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医療従事者向け

より深く学び続けて質の高い医療を実践する。認定看護師としての責任と誇り

集中ケア認定看護師 Mさん 心不全看護認定看護師 Sさん精神科認定看護師 Kさんの写真

集中ケア認定看護師 Mさん(写真・左)
心不全看護認定看護師 Sさん(写真・中央)
精神科認定看護師 Kさん(写真・右)

専門分野と勤務する病棟、そして経験年数もそれぞれ異なる3名の認定看護師。共通するのは、目の前の患者さんをサポートするために、よりくわしく、頼られる存在でありたいという思いでした。認定看護師になったからわかったこと、資格取得によって体験できたことなどをお聞きします。

三者三様それぞれのキャリアの歩みと専門性

--それぞれの専門分野、どうしてその道を選んだのかを教えてください

S:私の専門は、心不全看護です。心臓病を発症しても、その後もできるだけ希望がかなうように患者さんとご家族の生活を支援します。もともと急性期に興味があり、実習のローテーションで循環器の患者さんをサポートすることに関心をもちました。

K:私は精神科認定看護師です。実は会社員をしていた時期があり、その後看護学校へ通い直しました。最初は「救急が世のため人のためになる」と思って志願しましたが、精神的な疾患が原因で救急に運び込まれる患者さんと多く接するうちに、そうした方たちの精神的に重荷となるような「生きづらさ」を取り除けるような存在になりたいと、精神科に移りました。

M:小学校低学年の時点で、将来は看護師になると決めていました。高校から大学の看護学部へと進み、千葉県で採用されて希望通り救急医療センター(旧称)で働けることとなりました。入職時から一貫してICUでの勤務が続いています。まだ認定看護師の資格を取ってからは1か月ほどしか経過していません。

インタビュー中の写真1

ーー認定看護師を取ろうと思ったきっかけはなんですか

S:直属の上司である病棟の師長さんに「認定看護師の取得に興味ある?」と問いかけられたのが最初だったと思います。なんとなくそんな制度があるのは知っていましたが、真剣に考えたことはありませんでした。
日頃担当している心不全の患者さんには、入退院を繰り返す患者さんも多く、やがて苦しい想いをして亡くなる方が多い病気なんです。そうした方たちにできるだけ自宅で過ごせるようにしたい、そのために私にできることがあれば学びたいと思うようになりました。
心不全看護の認定看護師は、比較的新しい分野で私が取得した時点でまだ3年目でしたが「知らなかったことを深く学べる」のが魅力的に思って、受験を決意しました。

K:私は、認定資格みたいなのが合わないと思っていたので、最初は看護局長に「取りなさい」と言われても断っていたんです。しかし精神科病棟での仕事に活かそうと独学で精神鑑定の本を読むなどしていましたが、1冊の本で体系的に学べるわけではないので、感覚に頼って仕事をしている意識はありました。
どこかモヤモヤした気持ちでいるくらいなら、チャレンジしてみようと一念発起しました。実際には、口酸っぱく勧めてくれた上司の存在があったからかもしれません。

M:もとは意識が低いほうで「プライベートが充実していればいい」と考えていたんですよね。しかしこの病院で熱心な先輩の指導を受けていると刺激になりますし、新たな疑問もふつふつとわいてきます。「こういうときは、どうすればいいのだろう? でも自学自習では限界があるな…」と迷っていました。
きっかけは上司とのキャリア面談で、集中ケア認定看護師を勧められたことです。ただ結婚して子どもの誕生も控えていたので、休職して学校に通うのは収入面で不安がありました。しかし認定看護師なら給与も出ますし、学費のサポートも得られます。こうした制度の存在があったおかげで決断できました。

少しずつだが着実に認定看護師の存在が変化を生み出す

ーー認定看護師になってからの変化はいかがですか

S:最初は理想と現実のギャップを感じていました。専門性を身につけたので、それを病棟業務に還元したいと思うものの、何から始めたらいいかわからないというか、気負いがあったのかもしれません。

M:私も同じ気持ちでした。病棟ではほかにやらなければいけないことも多いので、自分の専門性が発揮できるのは一部の業務なんですよね。知識や関心のレベルもさまざまなので、勉強会なども企画したいのですが、まだできていません。
でも復帰直後から、明らかに後輩からいろいろ聞かれることが増えたのは、純粋に嬉しいし、はいそれだけ学んできた人だっていう認識をしてもらえてるんだなって

