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更新日:令和4(2022)年7月14日
ページ番号:11047
「笑顔いっぱい!フレンドリーオフィス」認定された皆さまからの声
(~ヒアリング調査から~)
「雇用についての考え方」、「雇用における工夫」、雇用を考えている事業所への「メッセージ」を中心に伺いました。
株式会社アキテック代表取締役大田禊之(おおたかつゆき)様
(平成21年3月25日認定認定番号第64号)
昭和21年6月東京都江戸川区にて大田製作所として創業。昭和27年4月に株式会社安芸製作所を設立。昭和38年に現在地(千葉市稲毛区)に移転。平成3年6月に株式会社アキテックに社名変更。
アキテックでは、電気機器(各種変圧器、モートルステーターの組線)の製造・販売を行っており、変圧器のプロフェッショナルとして、電子機器にクリアな電源を供給し、IT社会に快適と安全を提供している。
一方で、障害者雇用に力を入れており、県内の特別支援学校と連携を図り卒業生を採用するとともに、研究開発・設計段階から障害のある人が作業しやすい環境づくりに配慮する等、生産性を高める取組みを行っている。現在従業員は38名おり、うち障害のある人は10名。1名は、検査員としての業務に従事し、ほかは電気機器の組立作業を行っている。
平成21年3月25日に「笑顔いっぱい!フレンドリーオフィス」に認定された。
平成22年9月9日に事務所にて大田禊之代表取締役から障害のある人の「雇用についての考え方」、「雇用における工夫」や「障害者雇用を考えている事業所へのメッセージ」を中心にお話を伺った。
「障害のある人の平均勤務年数は34年」と熱く語る大田社長。「現在は、障害者雇用施策などがあるが、初めて雇用した当時は、身体障害以外の障害という概念は一般的に知られていなかった。」という。そこで、当時の雇用について、話を伺った。
「昭和40年代の高度経済成長期に『金の卵』と言われるほどの人材不足の時に雇用した彼らが、結果として今でいう知的障害者であった。彼らは、素直で能力も高く、仕事も正確。当時の養護学校(現在の特別支援学校)や親からもお礼を言われるなど、存在価値が高く、悪いことは全く無かった。ものづくりのエキスパートになるのに、障害は妨げではない。」
「昔は障害のある人を『without(除外)』しており、最近では『with(一緒)』に働くということも聞くが、『with』では、まだ障害のある人を意識しているということである。さらに進んだ、彼らを『障害のある人』と意識させない『we(私たち)の世界』を構築することが大切なことである。『障害を持つアメリカ人法(通称:アメリカ障害者法、ADA法)』のように障害のある人を意識しない社会の構築が必要である。」
また、大田社長は、「気を使わないから、長く雇用することができる。株式会社は利益を求めるため、企業側が無理をすると疲れてしまい、長続きしない。」と企業の視点で語り、障害のある人を意識したり、時給単価をはじめ特別扱いしない(障害を理由に差別しない)ことで、「企業側の負担」、「他の従業員からの不満の声」も生じることがなく、企業にも彼らにも利益をもたらすということを語った。
「雇用を考えた企業の視点」と「障害のある人の能力の変化」について、大田社長に伺った。
まず、職場実習については、次のような考えである。
「特別支援学校では、一般的に2年生時と3年生時に実習を行っている。2年生時は、『職場体験』でよいが、3年生時は将来の職業を見据えて、『適性を見極める実習』をすることが望ましい。」とのこと。これは、3年生時の実習は、彼らが将来どのような仕事をすることを目指しているかによって、実習先を検討するべきとのことである。
雇用の視点に触れて、話は続く。「当社においては、将来的に雇用することも視野に入れ3年生の実習生を選び、実習を受け入れている。実習を終え、雇用する時は、面接を行い、服のボタンの掛け方を観る。一番速く掛け終って自慢げにする人もいるが、ゆっくりでも丁寧に掛ける人もいる。その場で分かることは、『素直さを持っているかどうか』であり、雇用するは後者の人である。」
「『素直さ』や『一生懸命さ』が無いと社会に出たときに能力が伸びない。」と強く語る。「特別支援学校卒業後は、社会に必要な教育が大切である。卒業後から20歳までが、一番能力が伸びる時期であり、能力を伸ばす養成期間が3~10年ある。」と大田社長はいう。
「就職に際しては、就職先のニーズが大事であるが、当社では、仕事を一つずつ覚えてもらい、全ての仕事ができるような『多機能工化』した人材を求めている。一つ覚えて「I」、二つ覚えて「L」、三つ覚えて「C」、全て覚えて「O」となり、これを当社では「I・L・C・O」と呼んでいる。」とのこと。
障害のある人の雇用に係る工夫について、大田社長に伺った。
「当社の場合、雇用してからの適性は、工場長が見て判断している。長期雇用するためには、彼らの『はけ口』が必要である。一人のみの障害者雇用ではなく、数名雇用する方が良いと思う。同レベルの仲間がいると『はけ口』になる。」
また、経済的な概念についても語っていた。
「彼ら自身に、お金と経済について知ってもらうことも大事である。例えば、給料(お金)がもらえれば、欲しいものを買うことができ、物欲が満たされるということを。物が欲しいから働いてお金をもらう。時にはボーナスも与えると、彼らは、親に『お金』をあげたり、何かを『買って』あげる。すると親が喜ぶ。そして、親が喜ぶことに満足し、さらに働く。これは、『第三者の喜びのために働く』ということである。そして、『社会のために働く』ことにより、社会人となる。」
「今のところは、親の喜ぶところまでしかたどり着いていないが、将来的に『社会のために働く』ことまで理解してもらいたいと考えている。」とのこと。大田社長によれば、「ものづくりも、難しい部分を分けて行えば、誰でも行うことができる。」と高度な技術を持ちながら、障害のある人が作業しやすい環境づくりに配慮し、生産性を高める取組みを行うことができることを話してくれた。
最後に、これから障害のある人の雇用を考えている企業等へのアドバイスとして、メッセージを伺った。
「雇用に係る責任者が、自社の職場環境に近い企業を見学することで、どのように雇用するのか理解がしやすくなる。つまり同じレベルの会社において、障害のある人を雇用している『現場』を見ることが大切であるということである。」
「また、自分の稼ぎ分を障害のある人に『施す』という考えでは、雇用の長続きはしない。他の従業員の不満が高まるだけである。」とのメッセージをいただいた。
大田社長によれば、「企業側の理解も大切であるが、彼らが通勤する地域の理解も必要である。」とのことであり、企業側の理解だけでなく、継続就労するために必要な自力通勤。そして、彼らの「働く」を見守る地域の理解も必要であることを加えて語っていた。
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