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更新日:令和4(2022)年12月28日
ページ番号:553250
本県の農業改良普及事業に関して、普及指導計画に基づき農業事務所改良普及課が実施した前年度の農業改良普及活動・成果及び体制等について、幅広い視点から検討を行える優れた見識を有する者(以下、「外部有識者」という。)による意見交換会を開催し、より高い成果が得られるよう普及事業の改善を図る。
令和4年11月2日(水曜日)午後1時~5時
農林総合研究センター 大会議室
千葉県
外部有識者、農業事務所改良普及課、担い手支援課
区分 | 所属・職名 | 氏名 |
---|---|---|
先進的な農業者 |
千葉県指導農業士会 会長 |
菅佐原 芳夫 |
若手農業業者 |
千葉県農業士協会 副会長理事 |
野瀬 元隆 |
女性農業者 | 千葉県農業士協会 | 黒崎 玲子 |
農業関係団体 |
全農千葉県本部 営農支援部長 |
田中 公博 |
消費者 |
ちば野菜伝道師 |
高原 和江 |
学識経験者 |
千葉大学大学院 園芸学研究科教授 |
櫻井 清一 |
報道機関 | NHK千葉放送局 コンテンツセンター長 | 國廣 明美 |
民間企業 |
千葉銀行法人営業部 成長ビジネスサポート室 アグリビジネス副調査役 |
松岡 壯樹 |
秋冬にんじんを核とした園芸産地の維持
JA千葉みらい千葉東部地区出荷組合連合会は、生産者56戸、作付面積約40haの秋冬にんじん産地であり、高齢化による部会員の減少や秋冬にんじん作付面積の減少が予測され、産地面積の維持が課題となっていた。
そこで、関係機関と連携し、新たな部会員の確保と定着、にんじん作付面積の拡大に向けた普及活動を展開した。その結果、平成28年度から令和2年度まで5戸が新たに人参部会へ加入し、新規部会員5戸の令和3年度にんじん作付面積は835aにまで拡大した。また、産地面積は平成27年度以降、おおむね40haの面積を維持している。
千葉市の新規就農者向け研修会について、カリキュラムに秋冬にんじんを入れることを提案したとのことだが、提案はスムーズに受け入れられたのか。研修内容について臨機応変に対応する体制になっているのか。
千葉市内の新規参入者は、市が主催する新規就農希望者研修を受講することが多くなっている。「新規就農希望者研修」に秋冬にんじんの講義や生産者ほ場での視察研修などのカリキュラムを追加してもらえるよう、農協や部会員と話合いを重ね、提案した。内容については、研修期間2年3か月の中で、栽培全般に関する講義や実習で大枠は決まっている。
系統外出荷者からも新規部会加入があったとのことだが、系統外からどうして部会に加入したのか。部会加入のメリットはもともと知っていたはずだと思うが、どのような説明が心を動かしたのか。
農業事務所の職員がJAの部会事務局と一緒に農業者を訪問した。技術レベルの高い先輩農業者と交流できること、販売に関する手間がかからないこと、経営安定につながること等のメリットを改めて伝えた。
ネギ産地の活性化
JA長生ねぎ協議会は管内の5つの出荷団体で構成されている。高齢化による生産者数や出荷数量の減少が問題となっていたことから、長生農業事務所では、JA長生等の関係機関と連携し、新規参入者の経営開始や品目拡大によるネギ栽培の導入等を支援することにより、新規栽培者の確保に取り組んだ。また、出荷調製施設の運営改善支援と定植機の共同利用による省力化の推進や、夏ネギ等の新作型の導入など、栽培技術指導を実施した。
その結果、生産者は113戸を維持し、販売額は2.4億円(平成26年度)から2.7億円に増加した。また、ネギ栽培経験5年未満の生産者26戸に対し、重点的に技術指導に努めた結果、令和3年度は14名が産地の目標収量である3t/10aを上回った。
JAと連携した「農業塾」の取り組みは良い事例だと思うが、PRは十分に行ったのか。
JAの広報誌で参加者を募集した。また、関係機関が就農相談で情報提供している。
新規栽培者が増えていて良い取り組みだと感じた。新規就農者の経営安定に向けて、栽培コストが高まっている中で、どのような支援を行っているか。
