要となります。こども病院手術室では、年間1900人近くの小児麻酔が麻酔科医師により実施されています。安全な手術治療を心がけております。
こども家族・支援センターでは、メディカルソーシャルワーカー(MSW)による医療福祉相談もできます。
チャイルドライフスペシャリスト(CLS)は、こどもたちが安心して医療を受けられるように支援する専門職をもった方々です。
栄養士による栄養相談も可能です。こうした専門職が、口唇口蓋裂をはじめとした、さまざまな疾患を持ったお子さまに対応します。
手術の心得のある外科医がいれば、口唇口蓋裂の手術はできましょう。しかし、外科医だけでは、足りないのです。赤ちゃんに安全に麻酔をかける小児麻酔科医や、熟練した看護師、言語聴覚士らの存在が重要です。
もしも、心臓の病気がある、気管切開して呼吸器を使っている、内分泌やホルモン系の病気、腎機能に問題がある場合には、当院のような小児専門医療機関で総合的チーム診療を受けながらの治療が必要です。
われわれは、こうした重症な患者さまも多く診療しています。
2020年9月:2018年までの実績グラフに更新しました。
口唇口蓋裂の初回手術前に、専門的な術前顎矯正(PNAM法)を行うことも可能です。両側の口唇口蓋裂等で、変形がつよい場合、PNAMによる術前矯正を行なう場合もあります。PNAMによる術前矯正を希望される際は、実施可能な矯正歯科クリニックを紹介させていただきます。(日本矯正歯科研究所付属デンタルクリニックと連携しております)とくに、両側口唇口蓋裂の場合のPNAMでは、高度な矯正歯科技術が必要であり、上記クリニックはPNAMを開発した米国ニューヨーク大学の矯正歯科から技術導入されています。(特殊な技術のため、自費診療となります。)
ホッツ型の口蓋床(ホッツ床)は受動的な術前矯正法です。装着することで徐々に顎形態を矯正します。PNAM法ではゴム牽引したり、鼻を押し上げる装置を付加して、積極的に歯茎や鼻の形態を整える手法となります。ホッツ床は当院歯科で作成可能ですので、必要な場合や、ご希望があれば相談させていただきます。