ここから本文です。
更新日:令和6(2024)年12月12日
ページ番号:715476
本県の農業改良普及事業に関して、普及指導計画に基づき農業事務所改良普及課が実施した前年度の農業改良普及活動・成果及び体制等について、幅広い視点から検討を行える優れた見識を有する者(以下、「外部有識者」という。)による意見交換会を開催し、より高い成果が得られるよう普及事業の改善を図る。
令和6年10月16日(水曜日)午前11時から午後4時
JAきみつ小櫃支店2階会議室
千葉県
外部有識者、農業事務所改良普及課、担い手支援課
区分 | 所属・職名 | 氏名 |
---|---|---|
先進的な農業者 |
千葉県指導農業士会 会長 |
澤邉 治之 |
若手農業者 |
千葉県農業士協会 副会長理事 |
夛田 裕一 |
女性農業者 | 千葉県指導農業士 | 鳥海 美知子 |
農業関係団体 |
全農千葉県本部 営農支援部長 |
田中 公博 |
消費者 |
ちば野菜伝道師 |
髙原 和江 |
学識経験者 |
千葉大学大学院 園芸学研究科教授 |
櫻井 清一 |
報道機関 | NHK千葉放送局 コンテンツセンター長 | 田村 寛徳 |
民間企業 |
千葉銀行法人営業部 ビジネスソリューショングループ アグリビジネス副調査役 |
川名 純矢 |
■題名
地域特性を生かした野菜・水稲複合経営の確立
■概要
君津市、富津市の中山間の農村地域は、水稲栽培中心の中小規模の生産者で成り立っている。近年の米価の低迷により、新規品目として野菜を導入したが、水田転換畑の粘土質土壌で収量があがらず、また、全国的な課題でもある労働力確保への対応を求められていた。
無理のない農作業で、安定した所得確保ができる経営体を育成し、農村地域の活性化につなげていくことを目的に活動を行い、労働力不足については農福連携が、実需者からの生産工程の安心を求める声に対してはGAP(農業生産工程管理)認証取得への取組が進んでいる。また、地域に適した栽培方法を模索し収量が増加した。
■質疑応答・意見
[質問1]
富津市で検討している農福連携はどのようなものか。
[回答1]
品目はブロッコリー、キャベツ等の露地野菜を考えている。福祉人材に関心のある農家がいて、どのように進めるか相談している。
[質問2]
富津市で検討している農福連携はどのような作業か。
[回答2]
作業は植え付け、種まき等を想定している。
[質問3]
福祉事業所の指導員は、実際に障がい者と一緒に作業を行い、作業の細分化などを行うのか。
[回答3]
障がい者にお願いする作業が可能かどうかの助言をいただいている。また、どのようにしたら作業可能かということも一緒に考えてくれる。先週、サヤインゲンを使い、どのように作業したらよいか一緒に検討を行った。
[質問4]
農福連携の作業は他に拡大できそうか。また、どのような作業ができそうか。
[回答4]
障がい者が可能な作業について、福祉事業所の指導員から教わりながら探っているところである。
[質問5]
2か所の福祉事業所から障がい者が派遣されると聞いた。障がいの種類や程度も様々と思うが、ここで作業をする人は類似した障がいをもつ障がい者が派遣されるのか、あるいは様々なタイプの障がい者なのか。
[回答5]
福祉事業所によって可能な作業に違いがある。袋詰め、箱詰めが可能な事業所と、始めは箱詰めのみから始める福祉事業所があるため、障がい者ができる範囲で作業をお願いすることを考えている。
[意見]
・福祉事業所の活用事例があるので、ぜひ見てほしい。
■題名
自給飼料生産の拡大支援及び畜産経営体の経営改善への取組
■概要
海匝地域は県内トップの畜産の農業産出額を誇る地域であり、規模拡大を進め大規模化している経営体も多くある。このような状況の中、近年の飼料価格の高止まりも重なり、自給飼料の生産拡大による生産コストの低減及び家畜ふん堆肥の利用促進の必要性が高まっている。
そこで、利用度の低かった養豚農家の農地を活用した飼料生産や、水田を活用した二毛作生産への取組を支援し、自給飼料の生産拡大を図り、畜産農家の生産コスト低減に向けた飼養管理技術・経営管理技術の改善への取組を支援した。その結果、自給飼料生産面積の拡大や自身の経営の課題を明確化し解決に取り組む経営体の増加につながった。
■質疑応答・意見
[質問1]
飼料用オオムギを導入することで、以前に比べて、水稲の植え付け時期に変化はあるか。
[回答1]
水田のオオムギ収穫は4月中旬から開始し、5月初旬には終了するため、イネWCSの作付け(5月上中旬)には影響しない。
[質問2]
耕作放棄地の再生した圃場はまとまった農地なのか。それとも点在しているのか。
