形成外科
形成外科で行うこと
身体の体表面に生じた組織の異常や変形、欠損などに対して、機能的、形態的な改善を図る治療を行います。この治療が、患者さまの心理的な苦痛・悩みを取り除くことにつながり、その結果、患者さまの生活の質 "Quality of Life" の向上に貢献します。
形成外科の対象疾患は数多くあり、別の診療科のように特定の身体の部位のみを治療するわけではありません。足の先から、頭のてっぺんまで、全身に対して治療を行います。
なかでも、こども病院の形成外科では、唇裂・口蓋裂、手足の先天異常(多指症・合指症など)、耳介変形症状(小耳症・埋没耳・立ち耳など)、頭蓋骨早期癒合症(脳外科と協力して)などの顔面・頭部の疾患や、漏斗胸、臍ヘルニア、皮膚良性腫瘍などを診療しています。
形成外科の特徴
「口唇口蓋裂」
口唇口蓋裂診療チームとして関連した診療科と連携した医療を実践
こども病院の口唇口蓋裂の治療実績は、厚労省DPC統計でも全国ベスト10入りしています。口唇口蓋裂はチーム医療が大切な疾患であり、必須ともいえます。口蓋裂のある場合は、滲出性中耳炎がほぼ必発で、耳鼻咽喉科で聴力検査や手術を行い管理します。また新生児で口蓋裂幅が広い、哺乳がすすまない場合には、歯科と連携して口蓋床治療(Hotz床)も行っています。また、ことばの発達もしっかりと経過観察していく必要があり、言語聴覚士が言語発達の評価・訓練を担当します。新生児期に哺乳がうまくできない場合には、助産師による哺乳指導を、またその後離乳食が始まった時期の食事相談は栄養科が担当します。顎裂がある場合には歯科矯正が必須となってきますが、これは外部の矯正歯科(主に東京歯科大学)と連携させていただいています。このように他科・他職種にわたる連携が必要な治療ですが、当院ではチーム体制をとりかつ、口唇口蓋裂治療を多く経験しているスタッフも多数在籍しており、スムーズに治療・連携がすすめられます。
「耳介変形症状」
先天的な耳介変形症状としては様々なものがあります。副耳や埋没耳、折れ耳、立ち耳、耳垂裂、小耳症などの治療を積極的に行っております。埋没耳などの矯正ができる疾患に対しては、生後早期の矯正治療も行っております。小耳症に対しては、札幌医科大学の四ツ柳先生の手術方法に準じて治療を行っております。
「手足の変形症状」
多指・趾症、合指・趾症、裂手・裂足に対する治療を主に行っております。手指・足趾の短縮がみられ骨延長が必要な場合や、複雑な変形症状がある場合には整形外科と合同で手術を行います。
「先天性下口唇麻痺」
先天的に片側の下口唇部の動きが悪く、開口時などに左右非対称がみられる疾患です。この症状改善のために大腿筋膜を移植する手術を行っております。侵襲の少ない治療ですのでお気軽に相談してください。
海外の患者さま受入れについて、下口唇麻痺に対する診療をご希望される場合は、詳細をご確認いただきダウンロードして手続きしてください。
※Wordファイル、PDFファイル共に同じ内容のものになります。
手術内容 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|
口唇口蓋裂 | 124 | 96 | 103 |
耳介変形 | 19 | 29 | 25 |
四肢先天異常 | 35 | 25 | 28 |
体幹先天異常 | 9 | 12 | 8 |
小児専門医療施設の形成外科として、さまざまな診療をしています
形成外科では、複数の疾患や合併症を有するこども達も多く診療しています。形成外科で手術する疾患と、心臓疾患や他の内科系疾患を合併する場合もあり、複数の内科系、さらに外科系診療科、多くのコメディカルスタッフと連携して診療します。
また、入院中の患者さまの褥瘡ケアや、点滴漏れの診察、治療には、専門看護師(WOCナース)と協力して対応しています。
主な疾患
口唇口蓋裂
口唇裂、口蓋裂、粘膜下口蓋裂、鼻咽腔閉鎖機能不全:チーム医療体制をとり、積極的に治療を行っています
耳介変形
- 小耳症:札幌医科大学の四ツ柳先生の耳介形成術法に準じて治療を行っています
- 埋没耳、折れ耳、たち耳:生後早期であれば手術修正だけではなく矯正治療もおこなっています
