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更新日:令和6(2024)年2月19日
ページ番号:5968
むかしむかしのことだ。
大多喜は小谷松(こやまつ)に玄兵衛(げんべえ)という、うでのいい木こりがすんでおった。玄兵衛の手にかかったら、どんな大木でも、たやすくきりたおされた。それで、だれ知らぬものはなかった。
ある年のことだ。庄屋(しょうや)の家を新しくたてかえることになった玄兵衛は庄屋に呼ばれた。
「じつはな、わしの屋敷(やしき)もだいぶ古くなった。となり村の庄屋の家も新しくつくりかえたという。そこでわしの家も新しくつくりかえようと思うのだ」
「それはそれは、おめでとうございますだ」
「ところがな、材料がそろわねえだ。大黒柱(だいこくばしら)にする木がのう。・・それで、おまえさんに、ひとつたのみがあるんだ」
「わしにできることなら、なんなりと、もうしつけてください」
「あの山のてっぺんにある、からかさ松を切ってくれねえか」
「からかさ松、切る・・・」
「なあ、たのむ玄兵衛。あの松なら庄屋の家にふさわしいだろう」
「でも・・・。庄屋どん、あの松は山の神様だ。死んだおとうも、おじいもあのからかさ松を切ったり、きずをつけてはなんねえだ、と言っていただ」
「そこをなんとか。玄兵衛、いろいろめんどうをみてきているのを、わすれたのではないだろうな」
急に庄屋は声を荒(あら)げて言った。
「は、はい。庄屋どんには、おせわになっていますだ。」
「・・・・・」
玄兵衛はことわりきれず、しょうだくした。かたをおとして家にかえった玄兵衛だった。
よく日、水ごりをし、神だなと仏だんに手をあわせ、山にでかけた。
玄兵衛の足どりは重かった山のてっぺんにからかさ松に来ると、お神酒(みき)をそなえパンパンと柏手(かしわで)をうった。そうして、大人五人が手をまわして、やっとかかえることができるほどのからかさ松に斧(おの)をうちこんだ。
カーン カーン
カーン カーン
斧の音は山にこだました。
やがて、おのをうちこむカーンカーンちゅう音は、玄兵衛の耳に、タスケテクレータスケテクレーというふうにひびいてきた。おそろしくなった玄兵衛は、思わずその場にすくんでしまった。斧を打ちこんだからかさ松のみきをみると真(ま)っ赤な血が、たらたらとながれているではないか。
「助けてくれ」
「神様たすけてくだされ・・」
玄兵衛は山をかけおりて、家にかえった。そうして玄兵衛は頭の痛(いた)みをうったえて、寝(ね)こんでしまった。
その後も玄兵衛は、ずっと寝(ね)こんだままだった。また、からかさ松を切るように命じた庄屋どんの家は、運が下むいて、とうとうほろんでしまった。
里の人たちはこの後も、この松の大木を「からかさ松」と呼び、山の神様としてあがめた。毎年正月には、しめ縄(なわ)をはってお神酒をそなえ、山仕事の行きかえりに、手をあわせて拝(おが)んだ。
だが、この前の戦争の時「松やにをとれ」という命令があり、このからかさ松をダイナマイトでたおしてしまったと。
おしまい
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