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更新日:令和6(2024)年9月11日
ページ番号:453431
神奈川県が育成し、平成24年に品種登録された「香麗(こうれい)」及び「なつみず」は、育成地で7月下旬から8月上旬及び8月上旬から中旬に収穫される極早生から早生の赤ナシです。これらの品種は本県でも栽培が可能であるため、生産者の関心が高い品種です。そこで、これらの品種の千葉県での適応性について検討しましたので、その結果を紹介します。
「香麗」は、ジベレリン塗布剤を塗布した「幸水」(以下、「幸水」GA)と比較して収穫盛期はほぼ同じでした。果重は391グラムで「幸水」(GA)と同程度でした。硬度は4.4lbsで「幸水」(GA)よりも低く、糖度は13.1Brixパーセントで「幸水」(GA)よりも高くなりました。水浸状障害の発生が若干認められましたが、販売上問題にならない程度でした。樹の生育は「幸水」と比較して側枝(旧枝)1メートル当たりの果台数に差はないものの、葉芽はやや少なく、短果枝の花芽はやや多く着生しました。また、新梢数はやや多く、新梢長には差がありませんでした。また、新梢1メートル当たりの葉芽数はやや少なく、腋花芽数は多く着生しました。
以上から、「香麗」は「幸水」よりも早く収穫できる極早生品種であり、花芽の着生は「幸水」と同等以上であることが明らかとなりました。
写真1. 「香麗」の外観
「なつみず」は「幸水」と比較して収穫始期が1週間程度早く、収穫盛期はやや早くなりました。果重は627グラムで「幸水」より大きく、糖度は13.5Brixパーセントで「幸水」と同等以上でした。しかし、水浸状障害及び果心褐変の発生が認められ、特に果心褐変は収穫後期に多く発生しました。樹の生育は、「幸水」と比較して側枝(旧枝)1メートル当たりの果台数及び新梢数はやや多く、花芽数や果台当たりの芽の着生数は少なくなりました。また、新梢長はやや長く、新梢1メートル当たりの葉芽、腋花芽の着生数は同程度でした。
以上から、「なつみず」は「幸水」とほぼ同時期に収穫でき、「幸水」より大果の早生品種ですが、果心褐変の発生が認められるために適応性が低いと考えられます。
写真2.「なつみず」に発生する果心褐変
表1.「香麗」及び「なつみず」の収穫果実品質
※画像をクリックすると、大きい画像が表示されます。
注1)「香麗」は千葉県農林総合研究センター植栽の13年生「なつひかり」に平成25年に高接ぎした樹を、「なつみず」は同植栽11年生「幸水」に平成25年に高接ぎした樹をそれぞれ供試
2)調査は「香麗」は平成30年及び令和元年、「なつみず」は平成28から30年に実施
3)水浸状障害指数は0から3の4段階評価の平均値で、大きいほど重症を示す
表2.「香麗」及び「なつみず」の樹体生育
※画像をクリックすると、大きい画像が表示されます。
注1)供試樹は表1に同じ
2)調査は平成30年に実施
「香麗」は「幸水」よりも早く収穫できる極早生品種で、果重及び糖度は「幸水」と同等以上であり、品質が安定しているため、本県での適応性はあると考えられます。「なつみず」は大果ですが、「幸水」と収穫期が重なること、収穫後期に果心褐変が発生すること、令和3年5月時点で新規に苗木を導入できないことから、本県では適応性及び普及性が低いと考えられます。
初掲載:令和3年8月
農林総合研究センター
果樹研究室
研究員 吉田明広
電話:043-291-9989
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