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更新日:令和5(2023)年8月31日
ページ番号:3432
檻のようで嫌だ、拘束死、体が震えるような怒り
数年前、病院で亡くなった奥津健太郎さんの娘 臼居くに子さん
行くと、ベッドの両脇に手足を縛られている。それからの父は、どんどん悪くなって、見るからに元気がなくなっていった。うちの父なんて、小さな老人じゃないですか。手をずっと握って。とってもくやしかったです。
介護保険施設での身体拘束は、平成12年の介護保険制度の発足により、原則禁止となりました。しかし、介護の現場では、まだ、安全確保のため、人手不足などの理由からやむを得ないとする考え方も、依然として根強く残っています。
拘束とケアのあり方を見直すと、実にその8割以上は必要ない拘束だったことが分かるという報告があります。介護に携わる人たちは、100人中80人余りを縛って、その人の生きる力と普通の生活を奪っていたということになります。
介護者の立場からの「縛らないと無理、縛ったほうが安全」という見方が、今、大きく見直されています。縛らなくてもやっていける方法はないだろうか。介護のプロとしての責任と誇りをかけた取組が、全国の施設で始まっています。そのひとつの現場で、日々苦悩しながらも動き始めた、拘束廃止への挑戦を御覧ください。
特養入所者 100名、ショートステイ 20名
平均年齢 83.1歳、平均介護度 3.3
人員配置 2.5:1
(1)2001年8月、施設長が「身体拘束ゼロへの手引き」を全員に配り、レポート提出を命じた。
(2)9月、勤務暦4年の伊勢崎さんと1年目の杉崎さんが、東京都の研修に参加。
2001年9月の身体拘束の状況
4点柵 48名、介護服 5名
Y字帯 19名、鍵居室 5名
9月、拘束廃止のための観察
(3)11月、施設長を委員長に身体拘束廃止推進委員会の発足。
禁止となる11項目を日々のケアに置き換えて考えるということを、ミーティングにおいてすべての職員に徹底させ、一人ひとりの利用者に共通のケアを行えるようにした。
(4)12月、ハード面の整備、事故に対する対応
ベッドの高さを利用者に合わせたり、車椅子で日中を過ごされる方の姿勢を正しく保持するために、滑り止めネットやクッションで工夫する。
拘束はずしにより転倒事故が増えてしまうことがないよう、ヒヤリハットの報告書、事故報告書の提出を全員に呼びかけた。
(5)1月、記録用紙の見直し、家族への説明
利用者ごとの観察記録に、スタッフ全員が気付いたことを記入する方法に変更。皆で書くことによって、利用者一人ひとりの課題や生活の目標がはっきりしてきた。
家族に対する説明を行った。身体拘束をした方に、拘束の理由を示した書類と、施設としての拘束廃止の方向性を示した文書を送った。相談員が家族の思いを聞き、利用者の状況を説明。拘束廃止への理解と協力をお願いした。
初めはまず、すぐにはずせそうな4名を選んで、恐る恐る始めた。
(6) 身体拘束に関する実態調査表(入所者100人中)
(7) 拘束廃止に向けて見えてきた問題点
どうしても取れない拘束も残った。短期間でここまで来たことによる職員間のきしみや、新しい問題点も見えてきた。
(8) 現状の課題
(9) 東京都身体拘束廃止推進員研修講師 鳥海房枝さん
(10)解決策
スタッフは、拘束をやめるというこれまでの目標だけでなく、お年寄りに対するケアのあり方そのものを考えるようになった。
(11)変わり始めたケア、今の取り組み
‘01年9月~’02年6
4点柵 48名→18名
Y字帯 19名→4名
ミトン 0名→2名
9ヶ月前には、「ただでさえ忙しいのに、これ以上、身体拘束廃止の取組を始めると、もっと忙しくなる。もっと人員が必要になる。」と考えられていた。しかし、現実は少し違った。
誰も、人の心と身体の自由を奪う権利を持ってはいません。私たちは、拘束することで、お年寄りのプライドまで奪っていたことに気付かなかったのです。それは、私たち自身の心が、根拠のないリスクに拘束されていたからなのかもしれません。今出来ることを真剣に問い直し、皆で介護や看護の現場を変えていきましょう。この取組によって、生きる力を取り戻すお年寄りが、きっといらっしゃるはずです。
(東海大学医学部教授 弁護士 児玉安司さん)
どうも施設の方は、安全がすべてという考え方に陥りがちで、拘束してでも、とにかく事故を起こしさえしなければ責任はないという考え方に陥りがち。逆に、転倒事故等が起こってしまえば、すべて法律的な責任を問われるという誤解がある。
今の法律が求めているのは、何が何でも安全がすべてという考え方ではない。きちんとしたケアをやっていたか、利用者の身になったケアをやっていたかが大切。
結果が悪いからといって、責任を問われるといった単純な話ではない。むしろ、今の介護保険法の下で、自立を目指すということがはっきり掲げられており、指定基準等において拘束が明らかに違法なものとして禁止されるようになっている。法制度そのものも、安全一辺倒の硬直した考え方から、むしろ、利用者や御家族の安心と満足を求める方向に大きく転換しつつあると考えられる。
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