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更新日:令和4(2022)年9月9日
ページ番号:7554
「千葉県家畜ふん尿処理利用の手引き」より
家畜ふん堆肥の主な施用効果は次の4つです。
家畜ふん堆肥を含む有機質資材の施用効果は、a作物に対する養分供給(肥料的効果)、b土壌化学性の改善、c土壌物理性の改善、d土壌生物性の改善の4つに大別される(表III-4-1)。
家畜ふん堆肥は、表III-4-2に示したように稲わら堆肥と比較して、肥料成分である窒素、リン酸、加里の含有率が高く炭素率(C/N)が低い。つまり家畜ふん堆肥は、肥料成分が多い有機質資材といえる。このため、家畜ふん堆肥の施用効果は、a作物に対する養分供給(肥料的効果)が中心であり、連用によってb土壌化学性の改善が期待できる。また、炭素率(C/N)の高い牛ふん堆肥等では、分解が緩慢なため連用によってc土壌物理性の改善も期待できる。
表III-4-1有機質資材の施用効果
効果 |
効果の内容 |
---|---|
a作物に対する養分供給 |
窒素、リン酸、加里、石灰、苦土、その他微量元素 |
b土壌化学性の改善 |
塩基の増加、可給態窒素と可給態リン酸の増加、土壌有機物の増加、緩衝能の増加 |
c土壌物理性の改善 |
孔隙量の増加、団粒化の促進、通気性と排水性の促進 |
d土壌生物性の改善 |
理化学性改善と土壌有機物増加による微生物の活性化 |
表III-4-2稲わら堆肥と家畜ふん堆肥の成分の違い
堆肥 |
窒素 |
リン酸 |
加里 |
C/N |
---|---|---|---|---|
稲わら堆肥 |
0.5 |
0.2 |
0.6 |
20 |
家畜ふん堆肥* |
0.7~3.0 |
0.7~6.6 |
0.5~3.6 |
8~17 |
家畜ふん堆肥に含まれる有機態窒素は、微生物の作用によって「無機化」され、
アンモニア態窒素や硝酸態窒素として、植物に利用されます。
微生物による「無機化」の割合が、家畜ふん堆肥の窒素の肥効を左右します。
家畜ふん堆肥中に含まれる肥料成分のうち、作物の生育に最も関係するのは窒素であるが、これらは有機態であり、作物はほとんど吸収することができない。家畜ふん堆肥中の有機態窒素は、図III-4-1に示したように土壌に施用された後、微生物の作用によって「無機化」されアンモニア態(NH4+)窒素に変化し作物に吸収される。吸収されなかったアンモニア態窒素は、好気的な条件のもとで微生物の作用によって硝酸(NO3-)態窒素に変化(硝酸化成)し作物に吸収される。また、炭素率が高い(C/N20以上)堆肥では、施用直後に、無機化速度より有機化の速度(土壌中に存在する無機態窒素が有機化される)の方が上回り、土壌中の無機態窒素含量が減少する(窒素飢餓、図では省略)。
アンモニア態窒素と硝酸態窒素は、同じ無機態窒素であるものの、電荷が異なるため土壌中での動きが異なる。陽イオンのアンモニア(NH4+)態窒素は、土壌の持つマイナスの電荷と結びつくため流亡しにくく、陰イオンの硝酸(NO3-)態窒素は土壌に吸収されず水とともに下層に流亡する。畑では、好気的な条件であるために硝酸化成が盛んに行われ、しかも透水性が良好であるため硝酸態窒素の流亡が起こりやすい。一方、水田は土壌表面が好気的、下層が嫌気的な環境である。このため、土壌表面で生成した硝酸態窒素が下層の嫌気的条件下で脱窒作用を受け、窒素ガスとなって大気中に揮散する。また、水田は透水性が畑ほど良好でないことも加わって、硝酸態窒素の流亡は起こりにくい。
図III-4-1家畜ふん堆肥中窒素の土壌での動き
以上のように、家畜ふん堆肥中の有機態窒素は無機化、硝酸化成作用を受けながら無機態窒素として作物に吸収される。アンモニア態窒素に無機化されてからの土壌中での動きと作物への吸収は、化学肥料中のアンモニア態窒素と全く同じである。家畜ふん堆肥が化学肥料と異なる点は、窒素が「無機化」の過程を経てから作物に吸収されることにある。この「無機化」の割合(率)が、家畜ふん堆肥の窒素の肥効を左右する。
家畜ふん堆肥の窒素無機化率は、図III-4-2に示したように、堆肥の窒素含有率が高いものほど、また同一の堆肥では温度(地温)が高い時ほど高い。
図III-4-2家畜ふん堆肥の無機化率
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