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更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:5979
総元(ふさもと)の石神(いしがみ)地区に小さな八幡(はちまん)神社がある。むかし、この境内(けいだい)にモチノキがあった。大きく枝を広げ、春になると鳥や虫がたくさん集まってくる、大きな大きなモチノキだった。このモチノキにこんな話が伝わっている。
むかし、むかし、モチノキの下での農夫たちが昼食をとっていた。
「冷てえー」
若者が額(ひたい)をおさえた。
「あれー、糞(くそ)だ。鳥の糞だ」
若い農夫は立ち上がって木を見上げた。鳥が尾をふりながらピーピー鳴いている。
「このやろう。よくもやったな」
若者が怒鳴(どな)ると、鳥は首をふってピーピー鳴いた。
「鳥にバカにされたハハハ・・・」
笑いが起きた。若者は怒(おこ)って石を投げつけた。鳥に当たらず、枝に当たって落ちた。またピーピーと首を振って鳴いた。
突然、若者は木の登りはじめた。
「やめろ。この木は神様のいる木だぞ。やめろ、やめろ」
「罰(ばち)があたるぞ、降りろ降りろ」
古老が止めた。
「罰なんか当たるもんか。迷信(めいしん)に決まっている」
途中の枝から叫んだ。もう少しで鳥に手が届く、その時だ。
「助けてくれー、しびれる」
若者が絶叫(ぜっきょう)した。
「すぐに降りろ、降りろ」
木下でみんなが叫ぶ。しかし、若者はワナワナふるえながら泣いているだけだ。そこで一人の男が助けようと登った。途中まで登ると、突然はじき飛ばされ地面にたたきつけられた。次に別の男が登ったが飛ばされて落ちた。
「お助けください。お助けください。もう、登りません」
木の下で見守る農夫達も、木の上の若者も哀願(あいがん)した。
しばらくして、若者は泣きじゃくりながら降りてきた。
この事件の後、石神の人たちはこのモチノキを以前より一層大事にした。しめ縄を張り御神酒(おみき)を供(そな)え、崇(あが)めた。そばを通るときには深々と頭を下げ、五穀豊穣(ごこくほうじょう)や家内安全を祈った。
しかし、木の老朽化と道路拡張のため平成三年八月一日に切り倒された。今は切り株だけが、昔この地にモチノキの大木があったことを伝えている。
おしまい
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