- 副耳
- 先天性耳瘻孔
頭部・顔面の先天性疾患
- 顔面裂、巨口症
- 先天性眼瞼下垂症
- 先天性下口唇麻痺(顔面神経下顎縁枝麻痺):大腿筋膜移植による修正を行っています
- 舌小帯短縮症、舌裂、巨舌症
頭蓋骨早期癒合症
頭蓋骨早期癒合の頭蓋骨変形に対する骨切り手術(脳外科と協同で手術します)
手・足の先天性疾患
- 母指多指症、その他多指(趾)症
- 合指(趾)症
- 先天性絞扼輪症候群
- 巨指(趾)症
- 裂手・裂足
複雑な先天的な変形症状に対しては整形外科と合同で手術をおこなっています
胸郭・腹部先天性疾患
- 漏斗胸(胸が凹んでいる):主にNUSS法による胸郭形成をおこなっています
- 鳩胸(胸の突出)
- 臍ヘルニア・臍突出
皮膚・皮下組織(全身)
皮膚良性腫瘍(石灰化上皮腫、デルモイド、リンパ管腫、母斑:色素性母斑、脂腺母斑、表皮母斑など)の摘出術をおこなっています。
褥瘡・難治性潰瘍に対しても当院褥瘡専門看護師(WOCナース)と連携して治療を行っています。
当院では対応が難しい疾患もあります。
あざや血管腫のレーザー治療は行っておりません。(当院には、レーザー装置がありません)
また、広範囲熱傷(やけど)などは、専用の設備が必要ですので、当院では対応しかねます。
医師紹介
主任医長 | 石垣 達也
|
---|---|
医員 | 小野 智洋
|
非常勤医師 | 宇田川 晃一(こども病院形成外科・前部長) |
外来予定表
午前
区分 | 月曜日 | 火曜日 水曜日 |
木曜日 | 金曜日 |
---|---|---|---|---|
処置外来(51診察室) | 小野医師 | 手術日 | 小野医師 | 手術日 |
形成外来(52診察室) | 石垣医長 | - | 石垣医長 | - |
午後
区分 | 月曜日 | 火曜日 水曜日 |
木曜日 | 金曜日 |
---|---|---|---|---|
処置外来(51診察室) | 小野医師 | - | 小野医師 | - |
形成外来(52診察室) | 石垣医長 | - | 石垣医長 | - |
※火曜日、水曜日、金曜日は手術日となり、原則として外来診療は行っておりません。
初診患者さまの診察について
新規の紹介患者さまの診療は、石垣主任医長が主に担当しております。
治療実績
2022年
疾患大分類 手技数 |
入院 | 外来局麻 | 合計 |
---|---|---|---|
外傷 | 1 | - | 1 |
先天異常 | 223 | - | 223 |
腫瘍 | 36 | 14 | 50 |
瘢痕・瘢痕拘縮・ ケロイド |
7 | 3 | 10 |
難治性腫瘍 | - | - | - |
炎症・変性疾患 | - | - | - |
美容(手術) | - | - | - |
その他 | 1 | - | 1 |
合計 | 268 | 17 | 285 |
2023年
疾患大分類 手技数 |
入院 | 外来局麻 | 合計 |
---|---|---|---|
外傷 | 1 | - | 1 |
先天異常 | 244 | - | 244 |
腫瘍 | 75 | 9 | 84 |
瘢痕・瘢痕拘縮・ ケロイド |
13 | 1 | 14 |
難治性腫瘍 | 1 | - | 1 |
炎症・変性疾患 | 3 | - | 3 |
美容(手術) | - | - | - |
その他 | - | - | - |
合計 | 338 | 10 | 343 |
関連論文・書籍
石垣 達也, 鈴木 啓之, 【形成外科の治療指針update 2019】四肢疾患 巨指(趾)症,形成外科 62巻増刊 Page S159(2019.06)
Ishigaki T, Akita S, Suzuki H, Udagawa A, Mitsukawa N.,
Cervical chondrocutaneous branchial remnants: A report of 29 cases and review of the literature., Auris Nasus Larynx. 2021 Apr;48(2):288-294.