K:Mさんは先月取得したばかりでしょう。焦ることはないと思いますよ。認定看護師を取るまでは、同じ志を持った仲間が集まっているわけですから環境が違いますよね。でも、やはり各地の病院から集まった人同士で情報交換するだけでも、得るものが大きかったのは間違いありません。

S:そうですよね。学校では毎日グループワークやディスカッションをし続けていたために、自分の性格が変わったとさえ思います。病院に戻ってきて、周りから「明るくなった、よく話すようになった」と言われました。以前より患者さんとのコミュニケーションも増えたかもしれません。

--患者さんとの関わり方も変わったのでしょうか

S:半年以上入院していた患者さんがいたんですが「大好きな宝塚を妻と一緒に観たい」という希望を持っていました。慢性的な心不全のリスクがある状況で、歩いたり、劇場で長時間を過ごしたりするだけの体力が必要です。そこから逆算して、家での日常生活も含めて一緒に相談しながら退院に向けての支援を行いました。
目標を定めたことでご本人や家族も懸命に努力されましたし、病棟スタッフも献身的に協力してくれたおかげで、自宅に戻り念願かなって宝塚を観に行けたんです。このような成功事例を作り出せたことで、本当に認定資格を取ってよかったと思えました。

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K:認定看護師になった意味を体感できたすばらしいケースですね。私は教育方法を習う場面があったので、それを職場に戻ってから実践しました。患者さんに質問を受けたケースを想定して、薬や対処法の知識をつけていく勉強会です。院内で若手の成長が評価されたのもうれしかったですが、最初はどんな説明も拒絶していた患者さんが途中からそのスタッフのことを明らかに信用してくれた場面も目にしました。

高みを目指す後輩たちへ

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--さらに若い年代の看護師に認定取得を勧めたいと思いますか

M:自分の専門分野を磨きたいという気持ちがある方には、勧めたいです。ただ肉体的にも精神的にもハードなのはたしかなので、それなりの覚悟がなくて実習中に挫折したり、ついていけなくなったりする話も聞きますので「誰でもお勧め」ではありません。

K:私は精神科の看護師にはどんどんチャレンジしてほしいです。学びあう仲間が増えるっていいことですよ。ひとつの医療を何気なく行うのではなく、深く考えるきっかけにもなります。認定看護師同士のコミュニティが、学校を卒業した後も続いていますが、その人とのつながりこそ財産だなって思います。

S:たしかに、私は勉強している間は本当に楽しかったです。同期のきずなみたいなものも感じますね。よく言われることですが、取得してからのほうが「何に取り組むのか」「どんな成果を残したか」などが求められるので大変だと思います。だからこそ院内の認定看護師の仲間に増えてほしい気持ちはあります。

M:こうして異なる分野の認定看護師の話を聞いていても、勉強にもなるし、刺激にもなります。

S:一方でジェネラリストの看護師も重要な存在と思っています。認定看護師だからこそ、私はこれからも循環器の病棟で働き続けることになるわけですが、幅広い分野の知識を持っている看護師もすごいなと思います。ジェネラリストを目指すなら、むしろ認定看護師を目指さなくてよいかもしれません。

--さらに若い年代の看護師に認定取得を勧めたいと思いますか

M:やはり認定看護師になった以上は「還元する」ことを意識していたいと思います。先ほども、Kさんが院外にいる仲間の存在についてお話しされていましたが、まさにその通りです。病棟の中だけにいると、どうしても視野が狭くなってしまいます。それを無理やりにでも広げられるよう、集中ケア以外のことも積極的に学んでいきたいです。

K:勉強すればするほど、精神科医療のサポートをする方たちの力になりたいという気持ちも強くなります。そう思えるようになったのも、周りのおかげじゃないかな。この病院は、若手もベテランも本当に意欲的な人が多いです。私も、この病院で上司や同僚のサポートがなかったら認定看護師なんてなれなかったと思っています。

S:そうそう。結局、看護はひとりの力じゃないんですよね。病棟スタッフ、看護師以外の職種のプロフェッショナルがいるから、質の高い医療を提供できる。それって当たり前の環境ではないと、日々感謝しているつもりです。

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