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更新日:令和6(2024)年2月19日

ページ番号:5981

(大多喜町)種まき桜

内容

古(いにしえ)の農(のう)の心(こころ)を今(いま)に咲(さ)く
大宮神社(おおみやじんじゃ)の種(たね)まき桜(ざくら)

冬枯(ふゆが)れの野に若草が芽吹く。田んぼに水が入る。かたく乾(かわ)いた土も一年ぶりに大量の水を吸収し、気持ちよさそうだ。
晴れの日がつづく。空が田んぼに映(うつ)る。雲もツバメも映る。
大宮神社の桜もふくらんできた。

「そろそろ、大宮神社の桜が咲くぞ」
「そろそろ代掻(しろか)きしなければ」

どの家も大宮神社の桜を暦(こよみ)がわりにして、米つくりの準備にとりかかる。

代掻きから数日後、神社の境内の桜が一輸(いちりん)咲(さ)いた。これを合図に二輪三輪と咲きだした。頬(ほお)をなでる風も心地よい。
「この分なら、もう四・五日で種まきだ」

早朝の紫雲(むらさきぐも)を背にした桜、陽(ひ)に照(て)らされた桜、夕焼けに染まった桜、夜の桜・・・どの桜も村人の心に深くしみこんだ。
「さあ、境内(けいだい)の桜が満開だ。種まきの季節だ」

大宮神社の桜が満開になると、苗代だ。父ちゃん母ちゃんはもちろん、爺ちゃんもばあちゃんも、子どもたちも。一家総出で出かけた。

種まきが始まった。春の陽が射す。苗代に姿を映し出す。時々腰をのばして、遠<の山並みを眺める。にぎやかだ。特に、昼食のあぜ道は、弁当をひろげる家族でにぎわった。

一日の仕事が終わり、大宮神社のそばを通ると、村人は立ち止まった。
「今年も怪我(けが)なく米作りができますように」
「豊作(ほうさく)になりますように」
と祈った。

桜の命は短い。やがて、花びらが舞(ま)うころ、どこの家も苗代の種まきが終わった。待ちに待った本格的な春がやってきたのだ。

現在、こんな風習はなくなったが、むかし、農民達は大宮神社境内の桜の開花を合図にたねまきをしたという。
今はもう、この桜を「種まき桜」と呼ぶ人はいない。

おしまい

出典・問い合わせ先

  • 出典:「広報おおたきNo.440」(「ふるさと民話さんぽ」斉藤弥四郎)
  • 問い合わせ先:大多喜町外部サイトへのリンク 

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