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更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:5980
むかし、むかし、上瀑村に三人の若者がいました。三人が集まると
「おれが一番強い」
「いや、おれだ。おれが一番強くて勇気がある」
と、たがいにじまんばかりして、ゆずりませんでした。
ある夏の夜でした。だれが一番強くて勇気があるか、きもだめしをすることになりました。村はずれにある墓地は、このところ幽霊(ゆうれい)が出るといううわさでもちきりです。そこで、お墓に杭(くい)をうって帰ってくるということにしました。
喜助(きすけ)は杭(くい)と木槌(きづち)をもってお墓にむかいました。しばらくすると
「少しも恐(こわ)くなかったよ」
真っ青な顔をして帰ってきました。平助(へいすけ)も
「残念、幽霊におめにかかれなかったよ」
と足をガクガクさせながら帰ってきました。
最後に、裕太(ゆうた)が杭と木槌をもって出かけました。裕太はいつも「おれが一番強い」といっていたものの、じつは一番おくびょう者でした。
墓地は真っ暗で、なまあたたかい風がときおり吹いて、今にも幽霊が現れそうでした。裕太は急いで杭を打ちました。(さあ、打ち終わった)、ふり向いて帰ろうとしましたが、うしろから着物のすそをひっぱられ、進むことができません。
「キャーで、でたー。幽霊がでた。たすけてー」
裕太はてっきり幽霊につかまえられたと思い、大声をだして気絶してしまいました。
裕太の帰りがあまりおそいので、喜助と平助が行って見ると裕太は墓のそばにたおれていました。
「ユウタ、ユウタ・・・」
よびおこすと、ようやく息をふきかえしました。
裕太が幽霊につかまえられたと思ったのは、じつは自分で自分の着物に杭を打ちつけてしまったのでした。
裕太は、自分はよわ虫であわてものであることに気づきました。このあと(これからは、なにごとも落ち着きがかんじん)と、心がけるようになりました。それで、やがてしっかりした立派な男になりましたとさ。
おしまい
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