[回答2]
点在している。50aくらいまとまっていると良いとコントラクター組合から要望しているが、ダイコン及びキャベツの大産地なので、なかなかまとまった農地が無い。そのため、点在していても、ある程度近場でまとまっていれば、ほ場を再生利用している。
■題名
経営体強化によるねぎ産地の維持・発展
■概要
山武地域はネギの大産地だが、高齢化による担い手の減少、労力不足が深刻となっている。産地の維持・発展のためには既存生産者の労力確保と規模拡大及び新規栽培者の確保が必要である。労力確保対策として、雇用導入及び複数の生産者による共同経営の提案・支援を行ったところ、複数の生産者が常時雇用の導入や、共同経営の実施に向けて動き出した。また新規栽培者確保に向けては、平成30年度からJAと農業事務所が連携して研修会「農業塾」を開催し、多くの新規栽培者を育成してきた。さらに令和5年度からは、「農業塾」を核に、関係機関が連携して非農家出身者を就農・定着に繋げる体制を構築し、JAが、県により研修機関の認定を得た。
■質疑応答・意見
[質問1]
「農業塾」は今後も継続する予定なのか。また、受講者累計128名とのことだが、新規就農者なのか、他品目の栽培者が品目の転換により新規に始めているのか。
[回答1]
今後も継続予定である。受講者は新規就農者や他品目から転換する農家や、他品目と複合で始める農家もいる。
[質問2]
JAとの連携について、具体的な役割分担はあるか。
[回答2]
農業塾の運営はJAが行っており、講習会の講義は主に農業事務所が担当している。時期ごとに必要な作業を説明しており、新規の人でも分かりやすく具体的な内容を伝えている。
[質問3]
ネギ以外の品目において、国の新規就農者の助成制度を利用しているケースはあるのか。
[回答3]
管内では「さんぶ野菜ネットワーク」「ソムリエファーム」が研修機関となっている。新規就農者の希望品目によって研修機関を選択することができる。
JA山武郡市では、まずはネギを足掛かりに研修を開始し、今後は研修品目の拡大も視野に入れている。
[質問4]
新規就農者は地元出身者なのか、あるいは外から入ってくるのか。また、住居の確保に向けて市町とどのように連携しているか。
[回答4]
農業塾の受講生は地元の人が多い。住居は、農業事務所で提案することはできないため、新規就農者本人で探すことが多い。まずはアパートを借りて就農し、地域からの信頼を得て、空き家を紹介してもらう事例もある。
[質問5]
外国人材の雇用では、任せられる作業とそうでないものがあると思う。栽培マニュアルを作成し、外国人材に作業をしてもらうことで、栽培管理の労力の課題は解消したか。
[回答5]
ほ場の管理は力仕事もあり、技術も必要なので、生産者は自分の右腕になるような人を求めている。外国人材も含めてそのような人材の育成ができるよう支援している。
■題名
地域内飼料の拡大と畜産経営の安定化
■概要
市原市における水田を活用した飼料生産は、米価下落や担い手の規模拡大により飼料用米を中心に増加傾向にある。また、輸入飼料価格の高騰により酪農家のWCS用イネの需要が高まり、令和4年から市原市の水稲農家が専用品種のWCS用イネの生産を開始した。飼料用米の生産技術の向上やWCS用イネを生産・利用する耕畜連携システム構築等に取り組んだ結果、飼料用米、WCS用イネともに生産面積が拡大し、令和5年度には新たなコントラクター組合が設立された。
畜産経営では酪農家を重点対象とし、稲WCSの利用促進や、飼料費低減を図るとともに、専門家等と連携した給与量指導を行い、乳量が向上した。
■質疑応答・意見
[質問1]
輸入飼料の高騰の中、稲WCSと飼料用米の生産拡大で地域の畜産経営も安定とのことだが、経営者の費用負担や収入等の経済面で見たときの効果について数字で示せるものはあるか。
[回答1]
酪農経営における地域内自給飼料等の利用による経営的効果については、流通飼料価格と自給飼料等の価格との差から試算できる。
稲WCSは乾牧草の一部と代替可能。県内の平均的な経営(40頭規模)で、イネ科牧草であるスーダンを稲WCSに置き換えた場合、エサ代を約200万円/年削減できる試算となる(R5県酪農協プレミアムグレード価格)。
飼料米は配合飼料と一部代替可能で、同様に配合飼料から飼料米に2kg程度置き換えた場合(※)、飼料費を年間で約150万円削減できる試算となる。
※全体:10kg、置き換え2kg(約2割)
一方で、自給飼料等を使う場合、稲WCSは300~500kgのロールベールで流通しているため専用運搬機が必要になり、飼料米は屋内の保管場所が必要となるとともに籾米や玄米のままでは牛の消化が悪いため、粉砕機を導入する必要がある。
