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更新日:令和6(2024)年1月22日
ページ番号:314148
それは、それは遠い昔のお話じゃ。
下総(しもうさ)の国の印旛沼(いんばぬま)の地方では、雨が一粒も降らず、来る日も、来る日もお日様がギラギラと照りつけていたそうな。
「ああ、いつまで、この日照りは続くんじゃろう。このままでは、わしらの食い物も尽きてしまうわ」
「あしたこそはなあ、雨が降んねえかなあ」
村人たちの願いもむなしく、 日照りは続き、飢えで死んでしまう者も、出て来る始末じゃった。
このことを知った天皇は、釈明(しゃくめい)というお坊さんに雨乞(あまご)いの祭りをやって、雨を降らせるよう命じたそうな。早速、釈明は印旛沼に船を漕ぎ出して、沼の真ん中で、“海龍王経”(かいりゅうおうきょう)などを読み続けて、龍神様(りゅうじんさま)に、お祈りをした。
それは、それは、命がけのお祈りだったそうな。
一日、二日、三日と、釈明の声は絶えることなく沼のあたりに響き渡ったそうな。
すると、どうでしょう。三日目の夕方、ちょうどお日様が地面にかくれる頃のことじゃった。
「ザザザザーッ」
ものすごい波の音とともに、沼の中から龍神様が現れたのじゃった。
やがて天に舞い上がり、暮れゆく空の中に姿を消したそうな。
と、その時じゃった。
突然、真黒な雲が地面から、もくもくと舞い上がって、いなずまと雷鳴の中で渦巻きが起こったそうな。
「ポツリ、ポツリ」
天から大粒の雨が落ちてきましたと。だんだん雨は激しくなって、一日二日と降り続いた
今まで、ひび割れしていた田んぼも、枯れ草同様の畑の作物も、生き返ったと。
「助かった。助かった」
「ありがたいことだ。ありがたいことだ」
村人たちは、天にも昇る思いで、手を合わせ、読経(どきょう)したそうな。
七日目。その日は特にすごい雷光(らいこう)と雷鳴(らいめい)の日じゃった。
「ぴかっ」
「ズズーン。バリバリバリッ」
天も地もふっ飛ぶような雷鳴が、とどろき渡ったそうな。
「ああっ。龍の体が・・・・・・」
村人たちは、一瞬、凍りついたように立ちどまった。三つに裂けた龍の姿を見たのじゃった。
私たちを救ってくれた龍・・・・・・。
村人たちは三つに裂かれた龍の体を捜しに出かけたそうな。
すると、二本の角のついた頭は安食(あじき)に、腹は本埜(もとの)に、尾は大寺(おおでら) に落ちていたのが見つかった。
「おらたちの身代わりになってくれた龍よォー」
「わしらの神様じゃー」
変わり果てた龍を見つけた人々は、それぞれの地で供養することにしたのじゃった。
頭部は、石の唐櫃(からびつ)に納めて龍角寺(りゅうかくじ)の堂前に埋めた。腹は、本埜の地蔵堂に納めた。尾は、大寺の寺に納めたそうな。龍角寺(りゅうかくじ)、龍腹寺(りゅうふくじ)、龍尾寺(りゅうびじ)とそれぞれ寺の名前なったと。
原話 房総の民話、千葉県の歴史、北総誌史
〔匝瑳市〕
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