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更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:6003
むかしむかし、おみねというむすめがすんでいた。きりょうがよく心やさしかったので、若者たちはだれもがおみねと結婚(けっこん)したいと願っていた。
となりの仁助(じんすけ)と婚約(こんやく)がきまると若者達(わかものたち)はがっかりした。でも、
「仁助、おみねを幸(しあわ)せにしろよ。不幸(ふこう)にしたら、しょうちせんぞ」
と、おみねと仁助の婚約をよろこび、みんなで祝った。
ある夜のことだった。
「おみねちゃん、おみねちゃん」
と、仁助の声がする。
おみねは外に出ると寝間着(ねまき)のまま手をひかれ、川へと歩いて行った。そうして川に入った。
「おや、足がとてもつめたい」
おみねは、手をふりほどくと、むちゅうになって家にかけもどった。
次の日の朝、いつになってもおみねは起きてこなかった。おっかさんが、おこしに行くと寝間着のすそがぬれていた。
「おみね、これはどうしたことだい」
おっかさんがたずねても、だまったままだった。それからは、おみねは人がかわったようになってしまい、わらい顔も見せなければ、食事もろくにとらなくなってしまった。家の者は、えらく心配した。
ある夜のことだ。おみねは、そーっと、おきて玄関(げんかん)の戸をあけると外へ出て行った。おっかさんは、
(こんなじぷん、どこへ行くのだろう)と、あとをおいかけた。
するとおみねは、背(せ)のひくい男に手をひかれて、川のほうへスタスタスタスタ歩いて行くではないか。そうして、川へ入って行こうとした。それを見て
「おみねー、おみねー」
「おみね、どこへ行く」
おっかさんがさけんだ。でもおみねには聞こえなかった。おみねは男と手をとりあって、暗い川の中に入って行った。
すぐに村じゅうの人たちが川をさがしたが、とうとう見つからなかった。
「きっと、いつも川淵にあらいものに来るおみねにかっぱがひとめぼれし、自分の女房(にょうぼう)にしてしまったのだろうよ」
と、村じゅうがうわさした。
それからのち、この川淵をだれいうともなく「かっぱ淵」とよぶようになったと。
おしまい
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