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更新日:令和4(2022)年5月25日
ページ番号:3594
ヒトに寄生する原虫にはマラリア原虫や赤痢アメーバなど、病原性を有するものが何種類もありますが、飲料水汚染で問題になる
原虫は、主としてクリプトスポリジウムとジアルジア(ランブル鞭毛虫)です。
感染力が強いこと、通常の水処理工程では十分な除去が期待できない大きさであること、上下水道における塩素消毒では十分な不活化は期待できないこと等から、水環境分野において重要視されています。
(塩素に対して強い耐性を示すことから「耐塩素性病原生物」と言われています)
クリプトスポリジウムは、ヒトを含む幅広い哺乳動物が宿主(感染される側)である原虫です。
ヒト、ウシ、ネコ等多種類の動物に経口的に摂取されると、消化管の細胞に寄生して増殖し、そこで形成されたオーシスト(嚢包体の形で、大きさは4~6μm)が糞便とともに体外に排出され、感染源となります。
排出量は、1日当たり、ヒトでは約10億個、ウシでは約100億個と言われています。
湿った環境の中では、クリプトスポリジウムは、2~6ヶ月間、感染力を持っています。
オーシストは、塩素に対して極めて強い耐性があります。また、100個以下のオーシストで感染が成立することから、水道水がオーシストで汚染されると、飲用している人は極めて高い確率で発症します。
症状は、オーシストを取り込んでから2日~1週間の潜伏期間の後、腹痛をともなう激しい水溶性の下痢が7~14日間程度持続します。発熱、吐き気、嘔吐を伴う場合もあります。
感染しても症状が出ない場合もありますが、感染者の糞便からは、数週間オーシストの排出が続きます。
有効な治療薬はまだなく、対症療法となります。健常者は多くの場合2週間ぐらいで自然治癒します。
しかし、免疫不全患者の感染では重症となり、死亡例も報告されていますので、注意が必要です。
ジアルジアは、ランブル鞭毛虫とも呼ばれ、ヒトを含む多くの哺乳動物の小腸に寄生する原虫です。
感染経路はいわゆる糞口感染で、ヒトとヒトの接触や食品を介した小規模集団感染と、飲料水を介した大規模な集団感染が知られています。
感染した動物の糞便とともに排出されるシスト(嚢子)を、食べ物や水を介してヒトが摂取すると、激しい下痢と腹部の痙攣を特徴とする胃腸炎をおこします。
腸管内で生じたシストは糞便とともに消化管を通過し、成熟した状態で排出されます。
排出されるシストの量は変動するようで、一人当たり 1 日 10 億個以上となりますが、一方で、感染してもごくわずかのシストしか排出しないヒトも多く見られます。
成熟シストは感染力が強く、10~25個程度を経口摂取しただけで感染します。
また、シストは湿った涼しい環境では数ヶ月感染力を維持すると言われています。
感染してから下痢、腹痛などの症状が出るまでの期間は、一般的には 6~15 日後とされています。
主な症状は、水様または泥状の下痢、衰弱感、体重減少、腹痛、悪心や脂肪便などがあげられます。
感染者の多くは無症状で、糞便中に持続的にシストを排出しています。
健康な方が感染しても2~4週間あるいはそれ以上と比較的長く症状が続きますが、生命に関わる病気ではありません。
おむつの交換のあと、患者の糞便に触ったあと、また、料理などの食べ物を扱う前には、石鹸で手をよく洗い紙タオル等で拭いて
乾かしてください。
症状が治った後、あるいは症状が出なくても、オーシストまたはシストは便から排出されます。二次感染を防止のため、同様の対応をしてください。
クリプトスポリジウム等は熱に弱いので、1分間以上煮沸した水を飲んでください。氷も湯冷ましを使ってください。
プールの水、湖や川の水からも感染することがありますから、再生水を口にすることがないよう注意してください。
クリプトスポリジウムは、加熱、冷凍、乾燥に弱く、60℃以上または-20℃以下で30分間、または常温の場合で1~4日間乾燥状態に
おかれると、感染力を失います。飲料水の場合は、1分間煮沸させれば十分不活化できます。
ジアルジアも同様に加熱、乾燥が有効とされますが、冷凍ではシストが生き残る場合があると言われています。
家庭用等の浄水器については、すべての機種がクリプトスポリジウム等の除去に有効であるわけではありません。膜ろ過方式の家庭用浄水器であると除去効果が望めます。
また、クリプトスポリジウム等を除去できる浄水器でも、継続した使用に伴ってカートリッジにクリプトスポリジウム等が蓄積されるので、使用の手引きに従ってカートリッジの交換を適宜行ってください。
なお、カートリッジの交換時には、手にクリプトスポリジウム等が付着しないよう気をつけ、交換後には、手をよく洗ってください。
家族で下痢をしている人がいる場合、家族内感染を防ぐため、患者の入浴を最後にしてください。
また、クリプトスポリジウム等は熱湯に弱いので、患者の糞便で汚れた下着やおむつは熱湯をかけてから洗濯をしてください。
衛生研究所情報誌Health21No.12「水を介した原虫感染症と予防対策」(PDF:174KB)
国立感染症研究所:「ジアルジアによる集団感染事例について」(IASR Vol. 35 p. 191-192: 2014年8月号)
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