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更新日:令和6(2024)年7月25日
ページ番号:424144
緑肥作物は、土壌への有機物補給やセンチュウ対策など様々な目的で利用されています。緑肥作物の生育量を確保するためには、適切な時期に播種する必要があります。また、緑肥作物を土壌にすき込んだ後、分解が不十分なまま後作物を栽培すると、発芽や初期生育へ影響する可能性があります。ここでは、春まきの緑肥作物を取り上げ、適切な播種時期とすき込み後の分解特性を紹介します。
春まき栽培(3月上旬から5月下旬まき)及び秋まき越冬栽培(10月中旬から11月上旬まき)が可能です。生育が旺盛なため、すき込み時の有機物補給量が多いという特徴があります。一部の品種には、キタネグサレセンチュウの抑制効果があります。
春まき栽培(3月上旬から4月中旬まき)及び秋まき越冬栽培(9月下旬から12月上旬まき)が可能で、エンバクと比べて耐寒性に優れます。低温期の発芽と生育が良く、冬期の土壌飛散防止効果もあります。一方、すき込み時の有機物補給量は、エンバクと比べてやや少ないです。
秋まき栽培(10月中旬から11月上旬まき)及び早春まき栽培(3月から4月まき)が可能です。一部の品種は辛味成分『グルコシノレート』を多く含むため、土壌にすき込むことで、土壌病害の低減効果が期待できます。
エンバクの写真
ライムギの写真
カラシナの写真
エンバク、ライムギ及びカラシナを夏まき露地野菜の前作として導入し、6月上旬にすき込む場合、緑肥作物の播種時期は3月下旬~4月上旬が望ましいです。これにより、十分な生育量を確保することができます(表1)。
表1.春まき緑肥作物の栽培時期とすき込み時の地上部の生育状況
注1)供試品種はいずれも雪印種苗株式会社
2)播種日、すき込みは2017年
3)10a当たりの播種量は、エンバクが15kg、ライムギが10kg、カラシナが1kg
緑肥をすき込む際には、地上部をモア等で粉砕した後、3回以上ロータリー耕を行い、分解を進めることが望ましいです。後作物の作付けまでに1か月以上の期間をおくことにより、後作物の発芽や初期生育への影響を回避することができます。
植物体のような有機物が土壌の中で分解される場合、有機物に含まれる炭素(C)と窒素(N)の比率(C/N比)が分解速度に影響します。C/N比が低いほど、速やかに分解されます。C/N比は緑肥の種類や生育ステージによって異なります。
図1は緑肥の種類によるC/N比の違いが分解速度に及ぼす影響を示しています。この図では緑肥の分解の程度を炭素残存率として示しています。すき込んだ緑肥に含まれる炭素量を100%とし、炭素残存率の数値が小さいほど、すき込まれた緑肥が分解されたことを意味します。4月上旬に播種し、6月上旬にすき込んだエンバク、ライムギ及びカラシナの分解速度を比較しました。ライムギ(C/N比13.8)は、同じイネ科緑肥のエンバク(C/N比21.1)と比較して速やかに分解します。カラシナ(C/N比14.2)は、すき込み後2週間までは速やかに分解しますが、それ以降の分解速度はエンバクと同等です。C/N比の高い緑肥をすき込んだ場合は、分解期間を長く取る必要があります。
図1.土壌にすき込んだ緑肥作物の炭素残存率の推移
注1)埋設日は2017年6月16日、ポリエチレン製不織布の袋に炭素量で0.5g相当の緑肥地上部と乾土10g相当の生土(黒ボク土)を混和して深さ10cmに埋設
2)供試品種は表1に同じ
3)緑肥作物の炭素残存率(%)=(掘り上げ時の緑肥由来の炭素量)÷(埋設開始時の緑肥由来の炭素量)×100
緑肥由来の炭素量=(緑肥と土壌を混和した埋設サンプルの炭素量)-(土壌のみの埋設サンプルの炭素量)
また、生育ステージが進むほどC/N比は高くなる傾向があります。エンバクとライムギは出穂後に大きく増加しますので、緑肥を速やかに分解させて、後作への窒素肥効を期待する場合は、出穂前にすき込むことがポイントです。
初掲載:令和3年4月
農林総合研究センター
土壌環境研究室
主任上席研究員 岩佐博邦
電話:043-291-9990
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