ここから本文です。
ホーム > 教育・文化・スポーツ > 歴史・文化 > 文化・文化財 > その他の文化資源 > 語り継ごう千葉の民話・民謡・童謡 > 民話・民謡・童謡の一覧 > (大多喜町)大多喜城あけわたしとオコウさま
更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:5969
「城(しろ)をあけわたすことはしのびない。しかし、近代的兵器(きんだいへいき)をもつ官軍(かんぐん)と戦(たたか)えば敗戦(はいせん)はあきらか。多くの民(たみ)、百姓(ひゃくしょう)が命(いのち)をうばわれ、お城も田畑も焼かれてしまう・・・」
慶應(けいおう)四年(1866)四月、大多喜城最後の殿様、大河内正質(おおこうちまさただ)は官軍への「城あけわたし」を決意した。
侍女(じじょ)のオコウにも奥方さまから伝えられた。
「城を出なさい。敵(てき)がせめてきます。今夜のうちに逃げなさい」
「奥方(おくがた)さま、最後までお仕(つか)えさせてください」
「だめです。あなたはまだ十八。あなたの人生はこれからです」
「奥方さまに仕えるのが私の役目。このような時こそ、おそばにおいてください」
オコウは必死にうったえた。
奥方さまは若いオコウを死なせてはならないと、必死(ひっし)に説得(せっとく)した。しかし
「奥方さまとご一緒(いっしょ)させてください」
とゆずりませんでした。しかたなく、奥方さまは心とは裏腹(うらはら)に
「オコウ、あなたがいると足手(あしで)まといです」
と語調(ごちょう)を強めた。足手まとい、と言う言葉にオコウはどうすることもできなかった。最後まで奥方さまに仕えることのできない自分を、ふがいなく思った。
官軍の兵が城山にひそんでいるという。オコウは男の身形(みなり)になると小さなふろしき包(づつみ)をかかえて、奥方さまに見送られて城を出た。
城山の峰づたいの細道を走った。谷よりホー ホー ホーと、フクロウの声が聞こえる。そのたびに背筋(せすじ)が凍(こお)った。
ハアー ハアー荒(あら)い息(いき)をしながら城の守護神(まもりがみ)、白虎(びゃっこ)さまとよばれる祠(ほこら)まで来た時だ。黒い人影(ひとかげ)があらわれ
「そこのあやしい者、だれだ」
野太(のぶと)い声に足が止まった。
「名をなのれ」
オコウはだまったままだった。
兵は腕をとり、顔をのぞきこんだ。
「お、女です」
その時、オコウは(官軍は女たちをはずかしめ殺してしまう)といううわさを思い出した。とっさに、懐(ふところ)から短刀(たんとう)を出すと
「殿さま、奥方さま、どうか生きのびてください」
城に向かってさけぶと、のどをつき息たえた。
後に人々はオコウを哀れにおもい、この城山の祠(ほこら)を「オコウさま」といって、お参りを欠かさなかったそうです。
おしまい
関連リンク
お問い合わせ
※内容については、お手数ですが「問い合わせ先」の各市町村へお問い合わせください。
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください