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更新日:令和3(2021)年12月13日
ページ番号:7457
ナシの改植では、定植した苗木の初期生育を促すことが重要です。農林総合研究センターでは、定植した苗木の株元に農業用ポリエチレンフィルムで被覆(マルチ)することで、樹の初期生育を向上させる方法を開発しました。今回は、その効果と方法を紹介します。
新梢生育が慣行(稲ワラを株元に敷いた樹)と比べ2倍以上になり、それに伴い葉数も増加します。その結果、光合成が活発になり、貯蔵養分が増加すると考えられます。
初期の細根発生量が慣行と比べ1.8倍になり、活着が良好になります。
主幹部の肥大が慣行と比べ1割程度増大します。これは、樹内の貯蔵養分が増加していることが原因と考えられます。
生育が促進された要因として、地温上昇と土壌中の硝酸態窒素含量の増大が挙げられます。
いや地現象が発生する改植圃場でも、マルチ処理をすることで新植圃場に植えた場合の8割程度まで生育が回復します。
樹の生育に伴い、初期収量も慣行と比べ1.9倍に増加します(大苗の定植2年目の試験事例)。
マルチ処理
慣行
処理の手順は、下の写真に示すように、まず被覆範囲を決め、その周りに溝を掘ります。次に、被覆範囲全体に施肥を行います。その上から農業用ポリエチレンフィルム(透明、厚さ0.02ミリメートル)を被せます。最後に、フィルムの端を溝の中に入れて土で固定します。溝を掘る代わりに、固定ピン(黒丸君など)でフィルムを固定しても良く、この場合には作業負担が大幅に軽減できます。
1.溝を掘る
2.被覆範囲全体に施肥
3.フィルムで被覆
被覆する範囲については、1年生苗木を定植する場合は、1年目が縦横0.5メートル、2年目が1メートル、3年目が1.5メートルとします。大苗(2年育成)を定植する場合には、1年目が縦横1.4メートル、2年目が2メートルとします。
施肥は、ロング413(溶出期間270日、ジェイカムアグリ株式会社製)等のコーティング肥料を用いて、年間窒素成分量の70パーセントをマルチの下に施用します。
被覆時期は、遅霜の心配がなくなった後がよく、農林総合研究センターでは4月20日前後に実施しています。なお、マルチ処理は、春根が伸長する4月後半までに地温を上げないと効果がないため、処理時期が遅くならないように注意してください。
マルチは11月にはがし、翌年も実施する場合はその都度新しい資材で被覆します。
被覆後の潅水は基本的に不要ですが、6月から7月以降に乾燥が激しい場合はマルチの隙間から行ってください。なお、定植当年の被覆前の2月から4月は2週に1回程度潅水してください。
マルチ処理の効果は、黒ボク土において確認していますが、その他の土壌で処理した場合の効果は現在調査中です。
本技術は苗木を定植して1年目から処理することが前提です。また、マルチ処理は、定植2、3年目まで継続して行うと効果的です。
初掲載:平成30年11月
農林総合研究センター果樹研究室
上席研究員
戸谷智明
電話:043-291-9989
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