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更新日:令和5(2023)年8月3日
ページ番号:23261
答申第186号
平成17年2月9日
千葉県教育委員会
委員長伊藤潔様
千葉県情報公開審査会
委員長大田洋介
異議申し立てに対する決定について(答申)
平成15年11月26日付け教指第1278号による下記の諮問について、次のとおり答申します。
記
平成15年9月1日付けで異議申立人から提起された平成15年7月28日付け教指第774号で通知した行政文書部分開示決定に係る異議申立てに対する決定について
諮問第263号
答申第186号
第1 審査会の結論
千葉県教育委員会(以下「実施機関」という。)の決定は、妥当である。
第2 異議申立人の主張要旨
1 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、実施機関が平成15年7月28日付け教指第774号で行った「平成14年5月16日付け教育長あての『抗議及び要求書』に対する回答についての決裁文」及び「平成14年5月16日付け教育長あての『抗議及び要求書』の供覧文書」(以下「本件文書」という。)についての行政文書部分開示決定(以下「本件決定」という。)の取消しを求めるものと解される。
2 異議申立ての理由
異議申立ての理由は、次のとおりであると解される。
開示された文書については、文書番号がない、起案用紙が付いていない、収受印がない、供覧月日がわからない、文書保存期間がわからない、文書に日付がない、旧生徒指導室長は電話で回答書を読み上げたなどの点において不適切なものであり、正式な行政文書であると認められない。
第3 実施機関の説明要旨
実施機関の説明は、おおむね次のとおりである。
1 本件文書の異議申立ての趣旨について
実施機関は、異議申立ての趣旨が不明確なため、行政不服審査法第48条の規定により準用される第30条の規定により、平成15年9月19日付け教指第1021号により審尋を行い、当該審尋に対する平成15年9月22日付けの回答及び異議申立人の主張から、本件異議申立ての趣旨及び理由を以下のとおり要約した。
本件決定により開示を受けた文書は、異議申立人が発した「抗議及び要求書」に収受印が押されていないこと、決裁、供覧を行ったとされる簡易決裁用紙に行政文書として備えるべき要件が欠けているので、行政文書とは認められない。異議申立人の行った開示請求については、行政文書不存在として決定すべきであったのに、行政文書としては認められない手続上瑕疵のある文書を行政文書として取り扱い、部分開示を行った本件決定は違法であり、取り消されるべきである。
2 千葉県情報公開条例(平成12年千葉県条例第65号。以下「条例」という。)第8条第2号該当性について
本件文書で不開示とした部分は、異議申立人が教育長にあてた「抗議及び要求書」のうち、個人の氏名及び住所が記載されている部分である。個人の氏名は、当該情報のみにより特定の個人が識別される情報であり、また、住所は個人の住居に関する情報であり、他の情報と照合することにより特定の個人を識別することができることとなる情報であるため、条例第8条第2号に該当し、不開示とすることができるものである。
3 行政文書について
本件文書について、千葉県教育庁等行政文書規程(昭和61年千葉県教育委員会訓令第2号。以下「文書規程」という。)に基づく文書処理が行われていないなど不適切な事務処理があったことは認めるが、文書規程は、訓令であって行政組織の内部的な規範であり、外部に対する法的効果を有するものではなく、県民の権利義務に係る定めではないこと、また収受印については、申請書等の受付業務における収受日の特定のため押印することとなっているが、その収受印の有無によって、当該文書の有効、無効が左右されるものではない。
したがって、本件文書を行政文書として特定し、部分開示した本件処分については、違法性はなく、取消事由にならないものである。
第4 審査会の判断
当審査会は、異議申立人の主張及び実施機関の説明並びに本件文書をもとに審査した結果、以下のように判断する。
1 本件文書について
(1) 本件文書は、「平成14年5月16日付け教育長あての『抗議及び要求書』の供覧文書」及び「平成14年5月16日付け教育長あての『抗議及び要求書』の供覧文書に対する回答についての決裁文書」であり、開示された文書には、収受印がない、供覧文書及び余白処理した起案文書には処理印の押印がないため、起案・供覧月日、決裁・供覧終了月日、文書保存期間等が直ちにわからないなど、文書処理に不適切な部分のあることが認められる。
(2) 本件文書に記載された情報のうち、実施機関が不開示とした情報は、生徒の氏名、学校名、担任の氏名、校長の氏名、発信者の住所氏名及び欄外に押印されている発信者の氏を表象した印影である。
2 行政文書について
異議申立人は、部分開示を受けた行政文書は、行政文書として備えるべき要件が欠けているので、行政文書とは認められないと主張していることから、以下検討する。
(1) 条例第2条第2項に規定する行政文書について
条例第2条第2項において、「行政文書」とは、「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているもの」と定義し、条例の対象となる行政文書の概念を明らかにして、その範囲を定めている。
また、条例の解釈運用基準によれば、「組織的に用いる」とは、職員が自己の職務の範囲内において作成又は取得したもので、組織としての共用の実質を備えた状態、すなわち、組織において事務又は事業の執行上必要なものとして、利用又は保存されている状態のものと解され、作成又は取得された文書が、どのような状態にあれば組織的に用いるものといえるかについては、文書の作成又は取得の状況、当該文書の利用の状況、保存又は廃棄の状況を考慮して実質的な判断を行うことになるとされている。
