令和元年9月定例県議会可決された意見書・決議
意見書(令和元年9月27日可決・1件、令和元年10月10日可決・4件)
去る9月8日から9日にかけて、本県に上陸した台風15号の記録的な暴風雨により、広範囲で長期にわたる停電と通信途絶や断水が発生するとともに、県内各地で多くの家屋の倒壊、農業施設、漁業関連施設及び公共土木施設等への被害が生じ、県民生活や産業活動に極めて深刻な影響を及ぼしている。
現在、県は、被災市町村・被災者への支援、被災地の応急復旧、各種施設の被災状況の把握と対策等に全力を挙げて取り組んでいるところであるが、今回の深刻な事態に対応するためには、政府の緊急かつ重点的な支援が不可欠である。
よって、政府においては、下記事項について、早急な対応が図られるよう強く要望する。
記
- 激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律に基づき、早期に激甚災害に指定すること。
- 送電線の鉄塔が倒壊する等、電力網が大きな被害を受けたことにより、広範囲での停電が発生したことから、東京電力に対し、早期の完全復旧と正確な情報提供を強く働きかけること。
- 被災者の安全・安心を確保し、早期の復旧を実現するため、罹災証明の発行、保健師等による健康管理等のマンパワーを確保すべく、引き続き人的支援を実施すること。
また、被災者の生活再建や被災住宅の復旧が迅速にできるよう、被災者生活再建支援制度などの各種制度について、被災者に可能な限り寄り添った運用を図ること。
- 商業施設や工場、観光施設等への甚大な被害や停電等による生産・物流チェーンの被害が生じているため、被害を受けた事業者が迅速に事業を再開できるよう必要な支援を行うこと。
- ビニールハウスの倒壊、停電による水産物の死滅など、被害が県内全域にわたることや被害額が極めて大きいことから、農業施設、農地・農道、漁業関連施設及び共同利用施設等の復旧に向けた支援とともに、停電や断水によって損害を負った農林水産事業者への特段の支援を行うこと。
- 災害復旧事業に早期に着手できるよう、農業施設、漁業関連施設及び公共土木施設等について速やかに災害査定を行うとともに、十分な予算を確保すること。
- 膨大な災害廃棄物が発生しているため、被災市町村が実施する災害廃棄物処理事業について、予算の確保及び早期の採択を行うこと。
- 県及び市町村が行う応急対策や災害復旧等に多額の経費を要するため、特別交付税の配分、災害復旧事業及び災害関連予算の確保に特段の配慮を行うこと。
- 被災した高齢者・児童生徒等の心のケア、就学支援、被害を受けた学校施設及び社会教育施設等の復旧に向け特段の支援を行うこと。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
【提出先】内閣総理大臣、総務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、環境大臣、内閣官房長官、防災担当大臣
オリンピック・パラリンピック競技大会は、世界各国のアスリートが参加する世界最大級のスポーツの祭典である。
この大会に国民がボランティアとして参加することは、国際理解の推進など大いに意義のあることであり、また本人にとっても一生の思い出ともなることである。
昭和39年の東京大会では、ボーイスカウトが国旗掲揚を行ったり、ガールスカウトがパラリンピック大会の開会式に参加国のプラカードを持って入場するなど、子供たちにも参加機会が設けられていた。
一方、来年に迫った東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会では、国民がボランティアとして参加するには、満18歳以上という年齢制限があるなど、現時点では、子供たちの参加機会は設けられていない。
しかしながら、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に子供たちが参加することは、国際感覚を養い、国際理解を深め、さらには共生社会の理念を広める絶好の機会であり、教育的な観点からも大きな意義がある。