また、水稲経営体にとっても、稲WCS及び飼料用米生産により9~13万円/10aの売り上げを見込むことができ、経営の安定につながっている。さらに、大規模水稲経営にとっては、作業労力の分散ができるため経営面で有効。
[質問2]
イネWCSの取組の素晴らしさが数値化されて、世間に知られるようになると良いと思った。飼料用米やイネWCSを利用している畜産農家の声はどうか。
[回答2]
昨年度お試しで市原市の農家に給与したが、市原市の酪農家は家族経営であり、経営規模が大きくないことから、大量の飼料用米を保管する場所や飼料に混ぜる機械がない。そのため、市原市内で循環することはできない。そこで、視点を広げて、管内の大きな農場を供給先として見つけた。家族経営の酪農家が今後持続可能な経営を行うためには、どのような経営改善が必要かは、今後聞き取りをして整理する必要がある。
[質問3]
イネWCS及び飼料用米を地域内での消費すること重要だと考えるか、どのくらいの距離間であればモデルとなりえるのか。
[回答3]
イネWCSでは市原市内の供給はできていないが、飼料用米では供給できている。新しく設立したコントラクター組合では、イネWCSを生産する組織であり、供給先として、市原市内だけでなく、管内の市町村へ片道20kmほどの距離のところまでイネWCSを運んでいる。
■題名
担い手の規模拡大と持続的な高品質生産によるサツマイモ産地の維持・強化
■概要
JAかとり香取西部園芸部の基幹品目であるサツマイモは、平成27年当時、国内だけでなく、海外でも需要が拡大し始めた一方で、担い手の減少により栽培面積は減少していた。家族労力のみの経営体が多く、経営規模の拡大にはさらなる省力化及び労力確保が必要であった。また、従来の貯蔵設備では、春以降の品質低下が問題となっていた。さらに、出荷量をまとめることにより有利販売を図るため、新たな集出荷施設の建設が検討されていた。
そこで、生産者全体の現状と経営意向を調査して担い手が目指すべき経営モデルを作成し、これに向けての省力化機械及び定温貯蔵庫導入を中心とした産地振興を支援した。また、各支部の出荷から、集出荷施設2か所への集約出荷への移行を促した。さらに、新たに導入された品種「シルクスイート」の栽培、貯蔵技術を確立した。その結果、産地として、品種別販売方針に基づいた周年出荷体制が構築され、販売力が向上するとともに、サツマイモ生産者の大規模化が進んだ。
■質疑応答・意見
[質問1]
マーケティングの取組について、出荷品質の統一のために栽培技術等を共有したとあるが、具体的にはどのようなことを行ったのか。
[回答1]
県で作成した品種別の出荷時期・販売方法を生産者に周知徹底した。また、「べにはるか」等の品種の品質を維持するための貯蔵期間の周知徹底、「シルクスイート」の栽培技術の周知を、関係機関と連携して行った。
■題名
水稲専作農家が始めた水田転換畑及び水田裏作における野菜生産の取組支援
■概要
水稲経営における高収益化を実現するために、基盤整備を進める黒部川左岸第三地区で、水田ほ場における水稲以外の作物(高収益作物)の安定生産体制確立を支援した。
水田転換畑でネギ生産に取り組む小見地区の農事組合法人では、水稲とネギの作業管理の見直し、栽培管理技術の向上支援、ほ場排水性の改善に取り組んだ結果、ネギの単収が令和2年から3年間で1.4t/10aから2.0t/10aに増加した。
水田裏作でキャベツを生産する地区では、耐湿性に優れた品種や高畝栽培技術の導入を支援した結果、安定した収量を確保できる栽培管理技術を5年かけて確立することができた。
■質疑応答・意見
[質問1]
香取地区はサツマイモの産地だと思うが、サツマイモは品目として検討されなかったのか。
[回答1]
他の地区では、基盤整備事業の高収益作物の候補としてサツマイモを検討している事例があるが、当時はサツマイモの栽培は難しいと考え、裏作としては、キャベツで前例があったため選定したと思われる。
■概要
長生農業独立支援センター等関係機関と連携し、就農相談及び就農計画作成を支援した結果、令和元年度から令和5年度の間に新規就農者45名を確保することができた。また、新規就農者の定着を目的に農業経営体育成セミナーの集合研修や個別担当の配置により、セミナー修了生を16名輩出することができた。後継者がいる経営体に経営継承の意向を確認するため、アンケートを実施した結果、その意義の理解を進めることができ、さらに具体的な方向性が定まった経営体を3戸確保することができた。
