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更新日:令和4(2022)年1月5日
ページ番号:7460
促成ミニトマト栽培では、燃油削減を目的に内張りカーテンを展張するため、暖房機の稼働時間が少ない初冬や春には室内の相対湿度が高くなり、果実の裂果が発生しやすくなります。ミニトマトは裂果と正常な果実との選別に手間がかかり、裂果が混入するとパックごと商品価値がなくなることから生産現場では対策に苦慮しています。
平成29年度、好湿性病害の発病抑制に効果がある結露センサー付き複合環境制御装置を使った促成ミニトマトの裂果抑制技術を確立したので紹介します。
暖房機制御には、結露センサー付き複合環境制御装置(「まもるんサリー」、鈴木電子株式会社)を使用しました(以下、制御装置)。この制御装置は、通常の温度制御に加えて、付属する結露センサーの結露値により暖房機を制御します。結露値は、結露センサー固有の値で、0から1,000の値をとり、相対湿度95パーセント以上の湿度変化に対応して数値が急激に上昇します。一般の湿度計は95パーセントまでしか正確に測定できませんが、結露センサーは、95パーセント以上の高湿度条件下の変化をモニタリングできるため、高湿度での環境改善に有用で、キュウリ等の好湿性病害の発病抑制にも利用されています。
促成ミニトマト栽培において、制御装置により結露値80で暖房機制御(結露値が80を超えたら、暖房10分送風10分で暖房機を作動させる)を行うことで、結露値80を超える時間は慣行制御に比べ半減し(図1)、相対湿度も低下しました(図2)。この結果、結露値制御区で11月から12月の裂果率は約40パーセント減少し、1日当たりの裂果率が最大で約5分の1まで減少しました。
図1_制御法の違いによるハウス内結露値の推移(平成28年12月1日から2日)
注)結露値は、制御装置固有の値で、数値が大きいほど結露しやすい環境であることを示す。
図2_制御法の違いによるハウス内相対湿度の推移(平成28年12月1日から2日)
場内試験の結果をもとに、現地実証試験を行いました。暖房設定温度が同一な現地促成ミニトマト2圃場で、制御装置により結露値80で暖房機制御(結露値が80を超えたら、暖房3分送風17分で暖房機を作動させる)する圃場Aと、慣行制御の圃場Bを比較すると、裂果率が圃場Aは1.8パーセント、圃場Bは23.3パーセントとなり、結露値による暖房機制御で裂果が抑制できました(写真1、表1の第1期)。圃場A、圃場Bともに制御装置により結露値80で暖房機制御を行うと、いずれの圃場も裂果率が低く推移し、裂果抑制効果は安定していました(表1)。裂果が発生しやすい11月から12月に、裂果率を20パーセント程度下げることができるため、高湿性病害に対する抑制効果とあわせて、結露センサー付き複合環境制御装置のミニトマト促成栽培に対する導入効果は高いとみられます。
写真1_現地圃場A及びBの裂果の発生状況(平成28年11月14日)
表1_現地圃場A及びBの各調査期間における裂果率(平成28年11月)
注)第1期:圃場A結露値制御、圃場B慣行制御、調査日11月14日
第2期:圃場A、圃場Bともに結露値制御、調査日11月22日
第3期:圃場A、圃場Bともに結露値制御、調査日11月28日
本試験で使用した制御装置を使用する場合は、圃場の条件や、暖房機の能力によって、結露値を十分に下げることができる暖房稼働時間が異なることから、圃場に合わせた設定をする必要があります。また、本制御装置を利用しない場合でも、天気が悪く、裂果が多く発生することが見込まれる日には、設定温度を高めにして積極的に暖房機を稼働させる、カーテンを少し開放して湿気を逃がすなど、相対湿度を下げる管理を行うことで、裂果を減らす効果が期待できます。
初掲載:平成30年12月
農林総合研究センター
野菜研究室
主任上席研究員
鈴木秀章
電話:043-291-0151(代)
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