秀品を生産し、単収3トンを超えることが必要であると考えている。新規就農者に対しては、まずは出荷できる品質と量を確保できるよう支援している。労働力2人の場合、面積60aで所得200万円を1つの目標として栽培指導を行っている。
自給飼料の生産拡大と地域内飼料の利用による酪農経営の安定
輸入飼料価格の高騰や米価の低迷等から酪農及び水稲経営が低迷する中、関係機関との連携を図り、WCS用稲及び飼料用米の生産と地域内流通の推進、定着を図った。平成26年度67haであった利用面積は、耕種農家による収穫・調製を担うコントラクター組織の育成や、稲WCS及び飼料用米の給与体系の確立により令和3年度には122haに拡大した。
この取組みにより、水稲農家は経営所得安定対策等の交付金による経営の安定化が図られ、酪農経営体は地域内飼料を活用することによりコストが低減し、経営が改善した。
水稲農家も高齢になっているが、水田の維持に関する課題・解決方法についてどう考えているか。
水田については、小規模経営体の離農が進み、少数の大規模経営体及び集落営農組織に農地が集積している。これらの経営体の技術・経営指導を行い地域の水田営農の維持を図る。
飼料価格は今もさらに高騰している。今後のさらなる取組の推進について知りたい。
牛群検定による乳量・乳質の向上や飼料費低減技術の導入、自給飼料の作付け拡大やICT技術の導入による省力化を進めているほか、TMRセンターの設立により地域全体での地域内飼料の利用率を高め、飼料コストの低減を進めている。
また、当地区の酪農家は生乳のほか、チーズやジェラート等の加工品の生産・販売にも取り組んでおり、高付加価値化による所得向上に繋がっている。地元での耕畜連携や特産品へのファンづくりを通じて、魅力ある夷隅の農業を守っていきたい。
県域課題の共同実施による普及職員の育成と大家畜経営の経営改善
千葉県では、畜産を担当する普及員が1名で活動する農業事務所が増えてきており、普及員間の情報共有や経験年数の少ない普及員の早期の育成が課題となっていた。また、近年の酪農経営体数の減少が著しく、経営継続と生産量の維持のため、既存技術の見直しやスマート農業等の新技術の導入による、コスト削減や労働負担軽減、規模拡大が課題であった。
そこで、担当者会議や現地課題調査研究等の連携活動を強化し、畜産担当普及員のネットワークの構築と育成を進めた。その結果、普及員のスキルアップが図られ、大家畜経営体への指導内容が向上した。
搾乳ロボットの技術指導を行っているとのことだが、普及員はメリットだけでなくデメリットも理解したうえで農家に指導しているのか。
各経営体と課題や目指す姿を共有した上で、どの技術を導入するかの相談に対応している。搾乳ロボットについても、メリットとデメリットを示したうえで導入を指導する。
普及員は事務所間で相互に情報共有できているのか。
畜産担当者については、担当者会議により情報共有や相談し合う場を設けている。畜産以外では、普及員研修で他の地区の事例について学んだり、課題について検討したりしながら情報交換している。その他、成果発表大会の開催や事例集の作成によって、広く活動を共有している。
普及員の育成については、畜産に限らず、客観的に到達度を確認できる仕組みづくりをしてほしい。ケースバイケースの部分もあると思うが、ある程度の道しるべになるものがあると良い。
現在、人材育成については、実践指導力確立期(1~3年目)、専門指導力確立期(4~10年目)、総合指導力確立期(11~20年目)、企画運営能力確立期(21年目~)ごとの育成目標に向けて取り組んでいる。技術習得のチェックリストを設定し、1~3年目で確認、面談を行っている。
後継者の育成による持続的な果樹生産の実現
将来の担い手を育成し今後の梨産地の維持発展を図るため、若手生産者による学習組織の育成と活動支援を行った。併せて個別指導を実施したことで23名が梨経営に必要な基本的栽培技術を習得し、個々の経営で主体的に栽培管理に携わるようになった。
また、この活動を通じて都市農業に重要な環境負荷の少ない防除技術や、老木の改植を進めるために必要な早期成園化栽培技術(ジョイント仕立て、2本主枝一文字仕立て等)の地域への導入が進んだ。
