ここから本文です。
ホーム > 教育・文化・スポーツ > 歴史・文化 > 文化・文化財 > その他の文化資源 > 語り継ごう千葉の民話・民謡・童謡 > 民話・民謡・童謡の一覧 > (大多喜町)ソガ殿の田植え
更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:5964
春の陽が西に傾(かたむ)きはじめていた。ソガ殿(ドン)は使用人(しようにん)達に言った。
「急いで田植えを終わらせろ」
使用人は、黙々と苗を植えた。田植えは腰をかがめたままの作業だ。時々、腰を伸ばさなければ痛くなる。しかし、ソガ殿(ドン)は腰を伸ばし手を休めている使用人を見つけると
「働け働け。働かぬ者には手間賃(てまちん)をやらぬぞ」
とどなった。
使用人だけではない、牛もすっかり疲れ、時々歩みを止めた。そんな牛を見ると、
「それ働け、働け」
とむち打った。
お天道様(てんとうさま)は西の山に沈(しず)み、真っ赤な空に変わった。真っ赤な空は、紫色(むらさきいろ)に変わり、やがて日がとっぷりと暮れ、その日の田植えは終わった。
その夜ソガ殿は考えた。
(手間賃(てまちん)を減(へ)らすには、お天道様(てんとうさま)の入りをおくらせればいい)。
そこで、大きな大きな扇で沈むお天道様(てんとうさま)をあおぐことにした。
翌日も、日の出とともに田植えが始まった。皆、一生懸命働いた。昼食もそこそこに働いた。
お天道様(てんとうさま)が沈もうとしていた。
ソガ殿は使用人に言った。
「お天道様をあおげ。沈ませるな」
使用人達が大きな扇であおぐと、お天道様は西の山の端にとどまった。しかし、使用人が気をぬくとお天道様は山の端に近づいて沈もうとする。ソガ殿は
「あおげ、あおげ、もっと強くあおげ」
と叫んだ。
いつもなら、お天道様は沈み暗くなる時刻だが、夕日がまだ輝(かがや)いていた。使用人達も牛も疲れきっていた。
牛は最後の苗を降ろすと、田んぼにドッと倒れた。その時だ、牛の体から一羽の小鳥が飛び出し、ホーホーと鳴きながら西の山に向かって飛んで行った。
不思議なことはその後だ。その年のソガ殿の田んぼでは一粒(つぶ)の米も実らなかった。大地主のソガ殿の家はそれが原因で絶えてしまった。
それから後、牛を働かせるときには、ホーホーと労(いたわ)りのことばをかけながら働かせたという。
農家の人たちは、白く清らかな卯(う)の花の咲く季節になると、このソガ殿の話を思い出した。しかし、今はこの話を知っている人は少ない。
おしまい
関連リンク
お問い合わせ
※内容については、お手数ですが「問い合わせ先」の各市町村へお問い合わせください。
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください