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更新日:令和4(2022)年2月24日
ページ番号:7357
イチジクは特有のおいしさのみならず、近年は様々な効果も注目され、人気がある果物です。栽培に必要な苗木は挿し木で自家増殖することが可能です。これによりコスト削減が図れ、またイチジク株枯病等苗木で伝染する病原菌を外部から持ち込む危険性が低くなりますので、ぜひチャレンジしてみてください。
イチジクの挿し木方法について、今回はパラフィン系テープを利用した挿し木の成功率向上について紹介します。
一般的には接ぎ木に用いられているパラフィン系テープ(商品名:ニューメデール)は、粘着性があるため他のテープやひも等で固定する必要がなく、さらに自然に劣化するので後で取り除く必要がありません。そこで、挿し穂の乾燥防止対策として、挿し木した時に地上に出る部分に芽を覆わないようにパラフィン系テープを巻きつけた(写真1)テープ区と、挿し穂上切断面にろうを塗布する慣行区を比較してみました。なお、供試品種は「桝井ドーフィン」を用いました。
写真1.パラフィン系テープを巻きつけた挿し穂
3月下旬、4月中旬、5月上旬に露地圃場でテープ区、慣行区の挿し木を行いました(表1)。挿し木から萌芽までの日数は、各挿し木時期ともにテープ区が慣行区より短く、萌芽及び生育がよく揃いました。活着率は各挿し木時期ともにテープ区が慣行区を上回り、平均で12ポイント高くなりました。苗木の生育量は慣行区でばらつきが多く有意差は認められませんでしたが、各挿し木時期でテープ区が慣行区より優れ、長さは平均で12センチメートル長く、直径が1.7ミリメートル太くなりました。
以上、パラフィン系テープの利用により、いずれの挿し木時期でも活着率が向上し、苗木の生育が良好となる傾向がみられました。
表1.挿し穂の乾燥防止方法と挿し木後の萌芽、活着、苗木の生育量(平成21年)
注1)挿し木日は、3月下旬は3月27日、4月中旬は4月17日、5月上旬は5月7日
注2)慣行区は挿し穂の上切断面に融解したろうを塗布した
注3)萌芽所要日数は挿し木から萌芽までの日数とした
注4)生育量は11月6日に調査した
注5)各データは1区10本、3反復の平均値を示した
注6)t検定の*,**はそれぞれ5パーセント,1パーセント水準で有意差があることを示す
1年生休眠枝の先端部から採取した挿し穂は、品種によっては活着率及び苗木の生育が劣ります。そこで、先端部から採取した挿し穂にテープ区を設け、各部位から採取した慣行区と比較しました(表2)。慣行区では先端部の活着率が他の部位より低く、生育量も劣りましたが、テープ区ではいずれも改善されました。これにより、挿し穂が足りない場合等はパラフィン系テープを利用することで、先端部も利用できることが明らかになりました。
表2.挿し穂の採取部位及び乾燥防止方法の違いと活着率及び生育量(平成23年)
注1)採取部位は1年生休眠枝を3等分して先端部、中間部、基部とし,挿し穂は長さ約20センチメートルとした
注2)挿し木は4月17日に、各採取部位及び処理について100本を無作為に配置して行った
注3)生育量は11月22日に調査した
注4)異なる英文字のついた数値には5パーセント水準で有意差あり(Tukey-Kramer法)
「桝井ドーフィン」は登録品種ではありませんが、登録品種の自家増殖には育成者の許諾が必要です。また、育成者に無断で登録品種の苗木や穂木を譲渡、販売することは種苗法違反となります。
初掲載:平成28年1月
農林総合研究センター
果樹研究室
主任上席研究員
平井達也
電話:043-291-9989
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