ここから本文です。
更新日:令和2(2020)年12月14日
ページ番号:403264
普及指導計画に基づき、農業事務所改良普及課が実施した前年度の農業改良普及活動等について、幅広い視点から検討を行える優れた見識を有する者(以下、「外部有識者」という。)による意見交換会(以下、意見交換会)という。)を開催し、より高い成果が得られるよう普及事業の改善を図りました。
令和2年11月5日(木曜日)午後1時~4時
千葉県農林総合研究センター 2階 大会議室
千葉県
外部有識者、農業事務所改良普及課、担い手支援課
区分 | 所属・職名 | 氏名 |
---|---|---|
先進的な農業者 |
千葉県指導農業士会 |
菅佐原芳夫 |
若手・女性農業業者 |
千葉県農業士協会 |
周郷綾 |
農業関係団体 |
全農千葉県本部・営農支援部長 |
高木成人 |
消費者 |
ちば野菜伝道師 |
高原和江 |
学識経験者 |
千葉大学大学院園芸学研究科教授 |
櫻井清一 |
報道機関 |
NHK千葉放送局放送部長 |
藤森一 |
民間企業等 |
千葉銀行法人営業部成長ビジネスサポート室 副調査役・アグリビジネス担当 |
松岡壯樹 |
次代の都市農業を中心となって支える担い手の育成
次代の都市農業を支える担い手を育成するため、新規就農者を対象に3か年の農業経営体育成セミナー(以下セミナー)を開催するとともに、地域の農業青年クラブ(以下4Hクラブ)活動を支援した。これらの取組の結果、地域農業の新たな担い手として就農定着するとともに、地域のリーダーとなる青年農業者の経営者能力の向上、経営参画の促進、多様な人脈の構築及び組織運営能力の向上が図られた。
[質問1]
セミナーのカリキュラムは受講生の要望に基づいて開催しているのか、どんな講師を招いているのか。
[回答1]
毎回セミナー生から研修結果表を提出してもらい、ニーズにマッチしたカリキュラムとなるよう反映させている。また、講師については、セミナー生には多くの専門家に出会って切磋琢磨して欲しいので、篤農家、資材メーカー、マーケティング会社、種苗会社など、幅広くマッチングできるようカリキュラムを組んでいる。
[質問2]
4Hクラブの活動を通して他地域や異業種など人脈が広がったとのことだが、具体的にはどういった方とのつながりができたのか、また、その方々から見た4Hクラブはどうとらえられているのか。
[回答2]
管内5つの4Hクラブ間や県内の青年農業者組織との交流、販売活動や食育活動の中で関係機関、販売関係者や栄養士との人脈が広がった。また、関係機関と連携をすることで、次の農業振興・地域活性化へのアクションを共同して実施できるというお互いのメリットがある。
[質問3]
平成27年から29年度のセミナー新規受講者48名の年代構成や親元就農か否か、栽培品目などを教えてほしい。また、4Hクラブと地元JAとの関わりや年代構成を教えてほしい。
[回答3]
20代が7割、30代が3割弱、40代は1割未満である。親元就農が7割で、栽培品目は地域の品目と同様で野菜が6割、果樹が3割、水稲1割弱となっている。
4Hクラブについては、20代が8割、30代が2割。親元就農がほとんどで、加盟してからおよそ10年で卒業となる。管内に3JAがあり、それぞれ青年部や青壮年部があるが、4Hクラブにも青年部にも加入している人、4Hクラブ卒業後青壮年部に加入する人など、JA青年部へ加入するタイミングはさまざまである。4Hクラブ及びセミナー生の9割以上はJA組合員である。
自給飼料によるコスト低減と飼養管理技術の向上による酪農経営の安定化
平成27年度から、耕畜連携の取組として、水田を活用した自給飼料の生産及び利用を目的に、水稲経営体、酪農経営体、市及び(株)野田自然共生ファーム堆肥センター(以下、堆肥センター)、農業事務所等関係機関が連携して、稲WCSと籾米ソフトグレインサイレージ(以下、籾米SGS)等の試験栽培を開始した。平成30年度からは、籾米SGSに絞って取り組み、栽培から調製・運搬・利用までの一連の仕組みを確立することができた。その結果、令和元年度には栽培面積は28.3haへ、利用する酪農経営体は3戸から10戸へ増加した。更に、飼養管理技術向上を図るため、自動給餌ロボットを1戸が導入した。
[質問1]
水稲農家がこの取組に参加するメリット、また、野田市堆肥センターが参加するメリットは何か。
[回答1]
水稲農家のメリットとしては、籾米SGSは新たな機械投資を必要とせず、既存のコンバインで収穫した生籾を直接調整場所へ持ち込むため、籾の乾燥に要する労力と費用を削減できること。また、主食用米との収穫期を分散することで、経営規模の拡大も可能となる。
堆肥センターのメリットとしては、水稲農家から籾米を10円/kgで買い上げ、加工したものを酪農経営体に25円/kgで販売しており、その差額から資材・人件費を差し引いたものが堆肥センターの利益となる。また、市が目標とする「資源循環型の社会の実現」にも寄与している。
[質問2]
野田市畜産クラスター協議会はいつからあるのか、また、他の地域でも同様の事例はあるのか。
[回答2]
平成27年に発足した。管内では1つだが、海匝、安房にもクラスター協議会が存在している。
露地野菜産地を担う経営体の育成と産地の維持
松戸市と流山市では、特産である、わけねぎを周年出荷しており、市場から高く評価されていたが、生産面積の減少と夏季の減収により、販売力が低下していた。そこで、調製作業等の機械化、夏季栽培技術の普及に取り組んだ結果、わけねぎが安定的に出荷できるようになった。
また、全国ねぎサミット等によるPR活動支援や農商工連携による加工品開発の取り組みから、産地の認知度が上がり、発信力の強化につながった。
さらに、野菜産地を維持するため、労力が少なくても生産できる、えだまめの生産拡大と共同出荷体制の整備により、産地が強化された。
[質問1]
わけねぎ加工品ができたのは生産者側からの働きかけなのか、加工業者側からなのか。加工品ができるまでにどのくらいの年月を要したのか。また、わけねぎ加工品は何があるのか。
[回答1]
生産者側からJA全農ちばを通して働きかけを行った。最初の加工品の醤油ダレが販売されるまでに、働きかけから1年半ほどかかった。
わけねぎ加工品は、醤油ダレ、肉みそ、うま辛ダレ、ポークソーセージ、カレーそぼろがある。JA直売所や市川PA等で販売しているほか、松戸市のふるさと納税の返礼品となっており、加工品の売上は年間約75万円である。
[質問2]
えだまめの栽培面積が増えているのは、わけねぎの面積が減ってえだまめが増えているのか。
[回答2]
その通りである。わけねぎは軽量な品目ではあるが、調整の手間や暑い時期に頻繁に害虫防除を行うなど体力的な負担から、高齢者がえだまめへ転換する動きがある。
[質問3]
わけねぎの苗は営農技術センターが供給しているが、苗の品質や課題について農家から意見はあるか。
[回答3]
生産者から特にクレームなどはなく、品質は安定している。昨今は高温対策など気候変動への対策が重要となっている。
安定生産と規模拡大による「ひかりねぎ」ブランド産地の維持発展
横芝光町、匝瑳市、旭市を中心に栽培されている「ひかりねぎ」はブランドとして市場の評価は高く、農家所得の向上に寄与しているが高齢化と後継者不足による面積の減少や、連作障害による減収が課題となっている。
そこで、周年栽培に向けた8~10月どり作型の推奨と、雇用導入支援により担い手の規模拡大を図った。また、連作障害対策として土壌分析結果に基づいた技術指導や、市場の需要が増加している加工業務用ネギを導入したモデル経営体を育成した。
これらの結果、8~10月どり出荷量は21tから78.5tへ増加し、担い手(ひかりねぎ研究会員)の新規拡大面積は19.3haとなった。新規の加工業務用ネギ出荷量は109.7t、連作対策技術導入面積は24.1haとなった。ただし、令和元年房総半島台風の影響を強く受け、令和元年度の販売金額は目標を下回った。
[質問1]
雇用確保事例の具体的な内容について教えてほしい。
[回答1]
雇用導入があった4戸のうち、3戸は新聞折込チラシでの募集を行った。応募の条件としてシフトを希望制にすると希望者の数が増えた。残り1戸は民間の農業用雇用募集サイトで導入に至った。
[質問2]
加工業務用ネギは全体の出荷量の何割くらいか。また、加工業務用ネギモデルの法人経営体はひかりねぎからの転換なのか?