Ishigaki T, Akita S, Suzuki H, Udagawa A, Mitsukawa N.,
Postaxial polydactyly of the hand in Japanese patients: Case series reports.,
J Plast Reconstr Aesthet Surg. 2019 Jul;72(7):1170-1177.
Ishigaki T, Akita S, Suzuki H, Udagawa A, Mitsukawa N., Central polydactyly of the foot: An experience of a treatment of 22 patients., J Orthope Sci. 2021 Dec 15
Ishigaki T, Udagawa A., Use of the modified cleft lip repair technique to establish a cupid's bow with a natural structure., Cleft Palate Craniofac J. 2021 Jun;58(6):791-795.
What are the key risk factors of keloid formation after repair of syndactyly of the toe?
Ishigaki T, Akita S, Udagawa A, Suzuki H, Mitsukawa N.
J Orthop Sci. 2023 Mar;28(2):426-431.
The Relationship between Submucous Cleft Palate and a History of Nasal Regurgitation in Patients during Infancy.
Ishigaki T, Akita S, Udagawa A, Suzuki H, Mitsukawa N.
Journal of Plastic and Reconstructive Surgery, Article ID 2022-0046, Advance online publication February 16, 2024
宇田川晃一, 小児の顔面神経下顎縁枝麻痺に対する手術治療の時期とコツ,日本医事新報 4753号 Page61-62(2015.05)
宇田川晃一, Furlow法による口蓋裂初回形成術 コツと中長期観点からの私の工夫, PEPARS 96号 Page12-18(2014.12)
宇田川 晃一, 鈴木 啓之,吉本信也、梁井まり、松本文昭, 【形成外科領域における症候群】頭蓋・顔面の異常を主徴とする症候群 しばしば唇裂・口蓋裂を伴う症候群, 形成外科 48巻4号 Page377-386(2005.04)
Udagawa A, Arikawa K, Shimizu S, Suzuki H, Matsumoto H, Yoshimoto S, Ichinose M. A simple reconstruction for congenital unilateral lower lip palsy. Plast Reconstr Surg. 2007 Jul;120(1):238-244.
鈴木 啓之, 石垣 達也, 【形成外科の治療指針update 2019】体幹疾患 臍ヘルニア、臍突出症,形成外科 62巻増刊 Page S143(2019.06)
鈴木 啓之, 宇田川晃一,【先天性外耳異常の再建法】副耳の形態による治療, 形成外科 56巻6号 Page629-636(2013.06)
鈴木 啓之, 【周産期医学必修知識】新生児 唇裂・口蓋裂の治療法, 周産期医学 (36巻増刊 Page707-708(2006.12)
鈴木 啓之, 宇田川晃一,染色体異常,症候群ならびに多発奇形を合併した口唇・口蓋裂患者の検討, 日本頭蓋顎顔面外科学会誌 22巻1号 Page15-22(2006.03)
鈴木 啓之,大橋正和、【新生児入院中および健診時のチェック】健診時の形成外科的異常に対するアドバイス,処置、周産期医学 (33巻1号 Page89-93(2003.01)
医療従事者の皆さまへ
一般的には、形成外科はキズ(外傷)が専門という認識があるかと思います。
当院では、先天異常の手術治療を中心に行っており、しかも、少人数体制で運営しています。そのため、現状では外傷、広範囲熱傷への対応は、人的、設備的にも難しくお断りさせていただいております。
また、レーザー治療装置が、こども病院にはありませんので、あざや血管腫に対するレーザー治療希望の方がいましたら他院への受診を検討してください。
当院での研修について
専門医機構の教育関連病院となっており、千葉大学、昭和大学と連携しています。