よって政府は、公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会に対し、昭和39年当時のように、子供たちに広く参加する機会を設けることを働きかけるよう強く要望する。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
【提出先】内閣総理大臣、総務大臣、文部科学大臣、東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会担当大臣
今年度から始まった水産政策の改革に伴う水産資源管理は、再生産を安定させる最低限の資源水準をベースとする方式から、最大持続生産量の概念をベースとする方式に変更になった。
我が国周辺水域の適正な水産資源管理のため、関係国との協議を進めるとともに、国際水準の最新の科学的知見に基づいた資源評価を進めることが必要である。
資源管理を着実に実行するためには、国全体としての資源管理方針を定める必要がある。
その上で、適切な管理に取り組む漁業者は、漁獲量を削減する場合があるため漁業経営のセーフティーネットとして漁業収入安定対策の機能強化が必要である。
また、水産政策の改革では、IUU(違法・無報告・無制限)漁業対策や水産物輸出の促進のためにトレーサビリティーを推進することになっており、それには漁獲証明の法制化による流通改善や水産物の消費拡大が必要である。
さらに、ICTを活用した適切な資源評価・資源管理、生産活動の省力化、漁獲物の高付加価値化等を図るため、スマート水産業の社会実装に向けた取り組みが必要である。
よって、政府に対し、漁業者らが安心して水産改革に取り組めるよう下記事項の法制化等を求める。
記
- 国際水準の資源評価・資源管理を行うため、調査船の充実、情報収集体制の強化など、都道府県と連携し、調査体制を抜本的に拡充すること。
- 漁業収入安定対策の機能強化を図るために必要な法整備を行うこと。
- 水産物のトレーサビリティーを推進するために漁獲証明に係る法整備を行うこと。
- スマート水産業の社会実装に向けた取り組みを推進すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
【提出先】内閣総理大臣、農林水産大臣
東京・池袋で87歳の高齢者が運転する車が暴走し、母子2人が亡くなった事故以降も高齢運転者による事故が続いている。
近年、交通事故の発生件数は減少傾向にあるが、75歳以上の高齢運転者の死亡事故の割合は高まっており、ペダルの踏み間違い等の単純ミスによる事故も目立つ。
警察庁は、昨年末時点で約563万人いる75歳以上の運転免許保有者が、2022年には100万人ふえて663万人に膨らむと推計している。
こうした状況を踏まえ、国は17年施行の改正道路交通法で、75歳以上の免許保持者は違反時や免許更新時に認知機能検査を受けることを義務づけたが、今や高齢運転者の安全対策及び安全運転支援の取り組みは待ったなしの課題である。
高齢者になる前から、世代を問わず、ペダルの踏み間違い防止対策を含む安全運転講習を受講し、日ごろから安全運転への意識を高めることが重要である。
また、過疎地域を中心に、いまだ「生活の足」として車が欠かせない高齢者も多い中、自主的に免許を返納した場合などの地域における移動手段の確保も重要な取り組みである。
政府においては、地方自治体や民間事業者とも連携しながら、総合的な事故防止策としての高齢運転者の安全運転支援と地域における移動手段の確保を進めるため、下記の事項について早急に取り組むことを強く求める。
記
- 自動ブレーキやペダル踏み間違い時の急加速を防ぐ機能など、ドライバーの安全運転を支援する装置を搭載した「安全運転サポート車」(サポカーS)や後づけの「ペダル踏み間違い時加速抑制装置」の普及を一層加速させるとともに、高齢者を対象とした購入支援策を検討すること。
- 高齢運転者による交通事故を減らすため、自動ブレーキなどを備えた「安全運転サポート車」(サポカーS)に限定した免許の創設や、走行できる場所や時間帯などを制限した条件付き運転免許の導入を検討すること。