(2) 本件文書の条例第2条第2項該当性について
条例に規定する行政文書とは、上記1(1)のとおりであり、文書管理のための帳簿に記載すること、収受印があること等の手続的な要件を満たすことを要するものではない。
本件文書のうち「抗議及び要求書」の部分は、内容証明郵便で送付されたもので、文書規程に基づく特殊文書収配簿に記録され、実施機関の職員が職務上組織内で供覧に付し、また、事案の決定のための案を作成して、回議に付しており、文書の形態、文書に係る事務手続等から職員個人の段階のものではなく、共用文書として実質を備えた文書であるということがいえ、さらに、当該実施機関において常時使用する文書として編冊し、組織として管理している職員共用の保存場所に保存していると認められる。
異議申立人が異議申立書において主張しているように、本件文書は、不適切な事務処理があった事実が確認されたが、条例で規定する行政文書としていずれの要件も満たしていることから、行政文書に該当する。
3 本件決定について
実施機関は、本件文書に記載された情報のうち不開示とした情報が、いずれも条例第8条第2号に該当するとしているので、以下検討する。
条例第8条2号は、個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述により特定の個人を識別することができるものについて、同号ただし書に該当する情報を除き、不開示情報として規定している。
実施機関が不開示とした情報のうち、生徒の氏名、担任の氏名、校長の氏名、発信者の住所、氏名、印影は、特定の個人が識別される情報であり、同号本文に該当する。
そこで、これらの同号ただし書該当性について検討する。
まず、これらの情報は、慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報とはいえず、また、人の生命、健康、生活又は財産を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報ではないことから、同号ただし書イ及びロにも該当しない。
次に、同号ただし書ハは、識別される個人が公務員等である場合で、その情報がその職務の遂行に係る情報であるときは、当該情報のうち、当該公務員等の「職」及び「職務遂行の内容」について開示するものとしている。
そこで、同号ただし書ハにいう公務員等の職務の遂行に係る情報について検討すると、「職務の遂行に係る情報」とは、公務員等が実施機関の一員として、その担任する職務を遂行する場合における当該活動についての情報であるとき、例えば、実施機関の職員が分掌事務として配分された事務を遂行する行為について、行政文書に記録された情報、職務としての会議の出席、発言その他の事実行為に関する情報など、具体的な職務の遂行と直接の関連を有する情報を対象としているものである。
本件文書の「抗議及び要求書」には、生徒のプライバシーに関わる内容、職員個人に関する評価情報などを含む内容が記載されていることが認められる。これらの情報は、当該職員の具体的な職務の遂行との直接の関連を有する情報ではなく、同号ただし書ハに規定する職務遂行に係る情報には該当しない。
また、千葉県情報公開条例第8条第2号又は第3号に該当する情報について開示の特例を定める条例(平成9年千葉県条例第31号。以下「特例条例」という。)第2条では、実施機関の職員の職務遂行に係る情報に含まれる県の機関に属する職員の氏名については、条例第8条第2号の規定にかかわらず、開示するものと規定しているが、「抗議及び要求書」に記載された情報が、上記のとおり職務遂行情報に係る情報には該当しないと判断されることから、担任の氏名及び校長の氏名は、特例条例第2条に該当しない。
次に、学校名は、その情報だけでは特定の個人を直接識別することはできないが、開示された場合、上記で不開示が妥当であると判断した校長の氏名は、職員録等の情報と照合することによりで容易に識別されるものと認められ、条例第8条第2号の不開示情報に該当するものと認められる。
したがって、本件文書で不開示とした情報は、条例第8条第2号に該当し、特例条例第2条に該当しないものである。
4 実施機関における文書管理について
行政文書の取り扱いについては、文書規程に基づき文書処理が行われるものであるが、実施機関は、収受、作成、整理、保存等の具体的な処理手続については、不適切な事務処理があったことは認めているところである。
当審査会において本件文書を見分すると、文書の収受、文書の処理等における不適切な事務処理が、異議申立人の誤解、不信を招いたものと認められるところであり、文書規程に基づく適正な文書の取り扱いについての徹底を促すものである。
5 結論
以上により、実施機関が本件請求に対し条例第8条2号を理由に特定の個人が識別される情報を不開示とした決定は妥当である。
第5 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。
別紙
年月日 |
処理内容 |
---|---|
15年11月26日 |
諮問書の受理 |
16年2月19日 |
実施機関の理由説明書の受理 |
16年12月16日 |
審議 |
(参考)
氏名 |
職業等 |
備考 |
---|---|---|
岩間昭道 |
千葉大学大学院専門法務研究科長 |
部会長職務代理者 |
大田洋介 |
城西国際大学非常勤講師 |
部会長 |
佐野善房 |
弁護士 |
|
福武公子 |
弁護士 |
|
(五十音順:平成16年12月16日現在)
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