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更新日:令和6(2024)年2月19日

ページ番号:6005

(大多喜町)幽霊沢の天狗

内容

むかし、むかしのことだ。

老川地区横瀬(よこぜ)の奥(おく)に幽霊沢(ゆうれいさわ)と呼ばれる沢があった。幽霊沢と呼ばれるだけあって、うっそうと繁(しげ)った樹木に囲まれた淋しい所だ。

ある冬の日のことだった。小沢又(こざわまた)のエンばあさんが、孫(まご)をつれて幽霊沢に炭焼きの手伝いに行った。

エンばあさんは炭焼きをしなければならない。
「ここら辺(あた)りで、いい子して遊んでいろな」
と孫に言聞かせ、炭焼き場の近くで遊ばせておいた。

すると、小鳥が子どものそばにやってきた。朱色(しゅいろ)のそれはそれは美しい鳥だった。子どもはその鳥を捕(と)ろうと手をのばした。すると鳥はパッと飛び立った。そしてまた近くに止まった。子どもはまた捕まえようと、静かに鳥に近づき手を出した。鳥はまた飛び立って近くに止まった。

子どもは、素手(すで)で捕るのは難しいと思い、竹かごを持ってきた。そうしてまた、そろりそろり近づき、竹かごをかぶせようとした。鳥は逃げて、また近くに止まった。

朱色の鳥は少しずつ森の奥に入って行った。子どもも鳥の後を追って、森の中に入って行った。

やがて小さな沢のそばに来た。子どもは竹かごを持って、そろりそろり小鳥に近づき
「エイッ!」
と竹かごをさしだした。

その瞬間だ。子どもの体はフワッと宙に浮き、大きな松の枝にひっかかった。子どもは恐ろしくなり、泣いた。

「おまえはだれだ。ここは天狗の住むとこだ。人間が入ってはならぬとこだ」
真っ赤な顔をした天狗が怒鳴(どな)った。子どもは泣(な)きながら、
「もう、来ません。許してください、許してください」
とわびた。

すると、天狗は襟首(えりくび)をつかんで子どもを地面に降(お)ろしてやった。子どもが炭焼き小屋に向かって走り出すと、天狗はヒューと飛んで森の奥(おく)に入っていったと。

だから、きれいな鳥が来ても、決して追いかけて行ってはいけないぞ。

おしまい

 

出典・問い合わせ先

  • 出典:「広報おおたきNo.437」(「ふるさと民話さんぽ」斉藤弥四郎)
  • 問い合わせ先:大多喜町外部サイトへのリンク 

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