- 免許を自主返納した高齢者が日々の買い物や通院などに困らないよう、コミュニティバスやデマンド(予約)型乗り合いタクシーの導入など「地域公共交通ネットワーク」のさらなる充実を図ること。また、地方自治体などが行う、免許の自主返納時における、タクシーや公共交通機関の割引制度などを支援すること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
【提出先】内閣総理大臣、総務大臣、経済産業大臣、国土交通大臣、国家公安委員長
パリ協定の枠組みのもと、脱炭素社会の構築が求められる中、環境負荷の削減やエネルギー安全保障等の観点から、太陽光発電を初めとする再生可能エネルギーの導入拡大が必要とされている。
こうした中、再生可能エネルギー特別措置法に基づく固定価格買取制度(FIT)の施行以降、導入量が着実に増加してきている一方、一部の地域では、防災、景観、環境面での地域住民の不安や、FIT買取期間終了後に太陽光パネルが放置されるのではないかとの懸念が生じている。
今後、こうした不安や懸念を払拭しつつ、地域と共生する形で再生可能エネルギーの導入をさらに促進する観点から、太陽光発電の適切な導入に向けて下記のとおり要望する。
記
- 再生可能エネルギー特別措置法に基づく事業計画の認定に当たり、一定規模以上の案件については地域住民への事前説明を発電事業者に義務づけるとともに、その具体的な手続を事業計画策定ガイドラインに明記するなど、地域住民との関係構築のために必要な取り組みを行うこと。
- 太陽光発電設備が災害時に斜面崩落を誘発することのないよう、急傾斜地以外の斜面に設置される場合も含め、太陽光発電設備の斜面設置に係る技術基準の見直しを早急に行うこと。
- 発電事業終了後に太陽光発電設備の撤去及び適正な処分が確実に行われるよう、発電事業者による廃棄費用の積み立ての仕組みや、回収された太陽光パネルのリサイクルの仕組みの確立に向けた取り組みを進めること。
以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
【提出先】経済産業大臣、環境大臣
決議(令和元年10月10日可決・1件)
本年1月に野田市で発生した小学生女児の虐待死事件(以下「本事件」という)を受けて、現在、第三者検証委員会による調査が行われている。
既に国の検証チームにおける中間報告においては、一時保護の解除により家庭復帰の措置を行うに当たっての家族関係等の調査やアセスメントツールの活用、継続指導等が守られていない場合の対応のあり方、要保護児童の長期欠席時における学校、児童相談所及び市町村の情報共有の徹底と児童の安全確認の徹底などにおいて、児童相談所職員の対応方法やケースマネジメント上の課題等が指摘されているところである。
今後の検証結果や提言を真摯に受けとめ、何よりも子供の安全を最優先とする徹底した再発防止に向けて継続して取り組んでいかなければならない。
今回、我々県議会は、「千葉県子どもを虐待から守る条例」の改正に伴い、執行部に対し、下記の点に留意しながら、条例第11条に基づく次期基本計画の策定及び児童虐待防止対策のさらなる充実強化を行うことを求める。
記
- 児童相談所の体制強化について
(1)児童福祉司及び児童心理司等の専門職員の増員計画の前倒し実施を着実に行うこと。
(2)6月議会の補正予算により増員を図った、児童安全確認協力員や児童虐待対応協力員についても、現場の状況を踏まえながらさらなる増員を検討すること。
(3)保護者による圧力等に対しても職員が毅然と業務遂行できるように、必要に応じて迅速に警察や弁護士のサポートを受けられる体制のさらなる充実を、配置の強化に加えてテレビ会議の利用等を視野に入れながら図っていくこと。
(4)弁護士や医師等の専門職の知見を生かしたソーシャルワークの実施を強化していくこと。
(5)経験が浅い職員の増員を踏まえて、職員研修のさらなる充実を図るとともに、千葉県子ども虐待対応マニュアルの現場への浸透を徹底すること。
(6)現行の児童相談所支援システムを抜本的に改めるとともに、最新のICTを活用することにより、次の項目を実現し、職員の業務執行体制の強化を図っていくこと。
ア 業務の効率化と職員の負担軽減
イ 客観性が担保されたケースの適切な進行管理
ウ リアルタイムでの情報共有
エ AIを用いたアセスメントの分析及び意思決定の支援
オ 千葉県子ども虐待対応マニュアルの浸透