[回答2]
全体の約3%。全量をJA、全農を通じて東京青果へ出荷している。また、モデル経営体は新規にネギを始めて2年。最初から加工業務用としてスタートしている。
[質問3]
単価が全国の中でも高いということだが、もっと高く販売する方策はないのか。若い人が進んで就農できるような、一歩上を目指した取り組みをしてもらいたい。
[回答3]
篤農家の正品率が約8割、新規就農者の正品率が約5割なので、そこの底上げに取り組んでいきたい。また、併せてプレミアム夏ねぎなど単価の高い作型の割合を増やす、正品率を向上する、高価格販売に向けて関係機関と連携するなどの取組みを進めてまいりたい。
地域連携と経営体の所得向上による畜産産地の強化
旭市では、畜産農家が利用する飼料用トウモロコシ等の自給飼料を生産するために、飼料生産組織が2組織活動しており、耕作放棄地の再生利用に取り組んで生産面積の拡大を図っていた。平成26年度の生産面積は市外のほ場を含めて85haであり、更なる生産面積の拡大には、耕作放棄地以外でのほ場確保が課題となっていた。
そこで、養豚農家の利用度の低かった農地を活用した飼料生産や水田を活用した二毛作生産について、関係者での検討の実施や実証ほの設置を行い推進した。また、新たな飼料生産組織の設立についても支援した。その結果、令和元年度の飼料生産組織数は4組織、自給飼料生産面積は153haに拡大した。
[質問1]
稲WCS裏作としての飼料用オオムギの作業スケジュールを教えてほしい。
[回答1]
飼料用オオムギの播種は10~11月頃、収穫は4月下旬~5月上旬。田植は通常4月下旬から5月上旬だが、オオムギを栽培する場合は5月中旬以降に田植えをしてもらうことになる。WCSは耕種農家が栽培し、オオムギはコントラクターが田を借りて栽培している。水稲よりも経営的にメリットがあり、またコントラクターも秋だけでなく春の仕事ができるということで、今後も取り組みは拡大していくと思われる。
[質問2]
飼料生産組織を新たに作るというのは非常に良い取組で、県内でも横展開を期待できると思うが、設立までの取組を教えてほしい。
[回答2]
新たに2組織を設立した。そのうち1組織については、もともと自給飼料を生産していた農家と、自給飼料生産の意向はあるが生産体制が整っていなかった農家から、堆肥の有効活用や飼料生産に関する相談を農業事務所が受けていた。その農家と、農協や市とで何度も打合せを重ね、飼料生産や補助事業に関する情報提供を行い、組織化への合意形成を図った。
もう1組織については、地域の稲作農家で稲WCS生産を行うために関係機関で誘導して組織化された。
トマト研究会若手生産者育成による産地の維持強化
銚子施設園芸組合は、トマトの徹底した選別と周年出荷体制により市場から高い評価を得ており、年間出荷量の拡大を目標に掲げている。
この目標の達成に向け、栽培技術の改善のための各種講習会の開催や、資材・品種等の比較試験、栽培技術試験等を実施した他、将来の担い手となる若手生産者を中心に技術指導を行った。
その結果、一部の生産者で単収増加が実現できたほか、自主的に試験を行う若手生産者の栽培技術向上を図ることができた。
[質問1]
環境制御技術の導入や作業場導線の改善が数戸でされたとのことだが、この組合は共選出荷のため、優れた農家の取組を組合全体へ波及させて技術を平準化することが大事だと思う。そのためにどのような取組をされているか。
[回答1]
環境制御技術の導入については、今年度から若手生産者5名をグループ化し、民間のコンサルティング会社を招き、更なる技術向上を目指している。組合全体に対しては、GAPを推進し、そのうち1名の作業場導線の改善につながった。
