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更新日:令和5(2023)年12月8日

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当たり前のこと(令和5年度心の輪を広げる体験作文入賞作品)

当たり前のこと

中学生区分

千葉県知事最優秀賞

いすみ市立国吉中学校2年
相場 竣三郎(あいば しゅんさぶろう)

 

僕には兄が二人います。壮一郎と洸二郎です。壮一郎は家ではそうちゃんと呼ばれています。

 そうちゃんは二十三歳です。そうちゃんは、「アンパンマン」が大好きです。「おかあさんといっしょ」も好きで、パン屋さんの仕事に行く前にテレビを見ながらいっしょに歌っています。二十三歳なのに、と思われるでしょうか。そうちゃんは、ダウン症です。ダウン症とは二十一トリソミーと言って二十一番目の染色体の数が一つ多い病気です。他の人よりも時間の流れがゆっくりなようです。そうちゃんには、知的障がいがあります。おしゃべりは、あまり上手ではありません。母の通訳がないと、そうちゃんが話していることが分からないことがあります。でも、僕がそうちゃんの話していることが分からないと、そうちゃんはとても寂しそうな顔をします。

だから、全部分からなくてもだいたい想像して、こんなことがいいたいんじゃないか、ということを話します。そうちゃんは満足そうにうなずくのです。

 僕とそうちゃんは、十一歳年が離れています。僕が生まれて、そうちゃんはとても喜んでくれたそうです。小さい僕を抱っこする写真がたくさんあります。僕が一人で歩けるようになる頃、毎朝そうちゃんが僕を二階の部屋から階段をおんぶして連れて降りてくれていました。僕はそうちゃんにおんぶされるのが大好きだったのです。ある朝、階段を降りてくれていたそうちゃんの背中で、僕が暴れてしまい、落ちて頭を切ってしまいました。僕が泣くよりも、大変な事をしてしまった、と思ったそうちゃんの泣き声に母はびっくりしてしまったそうです。病院が大の苦手なそうちゃんが、僕と一緒に病院に行き、ずっと僕の手を握っていたそうです。「いいじょうぶ(だいじょうぶ)、いいじょうぶ(だいじょうぶ)」そう言って側をはなれなかったと聞きました。注射をするのも何人もの看護師さんの手を借りないとできないそうちゃんが、病院で僕に付き添うなんて。そうちゃんにとって僕はとても大切な存在だったんだね、と後で家族で話しました。

 僕はすっかり大きくなり、身長もそうちゃんを追い越してしまいました。そうちゃんよりも出来ることがたくさんあります。でも、自分は出来るのにやらないのです。前日に次の日の準備をすること、毎朝決まった時間に起きること、雨戸を開けること、閉めること。帰ったら必ず洗濯物をしまうこと、食事が終わったら食器を片付けること。一つ一つは小さいことだけれど、とても大事なことだと思います。母にいわれても自分はできないのに、そうちゃんはちゃんとできています。そうちゃんの時間はゆっくり過ぎていくのでそうちゃんはゆっくり大きくなります。今は出来ないことも、ゆっくりできるようになる日がくるような気がします。そんなそうちゃんの時間に合わせて僕の家の時間がゆっくり進んでいるのです。

 障がいのある人と過ごすことは他の人にとってみたら「普通」のことではないかもしれません。ただ、僕にとって、ダウン症という障がいを持っている、そうちゃんと過ごすことが「普通」のことなのです。障がいがあるということを、僕は少し不便な個性ではないか、と考えています。障がいとは、特別なことではありません。障がいを持つ人との関わりは自分にはない個性を持つ、お互いを知り合う素晴らしい機会ではないでしょうか。僕にとって、アンパンマンが好きなそうちゃんが、僕の兄であることが「普通」であり、当たり前のことなのです。

 同じように、障害のある人と接するときに身構えるのではなく、「普通」として向き合う社会であって欲しいと思います。

 

お問い合わせ

所属課室:健康福祉部障害者福祉推進課共生社会推進室

電話番号:043-223-2338

ファックス番号:043-221-3977

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