カ ケース担当の異動時における業務のスムーズな引き継ぎ
(7)中長期を見据えながら次の項目を計画的に実現すること。
ア 一時保護所の定員の増員
イ 老朽化・狭隘化が進んでいる児童相談所の早期の建てかえ
ウ 1カ所当たりの児童相談所の管轄人口が適正な規模となるような、管轄区域の早急な見直し及び児童相談所の増設
エ 職員増員に伴う業務スペースの確保
オ 要保護児童の受け皿となる児童養護施設等の増設及び里親委託の推進
- 児童相談所と関係機関との連携強化について
(1)市町村との間でのリアルタイムの情報共有を可能とする体制やシステムの構築や、市町村支援を担当する児童福祉司の配置推進などを行い、要保護児童対策地域協議会の個別ケース会議の機能の充実を図り、児童相談所と市町村の役割分担の明確化と相互補完の強化に努めていくこと。
(2)船橋市や柏市など、児童相談所の設置を検討している自治体と緊密な連携を図るとともに、財政面も含めて、人的物的に必要な支援を十分に行っていくこと。
(3)警察との間において、他県を参考としながら、虐待対応事案の全件の情報共有とそのためのシステムの構築を目指し、連携を強化していくこと。
(4)児童相談所と関係機関との情報共有を強化するために必要となる法整備について、国に対し、積極的に法律制定の働きかけを行うとともに、本県での条例制定についても検討を行うこと。
- 警察における体制強化について
児童虐待にかかわる警察官の体制を充実させ、より積極的な子供の安全確認と保護の実施につなげること。
特に、一時保護解除後の家庭復帰時における情報共有を受けて、それに伴う定期的な安全確認ルールの整備と実施するための体制を構築していくこと。
- 学校等における体制強化について
(1)教職員や保育職員の児童虐待対応に関する研修を充実させること。
(2)アンケート調査等の情報の適切な管理を徹底すること。
(3)教職員が圧力等に毅然と対応できるように、弁護士等による支援体制について、6月議会の補正予算の対応後の状況を踏まえながらさらに充実させていくこと。
(4)個々の虐待事案について、関係機関との情報共有や連携を強化していくこと。
- DV事案への対応について
児童相談所は、DVケースにおける子供の虐待リスクを正しく評価し、保護者への支援のために関係市町村との連携を強化するとともに、DV被害者の保護のために、配偶者暴力相談支援センターとの連携に努めていくこと。
- 県民への啓発強化について
(1)児童相談所全国共通ダイヤル(189)及び通告義務の県民認知の徹底と、通告を受ける体制を強化すること。
(2)本事件を踏まえ、何よりも子供の安全を最優先とする観点から、次に示す事項の意義について、特に留意した啓発を行っていくこと。
ア 仮に虐待が不存在だったとしても通告や措置は仕方がないという社会全体の寛容性の醸成
イ 家庭復帰後に虐待が再発した場合における近隣住民による通告による早期発見の重要さ
ウ しつけによる体罰禁止
- 子供の権利保護と安全確保について
(1)子供の権利保護の観点から、一時保護解除後の家庭その他の環境の調整、当該子供の状況の把握その他の措置により、子供の安全確保を何よりも第一として徹底すること。
(2)子供の権利を尊重し、意見表明の機会の創設に向けて、国の動向を踏まえながら積極的に検討していくこと。
(3)一時保護解除後の家庭復帰時において、子供が必要に応じてみずからSOSを直ちに発信できることを可能とする仕組みや器材の導入を検討すること。
- 予防策について
児童虐待のない社会の実現に向けて、子供の最善の利益を図る観点から、次の項目を充実・強化していくこと。
(1)妊娠段階からの相談体制
(2)命の大切さを伝える教育や啓発活動
(3)市町村の母子保健施策と連携した支援
(4)子育て世代包括支援センターの県内全市町村での設置及び人材育成に対する支援
- 基本計画とPDCAについて
(1)基本計画に定める各施策については、PDCAサイクルによる不断の改善を図るものとし、その際、専門的知見を有する第三者による評価を参考とすること。
(2)基本計画を踏まえた財政措置を優先していくこと。
以上、決議する。
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