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更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:6011
むかし、むかし、正宗(まさむね)という刀をつくる名匠(めいしょう)がいました。年を重ねるにつれて、自分のつくった刀で大勢の人が命をなくしたことを悔(く)いるようになりました。そこで諸国の寺や神社をめぐって、死んだ人の冥福(めいふく)を祈りました。
ある年のことです。笠森観音(かさもりかんのん)を参拝し、誕生寺(たんじょうじ)に行くとちゅうに大多喜の城下に宿をとりました。
夕食もおえて、ふろにはいった時でした。
テーン カーン テーン カーン
刀をうつ音が聞こえてきました。
「なかなかやりおるわい。しかしあいもかわらずすさんでおるな」とつぶやきました。
あくる朝、正宗(まさむね)は宿の主人に言いました。
「昨夜、この近くで刀をうっていた刀鍛冶(かたなかじ)に伝えてくだされ。鎚(つち)の入れ方が荒すぎる。ことに止めの鎚(つち)一本は荒すぎる。内側三寸のところにひびが入っている。刀うちは心でうたなくてはならぬとな」
「は、はい・・・」
宿の主人は、老人を送りだすと若者の所に行き、老人のことばを伝えました。若者は怒ったのなんのといったらありません。
「なに、旅のおいぼれにおれの腕がわかるもんか。ようし、昨夜うったこの刀をためしてやろうじゃないか」
若者は昨夜つくった刀を持って、旅の老人をおいかけました。
ちょうど円照寺(えんしょうじ)の入り口にさしかかった時でした。旅の老人に
「きさまか、おれの刀うちがまずいっていったのは。これが昨夜うった刀だ。受けてみろ」
叫びながら切りかかりました。
正宗(まさむね)はふりかえると、鉄のつえで刀を受け止めました。するとカチンという音とともに、内側三寸で折れ、そばの池に落ちました。
「村正(むらまさ)、まだわからぬか。心がすさんでおるのが」
旅の老人は、あみがさをとりながらいいました。
「先生。正宗(まさむね)先生ではございませんか。お許しを・・・」
「人の忠告を素直にきけぬか。このおろかものめ」
若者は正宗(まさむね)の一番弟子でした。しかし、村正(むらまさ)は自分の腕のよいのにおぼれ、生活がみだれ、破門させられていたのでした。村正(むらまさ)は自分の未熟さを恥(は)じ、その場で泣きじゃくりました。
「口惜(くや)しいか。口惜(くや)しければ、心をあらため名刀をうつのじゃ。心でうつのじゃ。心でじゃ・・・」
そう言い残すと、旅の老人正宗(まさむね)は勝浦方面にむかって、何事もなかったように歩いて行きました。
このことがあってから、この池は月夜の晩にはキラキラキラキラ光ったそうです。後にこの池は「村正の池」とよばれるようになりました。
おしまい
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