既存の研究部を再編したとのことだが、若手が参加を決めた決め手はどのようなものか。具体的にどのように若手生産者の意識・意欲を高めたのか。
梨農家の若者が集まる機会が乏しかった中で、同世代の仲間で構成する会へ再編したことが若手の参加に繋がった。活動に際しては、学習したいテーマ、活動方法や役割分担を部会員で話し合って決めるなど、自発的な学習活動となるように支援することで個々の学習意識の高揚や集団学習体制の構築を図った。
集落ぐるみのジャンボタニシ対策から集落営農へ
印西市本埜地区には規模拡大志向水稲経営体が存在するが、それだけでは近年の急速な担い手への農地集積に対応し地域の水田営農をカバーするには不十分であり、集落で話し合う場を作り、問題解決に繋げる必要があった。一方で、ジャンボタニシが33.5haに生息域を拡大し、営農を継続・拡大するためには、集落ぐるみで対策を実施することが必要となった。そこで、本埜地区の集落に対し総合的な防除対策の実施を働きかけるとともに、今後の営農について集落で考える座談会の実施を支援した。
その結果、集落ぐるみ防除活動により被害面積が11.8ha減少し、防除に関係した3集落が人・農地プランの実質化に取り組み、1集落が集落営農組織を設立して新たな担い手が育成された。
集落営農組織の設立について、非農家も会員に含んでいるとのことだが、非農家の参画はどのように促したのか。
[回答1]
当該集落は専業農家が少なく、草刈りなどは担い手を中心に集落で手伝うという実態があったため、ジャンボタニシ対策活動は土地持ち非農家にも参画をお願いした。集落ぐるみでジャンボタニシ対策を実施する中、集落の今後を考える必要性を相談し、集落を守るには、営農班と運営班からなる集落営農組織が必要という結論に達し、土地持ち非農家を含む集落営農組織を結成した。
安定生産と規模拡大によるひかりねぎブランド産地の維持発展
JAちばみどりそうさ園芸部の「ひかりねぎ」は現在、生産者222戸、栽培面積は121.7haで、主に横芝光町と匝瑳市から周年出荷され、共選で品質の揃いが良く、市場から高い評価を得ている。しかし、生産者及び栽培面積は減少傾向にあり、近年は気象の影響や病害の発生により生産量の減少が顕著となった。
そこで、気象変動に強いネギ作りの実証、新規ネギ栽培者の育成、高単価が見込める「プレミアム夏ねぎ」の拡大に取り組んだ結果、ネギ全体の販売額が回復した。
離農の希望があることに対して、中長期的な対策はあるか。新規栽培者の確保・育成にはどのように取り組むのか。
ネギ生産による収入で生活できるよう、技術習得を支援している。平成26年から、管内のネギ栽培希望者へ新規ネギ栽培講習会(年5回)を実施している。また、技術習得や雇用就農を見据えたネギ研修制度(ネギ農家研修)について、JAや部会と検討している。
栽培面積の増加及び価値向上による食用ナバナ産地の維持
安房地域は日本一の食用ナバナ産地であるが、生産者の高齢化等の要因によって栽培面積、生産者数が減少していた。そこで、関係機関と連携し新たな出荷者を確保・育成するための体制作りを進めたことで、出荷者の確保につながった。
また、雇用を導入し意欲的に加工業務用の規模拡大に取り組む生産者に対しては、経営管理能力向上に資する研修会の開催、GAPの推進を行い、経営発展を支援した。その結果、産地の生産者数は減少傾向であるものの、産地全体の栽培面積は増加傾向となった。
生産者の経営管理能力の向上につながればという意味でGAPについて啓蒙しているのか、それとも流通先から取得を求められているのか。
生産者の経営管理能力向上の観点からGAPを推進してきたが、近年は流通先から取得を求められることが増加しており、その場合はコンサルタントの活用も含めて認証に向けた指導を行っている。
農業事務所改良普及課等は、意見交換会の結果を、令和4年度の普及指導活動の運営、来年度の計画(令和5年度農業改良普及指導計画)の作成、次期中期計画の作成等に反映させる。また、担い手支援課も含め、活動の効率化、効果の向上に活用する。
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