新型コロナウイルス感染症療養終了後も続く症状(いわゆる後遺症)について
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2019年12月に中国・武漢で原因不明の肺炎として報告されて以降、日本を含む全世界に感染が拡大している状況です。この経過のなかで、新型コロナウイルス感染症に対する多くの知見が全世界で集積され、感染対策や診断・治療・予防法が確立されつつあります。そのようななか、新たな課題として新型コロナウイルス感染症に罹患した一部の患者にさまざまな「罹患後症状」を認めることがわかってきました。
※罹患後症状ついての相談先は下部「県の後遺症対応について」を参照してください。
代表的な症状
代表的な症状として、以下のものが報告されています。
WHOの定義
- 新型コロナウイルス感染症後の症状は、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に罹患した人にみられ、少なくとも2カ月以上持続し、また、他の疾患による症状として説明がつかないものである。通常は新型コロナウイルス感染症の発症から3カ月経った時点にもみられる。
- 症状には、倦怠感、息切れ、思考力や記憶への影響などがあり、日常生活に影響することもある。新型コロナウイルス感染症の急性期から回復した後に新たに出現する症状と、急性期から持続する症状がある。また、症状の程度は変動し、症状消失後に再度出現することもある。小児には別の定義が当てはまると考えられる。
罹患後症状の頻度・持続期間
【海外における報告】
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頻度についての海外での45の報告(計9,751例)の系統的レビューでは、COVID-19の診断/発症/入院後2カ月あるいは退院/回復後1カ月を経過した患者では、72.5%が何らかの症状を訴えていた。最も多いのは倦怠感(40%)で、息切れ(36%)、嗅覚障害(24%)、不安(22%)、咳(17%)、味覚障害(16%)、抑うつ(15%)であった。
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英国の約51万人の地域住民調査(REACT-2試験)では、有症状のCOVID-19罹患者約7万6,000人のうち、12週間以上遷延する何らかの症状を認めた患者は37.7%であった(ただし、その後の約10万人の地域住民の検討では21.6%に減少した)。
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さらに別の海外の57の報告(計約25万例)の系統的レビューでは、診断あるいは退院後6カ月かそれ以上で何らかの症状を有するのは、54%と報告されている。
- 流行初期に武漢で入院治療を受けたCOVID-19患者(1,276例、年齢中央値 59.0歳、男性 681例)のうち、12カ月まで経過観察できた1,227例中620例(49%)に退院後12カ月時点で何らかの罹患後症状を認めた。
- この武漢からの報告を含む18報告(計8,591例)の系統的レビューによると、倦怠感(28%)、息切れ(18%)、関節痛(26%)、抑うつ(23%)、不安(22%)、記憶障害(19%)、集中力低下(18%)、不眠(12%)が12カ月時点で多くみられた罹患後症状であった。12カ月時点で罹患後症状を有するリスク因子は明らかになっていないが、女性であること、COVID-19急性期の重症度が高いことが複数の研究で示唆されている。
- オランダの前向きコホート研究(342例、男性 192例)では、罹患後12カ月の時点で、軽症群、中等症群、重症群の参加者のそれぞれ16.4%、49.5%、52.5%が少なくとも1つの罹患後症状を有したとして、COVID-19の重症度と罹患後症状との関連について報告している。
【国内における報告】
- COVID-19 と診断され入院歴のある患者1,066 例の追跡調査が行われ、代表的な罹患後症状の頻度について、急性期(診断後~退院まで)、診断後3 カ月、6 カ月、 12 カ月で検討されている。
- 罹患後症状のアンケート調査結果は下図 の通りで、診断12カ月後でも罹患者全体の 30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められたものの、いずれの症状に関しても経時的に有症状者の頻度が低下する傾向を認めた(12カ月後に5%以上残存していた症状は以下の通り。13% :疲労感・倦怠感、9% :呼吸困難,8% :筋力低下、集中力低下、7% :睡眠障害,記憶障害、6% :関節痛、筋肉痛、5% :咳、痰、脱毛、頭痛、味覚障害、嗅覚障害)。
- 入院中に酸素需要のあった重症度の高い患者は酸素需要のなかった患者と比べて3ヵ月,6カ月,12カ月といずれの時点でも罹患後症状を有する頻度が高かった。全体での罹患後症状の有症状率は酸素需要あり: 45.7% (6カ月)、36.1% (12カ月)、酸素需要なし: 37.7% (6カ月)、31.8% (12カ月)であった。
- 重症度による頻度の差は10%未満であった。
- 罹患後症状は 1つでも存在すると健康に関連した QOL は低下し、不安や抑うつ、COVID-19 に対する恐怖は増強し、睡眠障害も増悪した。
- 罹患後症状に関する男女別の検討では、診断後 3 カ月時点で男性に 43.5%(259/595名)、 女性に 51.2%(174/340名)、診断後 6 カ月時点で男性に 38.0%(209/550名)、女性に 44.8%(141/315名)、診断後 12 カ月時点で男性に 32.1%(143/446名)、女性に 34.5%(96/278 名)といずれの時点でも罹患後症状を1つでも有する割合は女性に多かった。
- 世代別の検討では、若年者(40歳以下)、中年者(41~64歳)、高齢者(65歳以上)の各世代で、罹患後症状を1つでも有した割合は若年者、中年者、高齢者の順で、診断後3カ月時点で43.6%(75/172名)、51.9%(219/422名)、40.1%(127/317名)、診断後6カ月時点で39.0%(62/159名)、45.4%(181/399名)、34.1%(98/287名)、診断後12カ月時点で32.4%(36/111名)、37.7%(124/329名)、28.2%(75/266名)と、いずれも中年者で罹患後症状を認める割合が高かった.診断後12カ月時点では、若年者で感覚過敏、脱毛、頭痛、集中力低下、味覚障害、嗅覚障害が多く、中年者と高齢者では、咳、痰、関節痛、筋肉痛、眼科症状を多く認めた。
※代表的な罹患後症状の経時的変化
※画像をクリックすると拡大画像が表示されます。(JPG:593KB)
- 中等症以上の患者(n=1,003)を対象として経時的な肺機能と画像を検討した日本の研究(厚生労働科学特別研究事業横山班報告)では、筋力低下や倦怠感などの症状は時間とともに頻度が低下したが、12カ月後において、いずれも約5~10%で認められ、何らかの罹患後症状は13.6%に残存していた。
※国内外における罹患後症状の定義は定まっておらず、研究対象者の選び方やフォローアップの方法なども、研究によって異なるため、結果を単純に比較することは困難であり、また、いずれの研究に関しても、非罹患者との比較を行っておらず、結果の解釈には留意が必要。
県の後遺症対応について
県では、後遺症の診療をテーマとした医療機関向けの研修会を開催するなど、多くの医療関係者が最新の知見を得て、かかりつけ医などの地域の医療機関で広く後遺症患者に対応できるように努めています。後遺症と思われる症状について相談したいこと等がある方は、まずはかかりつけ医や新型コロナウイルス感染症の診断を受けた医療機関へお問い合わせください。なお、かかりつけの医療機関等がない場合やかかりつけの医療機関等が後遺症の診療に対応していない場合等に、以下のリストを活用し医療機関をお探しください。
参考文献
下記のとおり、手引き等がご利用いただけますので、参考にしてください。
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