また、組合全体に対しては、作型ごとに講習会、栽培期間中は現地検討会や農家の巡回、技術情報資料の配付、栽培後には反省会を行うことで、組合全体の技術の向上を図っている。
樹と人を若返らせて梨産地の活性化を図る
夷隅の梨生産は、簡易被覆栽培による「幸水」の早出し出荷に取り組んでいるが生産者の減少と園の老木化が問題となっている。その対策として、生産者と関係機関が連携して「梨産地を考える会」を立ち上げ、労力確保、改植の推進、担い手育成の課題解決に向けて取組を実施した。
その結果、令和元年度には労力確保対策について、求人や園地見学会を開催し2園で雇用が確保され労力補完に結びついた。改植の推進については、共同大苗育苗施設を活用し3名が合計15aの改植を実施した。担い手育成については、3名の後継者が就農するとともに、新規参入者1名が園地の貸借により栽培を開始することができた。
[質問1]
令和元年度は2園で雇用があったということだが、雇用された方は同じ地域の方なのか。また、臨時雇用なのか、正社員なのか。
[回答1]
60代の移住者夫婦と70代の男性3名が臨時雇用として採用された。
[質問2]
令和元年度と2年度で5園で雇用が導入されたとのことだが、他の農家は労力が足りているのか、条件が満たなかったなど何か理由があるのか。
[回答2]
昨年度も募集のチラシや市の広報などを利用したが、働きたい方の目に触れる機会が少なく、PR不足が原因だった。今年はいすみ市内の保育所にチラシを置いてもらい、コロナの影響で仕事がなくなってしまった方など多くの募集があり、パートの採用につながっている。
[質問3]
若手の研究部の方がいるとのことだが、年代を教えてほしい。また、組合の平均年齢についても教えてほしい。
[回答3]
組合の平均年齢は65歳だが、研究部は30~40代中心に活動している。
集落営農組織の育成・強化による営農体制の確立
基盤整備事業実施予定地区及び実施地区の2市町4地区において、集落営農による地域の活性化を目指して、集落の将来ビジョンや営農計画の策定支援、営農品目の栽培指導、営農組織の設立支援を行った。その結果、勝浦市大森地区(39.5ha)で事業実施後の担い手となる営農組織が設立された。栽培品目については、タマネギ、ナバナ等が選定され、獣害対策も取り入れて、3地区で共同栽培がスタートした。御宿町では個人担い手農家への農地集積が図られた。
[質問1]
それぞれの対象地区の農家数はどのくらいか。また、対象地区に若手生産者はいるのか。
[回答1]
大森地区が78戸、名木木戸地区が60戸、大楠地区が81戸。これら3地区に若手生産者は30代が1名。大森地区では定年帰農者を中心にまとまる動きがあり、他2地区でも同様の働きかけをしている。
[質問2]
地域内だけの集落営農でなく、企業の農業参入等、外部の力を借りての集落営農というのも可能なのか。
[回答2]
担い手不足が深刻であり、地域性を理解して頂き、地元の理解が得られれば、外部からの参入も可能と考える。
農業事務所改良普及課等は、意見交換会の結果を、令和2年度の普及指導活動の運営、来年度の計画(令和3年度農業改良普及指導計画)の作成、次期中期計画の作成等に反映させる。また、担い手支援課も含め、活動の効率化、効果の向上に活用する。
関連リンク
お問い合わせ
より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください