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更新日:令和3(2021)年12月15日
ページ番号:480330
本県の農業改良普及事業に関して、普及指導計画に基づき農業事務所改良普及課が実施した前年度の農業改良普及活動・成果及び体制等について、幅広い視点から検討を行える優れた見識を有する者(以下、「外部有識者」という。)による意見交換会を開催し、より高い成果が得られるよう普及事業の改善を図る。
令和3年11月10日(水曜日)午後1時15分~4時45分
国民宿舎サンライズ九十九里 会議室
千葉県
外部有識者、農業事務所改良普及課、担い手支援課
区分 | 所属・職名 | 氏名 |
---|---|---|
先進的な農業者 |
千葉県指導農業士会 会長 |
秋場 静 |
若手農業業者 |
千葉県農業士協会 会長理事 |
小高 一哲 |
女性農業者 | 千葉県指導農業士会 | 川面 弘美 |
農業関係団体 |
全農千葉県本部 営農支援部長 |
川口 重則 |
消費者 |
ちば野菜伝道師 |
高原 和江 |
学識経験者 |
千葉大学大学院 園芸学研究科教授 |
櫻井 清一 |
報道機関 | NHK千葉放送局 放送部長 | 加治 信彦 |
民間企業 |
千葉銀行 法人営業部 成長ビジネスサポート室 副調査役・アグリビジネス担当 |
松岡 壯樹 |
農地利用調整による集落営農の推進およびモデル組織の育成
基盤整備実施地区である香取市森戸地区において、地域のモデルとなる集落営農組織(対象:森戸営農組合)の育成に向けて関係機関と連携し、営農計画作成支援や各事業計画作成支援、栽培技術指導を行ったところ、設立後5年で水稲栽培面積106haと管内一の大規模経営体へと発展し、複合品目として秋冬ネギの栽培も開始された。
また、集落営農推進地区16地区においても関係機関と連携し支援を行った結果、5地区で集落営農法人が6組織設立された。さらに2地区で法人設立を検討しており、各地域にあった集落営農の検討が開始されている。
森戸営農組合の取組を横展開する際の、ネギ以外の品目や他の集落営農への仕掛けなどのヒントはあるか。
森戸営農組合にはネギ栽培の経験者がいたためネギを採用した。他地区ではキャベツやブロッコリー、春菊に取り組んでいるところもある。露地の場合は排水性が非常に問題となるため、労力やほ場条件と合わせて見極めていく必要がある。また、森戸の場合は販売まで農協に入ってもらって加工用ネギということになったが、このように販売とセットで考えていくことが非常に重要だと考えている。
集落の合意形成には苦労があったと思う。合意形成の中で、関係各所の理解を得るために話し合いのポイントとなった点などがあればお聞きしたい。
地元の農業委員等に動いてもらったことが非常に大きい。農業事務所や市役所だけでは話し合いが行き詰ったところには地元の方に入って頂き、個々の話を聞き取ってもらうことで実感が持てる話し合いとなった。官主導だけではなく、農業委員を含めた民の動きをいかに入れていくかが合意形成の気持ちの部分では非常に大事だと思う。また、今回の森戸の場合は非常に多くの関係機関に関わって頂き、それぞれの役割分担や情報共有がしっかりできていた。このノウハウを香取の他の地区でも生かしていきたいと思う。
省力化・品質向上によるさつまいもの共選共販体制の強化
香取地域のさつまいもの作付面積は、印旛地域についで県下第2位の主要品目であり対象地区では151haを作付けしている。その中で、農家の高齢化や後継者不足によりさつまいも農家数や栽培面積の減少が懸念されている。そこで、JA洗浄選果施設の活用や労力支援システムにより、生産者がさつまいも生産に専念することで規模拡大が図られ、出荷量が増加するよう支援を行い、産地の維持発展に取り組んでいる。
令和2年で7戸の農家が労力支援システムを利用しているとのことだが、利用した方の中で面積拡大をした方はいるのか。
当初の狙いはこのシステムを利用して面積拡大をすることであったが、実際は人手が足りなくて頼みたいという方が多い。今年度は13名の方が利用し、少しずつ取組が広がっているので、規模拡大につなげていきたい。