■質疑応答・意見
[質問1]
R1~R5 で新規就農者を45名確保したことは素晴らしいと思う。一方で認定農業者にならなかった生産者も一定数いるように見受けられるが、農業経営体育成セミナーに参加されなかった方等、原因があれば教えていただきたい。
[回答1]
除草などの基本的な栽培管理の徹底がまだ十分ではなく、計画通りの収量及び品質が確保できない事例も散見されてる。ただし将来の担い手として可能性はあるため、農福連携の検討なども行っている。最初の段階を越えることができれば、認定農業者を目指すことも可能。農業事務所でも、認定農業者となれるよう支援を行っていくが、ハードルは高いと感じている。
[質問2]
支援センターの構成市町村が3市町村だけとなっているが、他の市町村は一緒にやっていくような方向性はあるのか。
[回答2]
連携会議で呼びかけているが、なかなか加入してもらえない。ただし、町村ごとに新規就農者の取組は行っている。希望としては、全ての市町村に入ってもらった方が、仕事は行いやすい。
[意見]
移住相談のフェアもあるため、市町村に参加してもらうと良いのでは。移住者は農業に興味のある人が多いため、農業相談と一緒に行うと効果が高いと感じた。
■題名
多様な担い手の育成―枝物・草花の産地化を目指して―
■概要
夷隅農業事務所では担い手の減少、増加する耕作放棄地対策として平成22年度から定年帰農者等を対象に「いすみ農業実践塾」を開講し、多様な地域農業の担い手育成を図ってきた。令和2年度からは近年需要が高まる枝物・草花について、定年帰農者(高齢者)を主な対象とした「枝物・草花栽培講座」を開催し、栽培者の確保と栽培技術の普及を進めた。
土質、獣害、気象条件、市場トレンドの観点から、推奨品目を4品目選定し、栽培マニュアルを作成、挿し木による自家繁殖方法を確立した。また出荷にあたり、市場、JAと協議を重ね、軽量でコストの安い梱包資材の選定を行い、令和5年度に草花推奨品目のパンパスグラスの市場出荷が始まり、5名が計470本の出荷を行った。
■質疑応答・意見
[質問1]
アメリカリョウブ、コバノズイナ、ヒュウガミズキの出荷状況はどうなっているか。
[回答1]
コバノズイナ、ヒュウガミズキは今年から出荷を開始した(アメリカリョウブは今後出荷予定)。
[質問2]
夷隅地域はスプレーストックの産地だと思うが、現在の栽培状況はどうなっているか。
[回答2]
夷隅地域は水稲農家が育苗ハウスを利用したスプレーストックの栽培を行っているが、担い手への農地集積が進んでいるため、水稲農家が大規模化しており、スプレーストックの栽培面積は減少しつつある。
[意見1]
水稲農家が育苗ハウスを利用したスプレーストックの生産は、千葉県内で一大産地を作った成功事例だと思う。ストックは引き合いが強いため、今後のストックの生産維持に向けた取り組みも行っていただきたい。
[意見2]
枝物・草花栽培の取組では、産地で新しい可能性の一つを示していただいてありがたい。兼業農家や他の仕事をしている人も始めやすく、楽しみながら取り組むことができる。
・今後、地域内に農地を集積させるために、行政の支援をお願いしたい。
・親元就農などで就農者として知られていない農業者も地域にはいる。農業を絶やさないよう、農業者を増やして、農業事務所はそういった人に手を差し伸べて、一緒に頑張ってもらいたい。
・後継者の確保や事業継承が最大の課題であり、それに伴う労働力不足も課題。効率的に支援できるよう、関係機関と連携し、課題を共有しながら取り組んでいきたい。
・農業分野だけでなく、多様な分野との連携を深めていただきたい。農業や食への関心は高まっている。移住や観光、空き家などの関係部署と連携し、地域の人を増やしてもらいたい。
・農福連携や耕畜連携、畜畜連携など、個別経営体では取り組めない課題を、関係者がまとまって支援していく必要があると感じた。
・多様なテーマが課題となっていたが、いずれの課題もヒト問題が共通している。経営のマネジメント能力・技術力を持つ農家が減っていることや、農福、外国人、臨時雇用など、どのタイプの働き手も人手が不足している。ヒトの育成は普及に求められていること。これからも頑張っていただきたい。
農業事務所改良普及課等は、意見交換会の結果を、令和6年度の普及指導活動の運営、来年度の計画(令和7年度農業改良普及指導計画)の作成、次期中期計画の作成等に反映させる。また、担い手支援課も含め、活動の効率化、効果の向上に活用する。
関連リンク
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください