発見された化石はゾウの頭骨の一部で、上顎の左右の臼歯が埋まっていると見られます。ゾウ化石の専門家である埼玉県立自然の博物館の北川博道主任学芸員に鑑定を依頼したところ、ステゴドンの仲間のトウヨウゾウの子どもの頭骨であることがわかりました。
トウヨウゾウの頭骨化石は世界的にも産出例がわずかで、特に子どもの化石は少ないため、貴重な標本といえます。
トウヨウゾウの復元画
発見されたトウヨウゾウ頭骨の右側面
発見されたトウヨウゾウ頭骨の上面
化石の発見者 福井昭弘さん(君津市在住)のコメント
「海岸で化石を探している時に、砂に埋まって一部が見えていた石のかたまりに、骨のような組織が見られたので持ち帰りました。ゾウの頭骨と知り、驚いています。」
福井さんはこれまでにも多くの化石を発見し、県立中央博物館に寄贈していただいています。
トウヨウゾウについて
トウヨウゾウ(Stegodon orientalis 0wen, 1870)は、日本ではチバニアン期(約77万4千年前から約12万9千年前の時代区分)の中でも約62万年前から57万年前の間だけから化石が発見されますが、国外では、中国南部から東南アジアの広い範囲で産出しており、約250万年前から約1万年前まで生息していたとされます。
本種は、1870年にイギリスの古生物学者オーウェンによって、断片的な標本に基づき新種として記載されました。その後、中国四川省で、子どもから大人までのまとまった頭骨化石が発見されています。これまでに産出している化石の大半は臼歯や牙であり、世界的にも体の骨の化石の産出が少なく、全体像を復元することが難しい、謎の多いゾウです。
日本では、北は宮城県から南は宮崎県まで主に臼歯が発見されており、よく見つかる地域は房総半島をはじめ、瀬戸内海や滋賀県などです。頭骨の化石は、現在の大津市で江戸時代に発見された標本と、山口県宇部市で見つかった標本(東京大学所蔵)のみが報告されており、いずれも県立中央博物館で開催している特別展「よみがえるチバニアン期の古生物」で展示中です。
化石の公開クリーニングについて
県立中央博物館で開催中の特別展「よみがえるチバニアン期の古生物」にあわせて、この化石を石の中から削り出す「クリーニング作業」※を公開しています。
※化石を石の中から取り出し、付着している岩石を削り出して標本化する作業を英語でプレパレーション(preparation)といいますが、日本では習慣的にクリーニングと呼ばれています。
クリーニング中の化石
日時 9月17日(日曜日)までの木曜日・土曜日・日曜日
午前10時30分から12時、午後2時から3時30分
会場 県立中央博物館 1階ホール「化石クリーニングラボ」
(千葉市中央区青葉町955-2)
料金 無料(特別展観覧は要入館料)
千葉県誕生150周年記念 特別展「よみがえるチバニアン期の古生物」
会期 7月15日(土曜日)から9月18日(月曜日・祝日)
千葉県誕生150周年を迎えたこの夏、県立中央博物館に千葉の名前がついた時代「チバニアン期」(約77万4千年前から約12万9千年前の時代区分)の古生物が大集結。
県内に広がるチバニアン期の地層からは、ゾウやサイ、クジラ、トドといったさまざまな生き物の化石が見つかっています。展示では、当館職員が発見した世界最大級のトドである「オオキトド」の化石や実物大復元画、ナウマンゾウの全身骨格など約300点の資料により、当時の房総の様子を鮮やかによみがえらせます。
同時開催 トピックス展「関東大震災から100年-災害の記憶を未来に伝える-」
震災絵はがき(館山市北条)
会期 8月1日(火曜日)から9月23日(土曜日・祝日)
関東大震災(大正12(1923)年)の発生から100年を迎える今年、県立中央博物館では、9月1日の「防災の日」にあわせて、震災や防災対策に対する関心を高めるため、トピックス展「関東大震災から100年-災害の記憶を未来に伝える-」を開催しています。
特に被害の大きかった県南部の写真や記録で当時の様子を振り返るとともに、地震のメカニズムや今後関東で予想される地震について解説します。また、日頃の防災対策についてまとめたパンフレットなども配布します。