産地の維持拡大のために次に取り組むべき課題は何と考えているか。
つる切りの労力負担に加えて苗の確保もボトルネックなので、育苗の委託などもできないかと今考えている。また、連作障害が増えている中で、サツマイモだけでなくニンジンや緑肥等の輪作をどう取り入れていくかも課題である。
集落営農組織の営農体制の確立
黒部川左岸第三地区(153ha)での基盤整備後の担い手として集落営農組織の育成を行った。小見地区をモデルとして重点的に指導し、(農)ファームOmiの設立及び高収益作物(ネギ)の導入、水稲作業の効率化等の支援を行った。
小見地区の動きを他地区へも波及させ、集落営農組織設立への働きかけ及び、人農地プランの作成、耕地利用図の作成等に取り組んでいる。
小見地区では既に水稲に加えて高収益作物である野菜(ネギ)が導入されている。高収益作物を販売するにあたって、系統組織や商系組織などと連携はしているのか。竹之内と米野井ではネギではなくキャベツとブロッコリーを導入しているが何か理由はあるのか。
販売は基本的には農協と連携している。キャベツとブロッコリーは水田裏作での導入を考えているので水田裏作で実績のあるこの2品目とした。
環境制御技術の導入による産地の維持・強化
JA山武郡市第一集出荷センターでは、きゅうり、なす、トマトの3品目を大型選果場で周年出荷しており、市場から高く評価されている。近年、高齢化がすすみ生産者数と栽培面積の減少により生産量が減少している。そこで、産地発展を担う若手生産者を中心に、ICT活用を含めた環境制御技術の考え方を広め、主に促成きゅうりの収量増加を図った。特に、ハウス内環境の最適化に向けた管理方法を学び合う勉強会(スタディクラブ)の活動を促し、収量増加と秀品率向上を目指した。この結果、部会の促成きゅうり単位面積当たり収量が約1割増加した。(部会全体:H26 8,400kg/10a → R2 9,750kg/10a、クラブ員平均:H26 9,632kg/10a → R2 13,168kg/10a)
収穫量がスタディクラブ結成前と比較して2割アップした要因は何か。
以前は勘と経験に頼っていたが、データが見える化され改善すべきところが見えるようになったため。
他の品目への波及効果はどうか。
山武管内ではイチゴのスタディクラブ育成に取り組んでいる。また、ナスにも波及させたいと考えている。
若手生産者によるネギ産地の強化
若手生産者組織「ひかりねぎ研究会」の会員を産地の担い手として育成するとともに、研究会活動による産地の活性化を目的とし普及活動を行った。産地で問題となっている長雨と台風被害について、会員のほ場において排水性改善及び台風対策、土壌病害対策の現地試験を実施した。また、高単価が期待できるプレミアム夏ネギ(通常の夏ネギは6月上旬~7月下旬出荷で、プレミアム夏ネギはトンネル被覆により端境期の4月下旬~5月に出荷)の品種や栽培技術を検討した。省力化機械の導入促進のため、大規模生産者への視察研修会等を開催した。その結果、栽培面積1ha以上の会員は9戸から17戸に増加した。
気象災害対策モデル圃場を設置した実際の効果について教えて頂きたい。モデル圃場に関してはどのように管理をしているのか。
排水性改善や風よけ等に取り組む農家が増加した。試験圃の中で効果の高かったものをモデル圃場としている。
若手生産者の育成による経営体の強化といちご産地の育成
山武地域は、観光いちご狩りの盛んな山武市や、直売いちご産地の東金市があり、県内随一のいちご産地である。産地の持続的発展を目指すため、観光いちご狩りを主とする山武市の経営体に対し、天敵によるIPM防除技術の導入と規模拡大を促進した結果、顧客数に対する安定的な生産量が維持され、顧客受入体制が強化された。一方、直売を主とする東金市の経営体に対しては、ハウス増設、高設栽培の導入やいちご狩りの取組により規模拡大農家が増加した。
また、若手生産者の技術向上のため、地域の枠を越えた若手いちご生産者のネットワークを育成し、ICTを活用した環境制御技術などの学習活動をおこなった結果、この技術に取り組む農家が増加した。
面積拡大も重要だがそれをすると労力も増やさなければならない。雇用環境を整えることがなかなか難しい状況にもあるので、単収をあげる取組をやっていただきたい。
千葉県内最大の水稲種子産地を支える若手生産者の育成
君津地域は県内最大の水稲種子産地であり、優良種子の安定生産が望まれている。生産者数は高齢化等により年々減少している一方で、若手生産者等の規模拡大が進んでいる。若手生産者等の生産及び経営の安定化が課題であった。そこで、適期管理の徹底指導、技術改善実証ほ場を設置しての栽培指導や、ほ場の団地化の推進、本田病害虫防除作業の省力化の支援等を行った。結果、若手生産者等の収量及び売上が増加し、作業の効率化が図られたことにより、採種部門が経営の柱と位置づけられ、安定した種子産地として面積を維持している。
種子生産圃場の団地化では、複数の集落にまたがって圃場が点在しているので合意形成も大変だったかと思う。こうやったらうまくいった等のポイントがあれば教えて頂きたい。
イネばか苗病対策に協力的なところや発生がすくないところへ圃場を集積していった。
スマート農業は大規模圃場に導入するなら採算がとれるかと思うが、種子圃場等面積が限られたところへのスマート農業の導入については、導入補助はあるのか。
種子生産は1ha程度~10数haの面積で栽培しているが、水稲経営の中の一部。水稲経営全体で使えるようなスマート農業を考える方は出てくるかと思う。
スマート農業の導入については、米などの産地競争力強化や優良種子の生産体制を整備に資するための県の支援事業として、農産産地支援事業(優良産地拡大支援事業)のスマート農業推進型があり、その補助対象がドローンや自動水管理システム等となっている。
農業経営体育成セミナーを活用した新規就農者の育成
新規就農者を確保、育成するため、3か年の農業経営体育成セミナーを開催した。結果、段階的な集合研修や個別支援を通して農業経営体育成セミナー生に農業経営に必要な知識や技術、記帳・経営管理能力の習得、農業者としての人脈形成、地域農業の担い手としての定着が図られた。
3年間のカリキュラムではなかなか時間が足りないところもある。仲間がいることで切磋琢磨して競争意識が高まっていくので、仲間づくりをぜひ進めてもらいたい。
また、新規就農者に対して、ここでならこんなものが栽培できる、このような販売ができると県から紹介できる窓口やシステムがあればいいと思うがいかがか。
セミナーの中に、お互いの圃場を訪問し合うカリキュラムや地域の指導農業士・農業士との意見交換会等を入れて仲間づくりを進めている。新規就農者への相談窓口については、農業事務所に新規就農者から直接相談があった場合は、企画振興課と改良普及課セットで対応するようにしている。
基盤整備後の農地を守る持続性の高い水田農業の実現
袖ケ浦市では、水田作業を効率化するための基盤整備事業の要望が各地から挙がっており、その中の百目木集落(区域農地面積:72ha)では平成24年から、勝・大曽根集落(区域農地面積:53ha)では平成25年から基盤整備に係る工事が進められている。
そのため、両集落において、基盤整備後の農地を担うための農事組合法人の設立を支援した。その結果、両集落で法人が設立され、併せてライスセンターも導入された。
また、大規模化する法人の経営改善のため、水稲の作業効率化を目指した省力化技術の導入を支援した結果、プール育苗、厚播き育苗及び高密度播種苗などの技術が導入され、併せて、集落での話合いを進めた結果、実質化された人・農地プランが作成された。
以上の取組によって、大規模化した法人と個人担い手による地域の営農体制が成立した。
農地中間管理機構を通じての取組はどの程度進んでいるのか。
各集落で農地中間管理機構を通じて農地の集積が進んでいるところ。できるだけ農地中間管理機構を通して今後も集積を進めていきたいと思う。
農業事務所改良普及課等は、意見交換会の結果を、令和3年度の普及指導活動の運営、来年度の計画(令和4年度農業改良普及指導計画)の作成、次期中期計画の作成等に反映させる。また、担い手支援課も含め、活動の効率化、効果の向上に活用する。
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